2024最新「NNB10キートレンド」でトレンド間の関連をつかむ!【後編】

「10のキートレンド」それぞれの推進要因と避けるべきリスク、トレンド同士の関連を深堀り!

キートレンド4の「スイッチの入った動物性プロテイン」についてご解説ください。

動物性プロテインの需要は相変わらず強力で、特に乳製品において活気があります。一昔前にバッシングされていたのはサステナブルの視点からですが、いま消費者はグラスフェッドや動物愛護、再生農業などの環境配慮によって、動物性プロテインを食べる許可や楽しむ許可を得ています。

この分野では課題もあるものの、今後3年から5年くらいは成長し続けるでしょう。これまでの経緯を見ると、1990年代はアスリートやボディビルダーが主な消費者層だったものが、2010年にプロテインのウェイトマネジメントに対する有効性についてサイエンスで裏付けされた結果、2020年には一般の消費者に向けたプロテインを提供するブランドも増えました。そして今まさに注目されているのが、動物性プロテインの品質における優位性です。

例えば、ホエイプロテインはかつて家畜のエサだった廃棄物を再利用し、天然の機能性を生かしたものです。また、乳プロテインはシンプルかつ天然で、分かりやすいといった背景があるため、プラントベースプロテインが大きなニッチ市場になった今でも乳プロテインの需要は伸び続けています。

印象深いのは、「乳製品のこれまでの売上推移はプラントベース製品の出現による影響ではなく、乳製品生産者が科学に裏打ちされたプラス面を積極的に伝えてこなかったからだ」と、NNBが解析しているところです。生産者は乳製品のカルシウムにばかり特化して消費者へ伝え、他の成分による多くのメリットを伝えていませんでした。そのため、消費者はその他の微量栄養成分について認識できていないと分析しています。

 

株式会社グローバルニュートリショングループ主催
「NNB 10キートレンド 2024 理解度アップセミナー」(2024年1月25日開催)講演資料より

乳製品以外の動物性プロテインにおける、今後の動向はどうなりますか?

乳製品の需要が伸びる一方で、赤身肉については横ばいか緩やかに減少傾向です。ただし、グローバルに見れば今後、赤身肉の需要は今後増えるでしょう。2012年頃にはメディアと環境活動家による動物性プロテインに対するネガティブなメッセージが多かったものの、これはいわゆる“振り子の理論”で戻ってきます。その証拠に何人もの、“食肉系”インフルエンサーがSNS上でポジティブな意見を述べるような投稿もあり、こうした振り子の動きは時代を反映し、食品産業の大きな牽引力となっています。

日本では意外に感じる人が多いかもしれませんが、赤身肉は天然の健康食品として認識が変わりつつあり、健康志向の高い消費者の中で再認識されているという現状もあります。もはや食肉のネガティブな要素の印象は薄れ、ポジティブな要素が増加しているということでしょう。とくに牛のコラーゲンは若い女性の間で人気を集めています。

株式会社グローバルニュートリショングループ主催
「NNB 10キートレンド 2024 理解度アップセミナー」(2024年1月25日開催)講演資料より

動物性のコラーゲンにおける動向や期待については、どのように見ていますか?

コラーゲンのトレンドが減速する兆しは、まだ見られません。その検索数はプロバイオティクスよりも明らかに多く、注目すべき点はコラーゲンが動物由来なのにプラントベースを指示する消費者も使っているという点です。ベネフィットのためなら由来は問わないというのが、消費者の本音でしょう。
また、コラーゲンには見た目を美しく保つというメリットのほか、グルタミン酸やグリシン酸、プロリン酸などのアミノ酸が含まれ、腸の健康に役立つというエビデンスもあります。こうしたベネフィットを添えることで人気の高い、ボーンブロス(スープ、出汁)といった商品もあります。

株式会社グローバルニュートリショングループ主催
「NNB 10キートレンド 2024 理解度アップセミナー」(2024年1月25日開催)講演資料より

動物性プロテインと関連性の高いトレンドや、戦略にはどのようなものがありますか?

動物性プロテインは栄養素密度において非常に優秀です。この栄養素密度は、2024年版の10キートレンドからは外れていたものの、このトレンドの中で根強く残っています。現に、乳製品販売業では自社製品の栄養素密度を伝え初め、米国市場においてこの栄養素密度はマーケティング用語ともなりつつあり、注目を集めている概念です。

戦略として有効なのは、肉と植物のブレンドでしょう。多くの消費者が動物性プロテインの食感を楽しみたいと考えているため、野菜やキノコを肉にブレンドすれば多くの消費者に楽しみが生まれます。

成功の鍵となるのは味と食感に優れ、肉だけよりもワンランク上の味覚体験を提供することでしょう。スーパーマーケットにおける売上から分析すると、消費者はより高度な食体験と新しさだけでなく、よりシンプルな食材で楽しみを求めているということが分かっています。

キートレンド5の「植物性プロテイン」についてご解説ください。

植物性プロテインは間違いなく消費者から支持されている一方で、商品の提供方法を間違えると失敗しやすい分野でもあります。とくにプロテインを多く含む豆類や野菜で、加工を施さないホールフードやリアルフードは好まれる傾向です。

ただし、サステナビリティを購入すべき一番の焦点に充てるのはおすすめしません。一方で、ポジティブなストーリーは非常に有効です。この分野は投資家などによる爆発的な成長ではなく、落ち着いた成長となるでしょう。

株式会社グローバルニュートリショングループ主催
「NNB 10キートレンド 2024 理解度アップセミナー」(2024年1月25日開催)講演資料より

「植物性プロテイン」のトレンドにおける失敗例とは、どのようなものでしょうか?

