【注目書籍】老化が加速する「倍速老化」は、免疫細胞がカギを握る

同じ年齢でも若く見える人と老けて見える人がいるように、体の中での老化速度も、人によって違いがあるのではと、実生活で感じている方も多いのではないでしょうか。

急に「この頃、疲れやすくなった」「もう歳だよね」と、疲れや衰えを感じるようになったり、病や不調、痛みが増えたり悪化したり……そんな人の体内では「倍速老化」が起こっている恐れがあると、『倍速老化 40代からの老化の崖を転落しないために』(飯沼一茂著/サンマーク出版)は伝えます。

体内で急速に進む老化は、見た目に現れないこともあり、それだけに「信じがたい速度で、血管や臓器が衰えていく」こともあるのだとか。

著者は、「老化の速度を決めるのは、生まれつきの個体差と体内環境」と言います。基本的に個体差は変えることはできません。しかし、この本を読み進んでいくと、体内環境による老化を遅らせる方法があること、そして、その秘密は、「免疫」にあると知ることができるのです。

人体の若さや健やかさを保つために重要な“免疫”

本書のChapter1では、「免疫には攻撃役と制御役がいる」ことが説明されています。

免疫といえば、体の外から侵入したウイルスや細菌を排除したり、がん細胞やウイルスなどに感染した細胞を攻撃・破壊する働きがあることはよく知られていますが、その破壊活動を適正範囲に収める働きをする制御役もいるのだそうです。

攻撃役は、制御役が「攻撃やめ!」というサイン(抗炎症性サイトカイン)を出すまで攻撃を続けます。制御役がいないと体はブレーキが壊れた車と同じ、非常に危険な状態になるのだとか。そして、出たゴミ(攻撃で死んだウイルスなど)を掃除するのも制御役が務めるのです。

免疫細胞中、制御役はわずか1割程度で、その中心的存在は「制御性T細胞」。リウマチや花粉症などは、攻撃役の免疫細胞が暴走して、自分の正常な細胞や花粉を敵だと勘違いして攻撃してしまうことで起こりますが、見方を変えれば、制御役がうまく機能しないために起こるトラブルとも言えます。

本書では、この免疫細胞こそ、「倍速老化」している体の救世主となりうると主張します。

たとえば「骨代謝」の現場。「破骨細胞」が古い骨を壊し、「骨芽細胞」が新しい骨を作るというサイクルが繰り返されていますが、この指令は免疫細胞が出しています。また、脳の免疫担当細胞「ミクログリア」も、古い細胞や異物の排除と組織修復を担っています。さらには月経における子宮内膜の剥離と再生にも免疫細胞が重要な役割を果たしています。

つまり、人体の若さや健やかさを保つ「破壊と再生(スクラップ・アンド・ビルド)」のサイクルには、免疫が深く関わっているというわけです。

攻撃役の衰え、制御役の減少などによって免疫暴走から「倍速老化」へ

これほど重要な役割を担う免疫が、なぜ「倍速老化」を引き起こすのでしょうか。Chapter 2では、あらゆる病の根底に潜む「免疫暴走」のメカニズムが明かされています。

まず、免疫暴走の大きな要因は、攻撃役の免疫細胞が「老眼」や「ヨボヨボ」の状態に陥ることです。加齢によって視力や筋力が衰えるのと同じように、免疫細胞も敵味方の判別が曖昧になっていきます。その結果、攻撃すべきでない味方を傷つけたり、敵を仕留めきれずに炎症性サイトカインを放出し続けたりといった、「壊しすぎ」や「壊し損ね」が体中のあちこちで発生してしまうのです。

また、体内では加齢とともに活性酸素やがん細胞、過剰な脂肪細胞などが「ゴミ」として蓄積していきます。制御役の免疫が弱まることで病原体の侵入を許し、さらにストレスや肥満が重なると、ゴミの量は処理能力の限界を超えてしまいます。

