【サイエンス】コプロコッカス属がメンタルヘルスのバイオマーカーとなる可能性:レビュー

腸内細菌のコプロコッカス属が、メンタルヘルスのバイオマーカーとして有望である可能性が、オランダのレビューで示唆された。

コプロコッカス属は、多数の健康効果が報告されている短鎖脂肪酸(SCFA)の一つ、酪酸を産生する能力を持つことで知られている。著者らは、特にCoprococcus Eutactus(コプロコッカス・ ユータクトゥス)は、言語発達が遅れている小児、また、パーキンソン病の成人患者において減少していることを指摘した。

Amsterdam Vrije大学、Microbiome Solutions社などの研究チームは、コプロコッカス属と腸内細菌・脳相関に関する文献を総合すると、酪酸産生を促進し、病原菌のコロニー形成を抑制することが、 健康効果に繋がると指摘している。

コプロコッカス・ユータクトゥスはグラム陽性の芽胞形成菌で、嫌気性のため酸素に非常に弱い菌である。これまでの研究により、コプロコッカス属はQOL(生活の質)のバイオマーカーとして有望とされ (2019 年ベルギーの研究)、「(大腸炎を改善する)有望なプロバイオティクス」とされる(2023年中国の論文)など、健康との有益な相関関係が報告されている。

本レビューによると、コプロコッカス属は肉を多く食べる人よりビーガンに多く存在するという。また、 食物繊維やガラクトオリゴ糖、オメガ 3 脂肪酸もコプロコッカス属を増加させ、さらに、DSM社(現 dsm-firmenich社)の研究(2021年)によると、ビタミン C、D、B2 といったビタミン類がコプロコッカス属を増加させることが報告されている。

コプロコッカス・ユータクトゥスの酪酸産生能は、Faecalibacterium prausnitzii(フィーカリバクテリウ ム・プラウスニッツイ)、Ruminococcus(ルミノコッカス属)、Eubacterium rectaleなどに次いで 4番目に多く、コプロコッカス属のベネフィットは酪酸産生に関連していると考えられる。

研究者らは、「コプロコッカス属は腸-脳の健康バイオマーカーとして有望だが、今後の研究では、コプロコッカス属が繁殖し機能する宿主環境と微生物群を特徴づけ、コプロコッカス属を標的とした介入 効果に焦点を合わせる必要がある」と結論付けた。本レビューはGut Microbiomeに掲載された。

「GNGグローバルニュース 2023年10月25日号」より

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