SAC研究会と進展する研究

ニンニクにはアリイン、アリシン、γ-グルタミル- S -アリルシステインなどの健康機能を有する含硫化合物が存在しており、これらの中で最も研究され機能性が明らかになっている成分がS -アリル- L -システイン(SAC)である。そのSAC研究会が10月22日に第3回研究集会を都内で開催し、取引先や関連研究者、メディアなど大勢の聴講者を集めて、進展した研究内容の充実した会となった。

同志社大学大学院生命医科学研究科の市川寛教授が基調講演「生体の酸化ストレス応答と食品因子」、日本大学薬学部薬理学研究室の小菅康弘教授が「成熟ニンニク由来成分S-allyl-l-cysteineが慢性腎臓病モデルマウスに及ぼす影響」、桃屋研究開発部の長田裕子課長が「熟成にんにくエキス含有食品摂取による認知機能向上効果について」、備前化成の丸勇史研究開発本部長が「SAC高含有ニンニクによる睡眠の質の改善効果」、アルファメイルの渡邉洋樹代表取締役CEOが「製品販売サイド目線で見たSAC保有サプリメントの現状と気づき」と題してそれぞれ講演した。

同研究会の会長でもある市川教授は、SACが抗酸化食品因子で生体の酸化ストレスを軽減することが明らかになっていることを踏まえて、一重項酸素などの活性酸素種が線虫に寿命に及ぼす影響を調べた結果、SAC群の線虫は寿命短縮を改善したと解説、食品などの刺激によりミトコンドリアから活性酸素が発現し、それがミトコンドリアに影響することや、そこに細胞からの抗酸化物質が作用して、適正な活性酸素状態にしていること、カルシウムの動態の解明など新たな知見を講演した。小菅教授はマウス試験で、腎機能低下と相関して酸化ストレスや小胞体ストレスが増加することを明らかにし、SACは海馬における尿毒症誘発性の小胞体ストレスの増加を抑制することを示唆する報告を行った。長田課長は桃屋が独自に開発した熟成にんにくエキスについて概要などを説明、そのエキスを含有した食品で機能性表示食品を開発し、表示について「本品には抗酸化作用を持つ熟成にんにくエキスが含まれますので、睡眠の質を向上する機能があります。日常生活で生じる疲労感を軽減する機能があります」という表示の中に“抗酸化作用”を入れた画期的なヘルスクレームを実現したことなどを解説した。丸本部長は、SACの脳内の抗炎症効果に着目し、睡眠の質改善効果について臨床試験を実施し、SACの炎症抑制効果による自律神経機能の改善、ホルモンバランスの調整、ストレスの軽減により睡眠の質が改善したことを発表した。渡邉CEOは、医者に相談しづらい悩みに応える健康食品を販売するために5年前にベンチャー企業を立ち上げ、メンズヘルスを中心にした健康食品を販売。販売だけでなく、随時受け付ける無料相談を行い、消費者に寄り添う伴走型のブランドを立ち上げた。SAC保有食品などの説明や定期解約時の理由の分析など興味深い報告を行った。SACの特徴は腸管吸収性が良く、血中の半減期が長く、血液脳関門を通過することである。質疑応答では匂いの関係で朝食に摂取を推奨しているが、2日目でも体内に摂取成分量の半分が残るため、夜の摂取も大丈夫となった。他成分との組合せも可能で、メカニズムの違う睡眠の質向上成分などが挙げられた。

最近のトピックスとして、岡山県産業振興財団(ものづくり支援部)は、経済産業省の提案公募型事業「成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech)」に応募した「抗炎症食品としてのSAC高含有ニンニク粉末の開発」(研究実施代表者:備前化成)が採択されたことも注目され、今後のSACの研究推移を見守りたい。

「FOOD STYLE 21」2024年11月号 F’s eyeより

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