こうして体内が「ゴミ屋敷化」すると、エネルギー産生を担うミトコンドリアがそのストレスに耐えかねて破裂します。ミトコンドリアの機能停止が増えれば、糖や脂質が燃焼されずに蓄積し、さらなる肥満を招くという悪循環に陥るのです。

ミトコンドリアの減少によりエネルギー供給が滞ると、細胞そのものが疲弊してしまいます。すると、細胞は正常な働きができなくなり、例えばたんぱく質を合成する細胞であれば、不完全な「不良たんぱく質」しか作れなくなり、大量のゴミを生み出すようになります。

その典型が、アルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドβです。認知症患者の脳内には、この不良たんぱく質がまるで「炒り卵をガチガチに固めて巨大化したような」姿となって蓄積しているといいます。

こうして疲れ果てた細胞からは、周囲に炎症を広げる炎症性サイトカインなどが分泌され、全身の老化をさらに加速させます。さらに恐ろしいのは、暴走した免疫細胞が脳にまで到達することです。かつて脳には「血液脳関門」という関所があり、外部物質は侵入できないと考えられてきましたが、近年の研究では、暴走した免疫がこの関所を越えて入り込んでしまうことが判明しています。

このように、攻撃免疫の劣化と制御免疫の減少による「免疫暴走」こそが、老化や肥満、さらには血圧・血糖値の異常や慢性的な痛みといった、あらゆる不調の原因になっていると言えるのです。

万能薬である“免疫力”を作り出す「腸内環境」を大切に!

「免疫暴走」とそれによって引き起こされる「倍速老化」を止める方法は、Chapter3で展開されます。

体内のゴミを減らす第一歩は、ゴミを生み出す生活習慣を見直すことです。適度な運動で血流を促してゴミを体外に排出すること。合成保存料や着色料、残留農薬といった化学物質の摂取を極力控えることが推奨されています。

さらに、多様な自然の食材を食べることや清潔すぎないことは、制御免疫を育て(訓練する)、制御免疫を増やすことにもなるそうです。

中でも、制御免疫のスイッチを入れる鍵として紹介されているのが、腸内で生成される短鎖脂肪酸の一種「酪酸」です。「腸内の酪酸菌が制御性T細胞を育てる」と言っても過言ではないほど、腸と免疫は密接な関係があります。酪酸菌をはじめとする善玉菌を守るためには、腸内環境を常に良好に保つことが不可欠です。

もちろん酪酸菌だけでなく、さまざまな細菌が腸内で私たちの健康を支えてくれていることもわかってきています。例えば、「幸せホルモンと呼ばれるセロトニン」「やる気が起こるドーパミン」「愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシン」などの前駆体は、腸内細菌がつくっているのだとか。

その人の腸にどんな腸内細菌がいるかで、薬の効き目も変わってくることがわかってきています。そのため、お薬手帳に、腸内細菌の情報を掲載しようという動きもあるそうです。

「免疫暴走」を抑え、「倍速老化」から緩やかな老化へと変える。その究極の鍵は、まさに「腸内環境」にあるのです。

著者は「腸内環境をよくし、免疫細胞たちを元気に働ける状態にすること」が、実はさまざまな病気の万能薬になるのではないかと示唆します。

1996年のノーベル生理学・医学賞受賞者ピーター・ドハティ氏は、「免疫学は広く知られてこそ意味がある」と説きました。その思想に深く共鳴した著者は、専門分野や東西医学の垣根を超え、現代人の体に迫る危機を独自の視点で解き明かしています。

本書は、高度な医学的知見に基づきながらも、決して難解ではありません。免疫の働きを擬人化するなど、読者が直感的に理解できるよう工夫されています。老化に抗うための具体的な指針として、免疫学の入門書としてもおすすめの1冊です。

【書籍情報】
『倍速老化 40代からの老化の崖を転落しないために』(飯沼一茂著/サンマーク出版)


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