◎“子宮から墓まで”テーマに幅広い知見が集結◎
第23回抗加齢医学会総会、東京国際フォーラムで開催
約5,200名が登録参加し盛況に

第23回日本抗加齢医学会総会(会長:大須賀穣、東京大学大学院医学系研究科産婦人科学教授)が6月9~11日の3日間に渡り、東京国際フォーラムで開催された。「老若男女の抗加齢fromwomb to tomb(子宮から墓まで)」をテーマにリアル・WEB合わせて約5,200名が登録し、会場では数多くの医療従事者・研究者らが健康長寿に向けた様々な新知見に耳を傾け、討論を交わした。隣接する会場では「アンチエイジングフェア2023」も開催され、一般消費者らが来場し、フェア出展企業各社の催しや専門家による講演等を楽しんでいた。次回、2024年の総会は5月31日(金)~6月2日(日)に熊本城ホールで行われる。

6年振りの東京国際フォーラムで全館あげてのリアル開催となった今回は、会期3日間を通じて多くの会員で賑わい、また地下の展示ホールでは企業展示やパネル口演、そして一般向けイベント「アンチエイジングフェア2023」のいずれも多くの来場者で盛況を迎えた。大須賀会長の講演では、「女性の一生と次世代に向けたアンチエイジング」と題し、年齢に応じてホルモン環境が大きく変化する女性は、年齢ごとに疾患も大きく異なり、また子宮内の環境が児の将来の生活習慣病と関連することが明らかとなってきたことから、妊娠前、妊娠、分娩、そして一生を通してのアンチエイジングを実践する時代に入ってきたことを示した。また、山田秀和理事長による提言「暦年齢から生物学的年齢へ」では、健康寿命の延伸を目指した同会の活動が、従来の予防医学から老化制御のための治療法探索、さらには“若返り”を見据えた研究へと領域を広げているとし、“老いは疾患”という観点から老化の計測、評価、コントロールなどについて研究・議論を進めていく必要があるとした。


このほか海外招待講演・特別講演をはじめ、教育講演4題、緊急講演1題、多彩なシンポジウム29題、一般演題219題等々さまざまな講演が行われた。当日のライブ配信および後日のオンデマンド配信も実施した。

機能性表示食品シンポなど幅広い食品成分研究も

機能性表示食品を健康長寿に生かすシンポジウム(パネルディスカッション)

機能性表示食品関連で注目されたシンポジウムは「機能性表示食品を健康長寿に生かす」(座長:森下竜一/橋本正史)。消費者庁食品表示企画課保健表示室の蟹江誠室長や同庁表示対策室ヘルスケア表示指導室の田中誠室長、日本抗加齢協会の細山浩事務局長、アサヒクオリティーアンドイノベーションズ・コアテクノロジー研究所の広田辰彦氏、近畿大学アンチエイジングセンターの山田秀和客員教授らが講演し、機能性表示食品の現状や広告表示の取締り、届出支援の中身、免疫表示を実現した乳酸菌L-92、老化は病などの話題を提供。パネルディスカッションでは田中室長が講演中に指摘した、景表法に抵触するおそれのある “医師が推奨”広告の範囲などについて、演者・座長らで討論が交わされ、田中室長は複数の専門医からの推奨が妥当とする一方、特定の医師一人だけの推奨では難しいという見方を示した。

機能性成分に関する演題も数多く、地方・地域・企業の特色を生かしたメンズヘルスに関するシンポ(座長:井出久満/松本成史)では、岡山から「酵素分解蜂の子」(伊藤隆志)、京都から「カイコ冬虫夏草」(齋藤志穂)、尾道から「黄杞」(大戸信明)、沖縄で栽培されるシークワーサー由来の「ノビレチン高純度粉末」(菅谷公男)になどでそれぞれ知見を紹介した。

先ごろ機能性表示食品に届出受理された水素分子に関しても、慶応大学による医療現場における水素ガス吸入での心肺停止患者の生存率向上や予後改善についての臨床研究と作用機序について、9日にランチョンセミナー(佐野元昭、共催:ドクターズ・マン)が行われた。活性の低い水素分子がなぜ体内でヒドロキシラジカルと反応できるかについても、血中の酸化型ヘムが有機触媒の役割を果たすという最新の研究も紹介した。

