【注目書籍】戦略的に休養するスキルは、健康的にも経済的にもメリット無限大

疲労が溜まるとフィジカル面だけでなく、メンタル的にも不健康になっていきます。そこで、疲労を溜め込まない方法を教えるのが本書です。

しかし、本書を読んでまず注目したのは、疲れのメカニズムを最初に教えるという本の作り方をしていないところです。通常の健康系の書籍は、最初に疲れのメカニズムに触れ、疲れる原因を紹介し、対処の仕方を伝えるという手法をとりますが、本書『休養ベスト100 科学的根拠に基づく戦略的に休むスキル』(加藤浩晃著/日経BP)は、最初から「戦略的に休んで心身を整える」ための対処の仕方を紹介し、それが100項目あるのです。

その実践的な対処法ごとに、「なぜそうする必要があるのか」が記されていますので、万人の平均的な休養のとり方ではなく、自分の悩みと合致した項目を見つけ、理解し、実践することで、単に疲れを取るだけではなく、心身ともに健やかになっていくことを目指せます。

睡眠、入浴、食事、運動の仕方をメンタル面、フィジカル面ともに語れる著者はどんな人だろうか。そこでプロフィールを見ると、もともとは眼科専門医としてスタートし、国(厚労省)と民間企業の両方に勤務した後、MBAも取得します。医療現場、医療制度、ビジネスという3つの領域を経験し、横断的に理解することで、医療領域全般をさまざまな側面から語れるプロ。

そんな著者の本だからこそ、対処法100項目を読み進めると、科学的根拠が理解できるだけでなく、上手に休むことで生産性をアップさせ、自分が使える時間を増やしていこうという意欲が湧いてくる気がします。まさに、生涯現役が叫ばれている現代には必読の一冊です。

自分に合った休養を試しながら見つける

著者が最初に挙げている実践方法は、「自分に合った休養の仕方を見つけること」です。どのような休養が理想的なのかは、その人の体質や忙しさのパターン、生活習慣などによってそれぞれ異なるのですから。

まして休養というのは、習慣にしてこそ威力を発揮するもの。どんな習慣が自分にとっての理想かを見極めるには、いろいろな方法を習慣にして、それぞれ試してみるといいのだそうです。

そのため本書では、睡眠・入浴・食事・運動のさまざまな対処法が紹介されています。例えば、ペットと一緒に寝ている人がよく眠れないのなら、寝返りをしっかり打てるだけの広さのベッドで、1人で寝た方がいた方がいいと言います。さらに、スムーズに寝返りを打てるようなパジャマや血行を促すようなリカバリーウェアをすすめています。

また、朝風呂は、湯船につかるのか、シャワーだけで済ませるのか、どちらが自分に合っているかを見極めるといいそうです。湯船につかると体は温まりますが、その後に眠くなってしまうならシャワーだけで済ませるようにしましょう。入浴後にどれぐらい眠気を感じるかは、人によって異なるそうです。

さらに、メンタルを整える方法も紹介しています。例えば、自分が決めたこと、その時の気持ちを紙に書くことで気持ちが整理されると著者はいいます。自律神経を整えるための深呼吸の仕方(4-7-8呼吸法)も紹介しています。

運動が好きな人嫌いな人、自然の中が好きな人嫌いな人、筋肉がある人ない人、どんなことに興味があるのかなど、人は千差万別です。それに合った項目を見つけて、自分に合った方法を実践する。それができるのが本書の魅力です。

軽い筋トレでマイオカインが分泌され、血流で全身へ

著者は、休養の質を高めるために、日常生活の中で意識的に体を動かすことをすすめています。毎日ではなくても「疲れない」運動を継続していると、細胞内でミトコンドリアが増殖し、疲れにくい体を作るのだそうです。

特に、著者がすすめるのが「軽い筋トレ」。軽めで回数を多くすることで、気持ちが前向きになり、「マイオカイン」も分泌されるのだとか。マイオカインとは、筋肉から分泌されるホルモンの総称で、脳や内臓にプラスの効果を与えるそうです。運動は血流も促しますから、マイトカインをたくさん分泌して、全身に送り出したいものです。

ただし、加齢によって使われなくなった筋肉から分泌されるマイオカインは、健康に悪影響を与えるものもあり、それを防ぐには、若いうちから筋肉を活性化させる習慣を持っておくことが大切ということです。

しかし、それだからと筋肉を動かさないでおくと、心身ともにより以上の悪影響が出ることも考えられますので、日常の中で意識的に体を動かし、心身に良い影響を与えるマイオカインをどんどん分泌させることが、健康的な生活を送るためのカギになるようです。

不調を防ぎ、疲れにくくなる食べ方のコツも伝授

本書を読み進めると、疲れにくい体=健康体ということがわかってきます。

忙しくて昼食や夕食がおろそかになるのなら、朝食でしっかりバランスの良い栄養をとり、目覚めた時に元気がないようなら、バナナとプロテインドリンクなどの補給食をとるといいそうです。

また、3食ごとにたんぱく質をとることで、必須アミノ酸をまかなえるようにすることが大切ですし、腸が喜ぶ食事を心がけること、食後血糖値を急に上げない主食を選ぶこと、ビタミンやミネラルの不足を補うこと、体にいい油をとること、ゆっくり食べることなど、まさに健康情報が満載です。

さらに、体内で糖化が起きやすいAGE物質や、塩分・脂質・コレステロールをとりすぎないなど、一度は耳にいたことがある話がたくさん紹介されていますが、それはなぜなのか、とても簡単にわかりやすく解説されています。

戦略的に休むスキルは、自身の人生にとっての「武器」になる

疲れにくい体=健康体になるために、できれば多くの男性に読んでもらいたい箇所があります。それは、「自分が『かっこいい』と思う体になる」ことです。男性だけとは限りませんが、年を重ねるにつれ、見た目に無頓着になる人が多くなります。

しかし、自分の体はかっこいいと思えれば自分への自信につながり、他人に「頼もしい」「心強い」と思われるようになります。それが、さらに自分への自信となり、メンタルも前向きになり、ビジネスにもプラスに作用するというのです。

米ジョージア工科大学の研究によると、たった20分間の筋トレで記憶力が10%向上したとあります。また、筋トレでストレスホルモンが下がり、幸福感を促進するエンドルフィンの分泌量が増加するそうです。

また、肌は健康状態を示すバロメーターといわれますが、肌の大敵は睡眠不足、不健康な食事、便秘、ストレス、運動不足にあるそうです。

つまり、疲れにくい体=健康体=アンチエイジングともいえるようです。健康体を維持しながら自身のパフォーマンスがアップすれば、より幸福度が増し、経済的な面でもメリットがあることでしょう。

本書で紹介する戦略的な実践は、ご自身が健康的に過ごすための「武器」になるということです。

【書籍情報】
『休養ベスト100 科学的根拠に基づく戦略的に休むスキル』(加藤浩晃著/日経BP)


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