海外の最新機能性素材トレンドから読み解く!
これから日本で最も注目すべき3つのテーマとは?

第2部:「ウェルビーイング視点で考える“食と健康”マーケティングと機能性素材との向き合い方」

売れているのは4%だけ!「ヘルスクレームの幻想」

続く第2部では株式会社インテグレート代表取締役の藤田 康人氏が、昨今における健康食品の売り上げ低迷の理由から、ウェルビーイング時代に販売数が伸びる製品設計のポイントと、これからの食と健康に対する展望について登壇しました。

残念なことに機能性表示食品のうち販売が好調なのは、わずか4%程に留まると言います(GNG推定値)。2015年に機能性表示制度が開始となって8年、バナナやみかんにまで機能性表示食品が誕生しました。しかし、トライアルがある程度取れたとしても、継続して購入する人は多くないというのが現状。さらには、ソーシャルネットワークの影響もあり、消費者ニーズとのズレによって負のスパイラルに突入しているのが現状だと分析します。

一般社団法人ウェルネス総合研究所主催「第2回 食品業界トレンドセミナー」講演資料より

売れない理由と、売れている製品の特長

はじめに、売れていない製品の共通点と消費者の捉え方について解説しました。食と健康に関する製品群で売れていないのは、特定の健康効果をいわゆるヘルスクレームにおいて機能性表示を取得した製品です。例には「メタボ茶×肥満」を挙げ、3ヵ月間など消費者が長期間にわたって継続することの難しさを語ります。
ずばり、売れない理由は期待している健康効果が短期間に数字で証明されないから。消費者がヘルスクレームに書かれた効果を、薬のようにすぐ効くものと誤認してしまうような製品設計に無理があるのです。

一般社団法人ウェルネス総合研究所主催「第2回 食品業界トレンドセミナー」講演資料より

反対に、売れている製品では同じお茶のカテゴリーから、日本コカ・コーラ株式会社の「からだすこやか茶®」を挙げて説明しました。この製品は、“脂肪の吸収を抑える”と“糖の吸収をおだやかにする”の2つを掲げ、そこに効果を証明するような数字はうたわれていません。
重要なのは、人の食生活における大部分を占めているのは特定の機能性をもつ食品ではなく、それ以外の食品だということ。そして、いま消費者が求めているのは、食生活全体をマネージメントできる製品です。

例えば食後のデザートに選ぶアイスクリームなら、糖質オフで低カロリーなものと、高脂質かつ糖質そのままのプレミアムなアイスクリームで考えます。前者は「製品×ウェルネス」という世界観をもつこれまでのマーケティングであるのに対し、後者は「食事×ウェルビーイング」という世界観で、より現実的なこれからのマーケティングだと説明しました。

一般社団法人ウェルネス総合研究所主催「第2回 食品業界トレンドセミナー」講演資料より

一般社団法人ウェルネス総合研究所主催「第2回 食品業界トレンドセミナー」講演資料より

ウェルビーイング時代に販売数が伸びる製品設計のポイント

このようにマーケティングの違いを示した上で、今まさに食と健康は大きなターニングポイントを迎えていると続けます。そのポイントとなるのが、ターゲット層とアプローチすべき領域です。
これまでは多くの企業が高齢者をターゲットとし、「病気を意識した未病」の領域に対して苦労して取得する機能性表示をつかってアプローチしてきました。しかし、この層は既に何等かの症状が出ていることも多く、すぐに証明できるような即効性や効果を求めがちな層であるばかりか、LTVもあまり長くありません。

一般社団法人ウェルネス総合研究所主催「第2回 食品業界トレンドセミナー」講演資料より

そこで、これからはターゲットを若者にシフトし、健康な人が健康であり続けることをサポートするような製品設計も必要だと話します。そのアプローチすべき領域は「健康維持」で、食品がもつ栄養に的を当てて食事全体をカバーしていくことがポイントです。しかも、この栄養に着目したビジネスのターゲットは広範囲で、病気の有無や未病ケアのどの領域にあっても通用すると言います。

一般社団法人ウェルネス総合研究所主催「第2回 食品業界トレンドセミナー」講演資料より

機能性表示を取らずに売れている製品の特長

次に、地中海や日本の京丹後市など世界中の長寿で有名なエリアに共通した食生活におけるファクトについて解説した上で、ヘルスクレームに頼らずとも売れている製品を紹介しました。製品の例に挙げたのは、33種類の栄養素とおいしさの完全バランスを追求した日清食品ホールディングス株式会社の「完全メシ®」。これはまさに、バランスを整えることで若い層をターゲットにできる新しいウェルビーイング時代の製品だと語ります。そこに、ホメオスタシス(恒常性維持)の観点からも栄養バランスが重要であると添えました。

一般社団法人ウェルネス総合研究所主催「第2回 食品業界トレンドセミナー」講演資料より

一般社団法人ウェルネス総合研究所主催「第2回 食品業界トレンドセミナー」講演資料より

プロテインは量より質!次世代コラーゲン“トリペプチド”

前半、武田氏が解説した「コラーゲンの新しい方向性」に続き、藤田氏からは「次世代コラーゲン」について解説がありました。近年、少しずつ日本の消費者のなかでもタンパク質に関する重要性が認識されつつあるなか、コラーゲンはタンパク質のうち最もパフォーマンスが高いものとして進化を遂げています。その最先端の進化型は、吸収性および効率性に秀でた質の高い次世代コラーゲン、“トリペプチド”です。

ヒトにとってコラーゲンは骨や血管、腱や靭帯など多くの組織を構成するのに欠かせません。これを普段の食生活でケアしていくことが理想である一方で、トリペプチドを活用すればヒトが持つ健康維持のメカニズムを最大限に強化し、恒常性を維持することにつながる期待が持てると説明しました。

一般社団法人ウェルネス総合研究所主催「第2回 食品業界トレンドセミナー」講演資料より

一般社団法人ウェルネス総合研究所主催「第2回 食品業界トレンドセミナー」講演資料より

ウェルネス総研レポートonline編集部

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