いまの状況は2022年にNNBが、「もし、貴社が代替肉を作ろうとしているならやめた方がいい。技術的や商業的などで真のニッチであり、何百万ドルもの資金を無駄にすることになるだろう」と、助言していた通りです。
この1年間で明らかなのは、多くのブランドで期待していた肉代替品が大失敗に終わったこと。その理由は、味に対する消費者の期待に応えていなかったことや、プラントベースパラドックスが原因です。いま既に苦戦中の肉代替品や乳代替品では、今後5年間はニッチだろうと厳しいコメントも出しています。

プラントベースパラドックスについての詳しい記事はこちら

「植物性プロテイン」の分野で成功するには、どのような方法が有効ですか?

「植物を便利に」と「植物性プロテイン」のトレンド2つを合わせ、ホールフードの携帯で提供できれば成功は見込めるでしょう。消費者もこれを多くのカテゴリーで受け入れ、なかでもベーカリーとスナックは優位性があります。

また、インド豆や穀物を使ったプロテイン、マッシュルームを主体とする一品、全く肉らしい見た目ではないような肉代替品、レンズ豆などを使ったソースでは味を重視しながら慎重に進めたこともあって、現実的な成長計画を辿っています。

キートレンド6の「血糖値フレンドリーの台頭」についてご解説ください。

今回から加わった血糖値フレンドリーは、まさに先駆け的なブランディングに則った成功の原動力です。ソーシャルメディアのインフルエンサーはサイエンスに則って血糖値の上昇を管理することやメタボリックヘルス、ホルモンヘルス、そしてムード&マインドに対して役立つことを発信しています。ケトダイエットや低炭水化物ダイエットのトレンドは、こうした追い風もあって安定的とも言えるでしょう。

血糖値フレンドリーに関するソーシャルメディアのインフルエンサーとは、どのような人でしょうか?

ソーシャルメディアで信頼を集めるインフルエンサーは、主流なメディアからも注目され、このトレンドを力強く牽引しています。なかでも、“グルコースの女神”と称される、生化学者で血糖値管理を専門とする作家のJessie Inchauspé氏は290万人のフォロワーを抱え、若い世代を中心とした関心の高い消費者が検索する有力な情報源のひとつです。

例えば、「炭水化物を裸で食べずに、チョコレートケーキを食べるなら血糖値の上昇を穏やかにするため、ギリシャヨーグルトも一緒に食べなさい」という風に、食べ方の代替法を教えることで消費者から厚い支持を集めています。

株式会社グローバルニュートリショングループ主催
「NNB 10キートレンド 2024 理解度アップセミナー」(2024年1月25日開催)講演資料より

インフルエンサーの他にも、このトレンドを牽引しているものはありますか?

このトレンドの背景として、集中力と血糖に関するヒトにおける研究など、サイエンスに基づく論文が毎年200本以上も発表されていることが大きな牽引力となっています。そして今、消費者の関心がいちばん高く、今後の数年間で最も成長する可能性が高いと見られているのが女性のホルモンヘルスです。
すでに、一部の医療関係者たちが発信する限られた治療法に対して絶望を抱えている女性たちの多くが、サイエンスを武器にした血糖値の安定とホルモンヘルスに注目し、食品やサプリメントに目をむけていることは軽視できません。

株式会社グローバルニュートリショングループ主催
「NNB 10キートレンド 2024 理解度アップセミナー」(2024年1月25日開催)講演資料より

血糖値フレンドリーに関しても、国内外で何か違いはあるのでしょうか?

海外では多くの消費者で血糖値スパイクに対する見方が変わりつつあるため、血糖値を急に上げにくい商品について糖尿病を意識しながら見ることはありません。対する日本では、特定機能性食品(トクホ)や機能性表示食品の多くが糖尿病を意識したアプローチを行っていることもあり、ここが念頭に置くべき大きな違いです。

冒頭でも軽く触れましたが、食後速やかに血糖に関するフィードバックが得られるCGM(持続血糖モニター)の活用は今、スポーツやフィットネス関連などの枠を超えて様々な理由で人気を集めています。これについてはApple社を始めとする起業家や保険会社など、医療機関以外の領域でも導入を検討し、CGMに関するコストの削減を模索しているようです。今後、こうした取り組みは、おそらく日本でも普及してくるでしょう。

株式会社グローバルニュートリショングループ主催
「NNB 10キートレンド 2024 理解度アップセミナー」(2024年1月25日開催)講演資料より

ウェルネス総研レポートonline編集部

関連記事一覧