このほかにも人生 100 年時代の健康寿命延伸のシンポ(座長:髙倉伸幸、赤澤純代)では、心不全治療におけるサプリメントや漢方の活用(桜田真己)、抗加齢を目指した補助医療のシンポ(座長:山岸昌一、青木晃)では、野菜に含まれるスルフォラファン、ケルセチンの抗AGE-RAGE作用による老年疾患への有用性(山岸昌一)、低分子コラーゲンペプチドの抗糖化作用(伊賀瀬道也)等が報告された。栄養やサプリメントなどに関する一般口演(座長:野間玄督、東浩太郎/磯谷周治、米井嘉一)からは露地栽培アガリクスとストレス系認知機能(元井章智)、ノコギリヤシ果実エキスと女性尿路感染症状(山田静雄)、マグロ肉のセレノネインと酸化ストレス(遊道和雄)、CBDとストレス改善(青木晃)、光老化とエラスチンペプチド(竹森久美子)などが紹介された。

評価法や分析に関する話題では、MRI を用いた MCIの画像診断から脳年齢の評価に繋がる可能性(伊賀瀬圭二)、超速老化魚をモデルとした老化速度制御機構の探索・解明(石谷太)、緑内障診療での認知機能スクリーニング検査による相関性(谷戸正樹)など、今後幅広い導入や応用などが期待できるトピックが揃った。雄)、CBDとストレス改善(青木晃)、光老化とエラスチンペプチド(竹森久美子)などが紹介された。

評価法や分析に関する話題では、MRI を用いた MCI の画像診断から脳年齢の評価に繋がる可能性(伊賀瀬圭二)、超速老化魚をモデルとした老化速度制御機構の探索・解明(石谷太)、緑内障診療での認知機能スクリーニング検査による相関性(谷戸正樹)など、今後の抗加齢医療への導入や食品成分研究への応用などが期待できるトピックが揃った。

朝食習慣から見えるWell-beingの可能性
東北大学特任教授 村田裕之氏

6月9日に開催された第23回日本抗加齢医学会総会内ランチョンセミナー(共催:吉野家ホールディングス)にて、「朝食習慣とWell-beingの関係性:現代における朝食の価値~2010年と2022年調査比較、脳科学的検証を踏まえて~」と題して、東北大学特任教授兼同大学スマート・エイジング学際重点研究センター企画開発部門長の村田裕之氏が、吉野家ホールディングス、東北大学ナレッジキャスト、NeUが行っている朝食と幸福度に関する研究について紹介した。

2010年、東北大学は20~60代のビジネスマン1,000人を対象に「幸せ度とライフスタイルに関する調査」をアンケート形式で実施した。同調査では、毎日バランスの取れた朝ごはんを食べている人は、生活の充実度や自由時間の活用の満足度に加え、仕事や経済的な満足度も高いという結果となった。また、朝食の摂取頻度と幸福度の関係について、74.2%が平日も毎日朝食を食べる、83.2%が週3日以上食べると回答。幸せ度別でみると、幸せ度が高いほど朝食頻度も高い傾向にあり、男性より女性で、若者より年長者で、朝食頻度は高く、幸せ度との比例関係がみられた。朝食を摂取している人の中で、食べているものの傾向では飲み物が最も高く(69.4%)、次いでパン食(59.3%)、米食(43.6%)、果物(29.6%)となった。幸せ度別でみると、飲み物や主食で差はみられなかったが、幸せ度が高い層の方が果物や副菜などバランスの良い朝食を摂っていた。

2022年に実施した調査は、2010年の調査に準拠して行われ、コロナ禍やスマホの普及による影響についての設問を追加して実施した。結果、2010年同様に朝食摂取頻度が高いほど幸せ度が高く、生活リズムが安定している、体調や健康に気を配っていると回答。朝食の摂取頻度が低い層と比較して20~30%高い割合となっていた。一方、スマホの使用時間との関連については、使用時間が長いほど朝食の頻度が低く、幸せ度も低かった。性年齢別使用状況では、3時間以上利用する層は男女とも若い層に多く、20代が最も多かった。スマホの使用時間が5時間以上の層では起床時間が決まっていない、あるいは9時以降に起床する割合が増し、使用時間が長いほど朝食を食べない層が増加する。このことからスマホの使用が生活リズムと朝食の摂取習慣に影響を及ぼしていることが示唆される。

コロナ禍以降のライフスタイルの変化として、幸せ度が高い層は、朝食の頻度及び米を食べる頻度が高くなった。一方で、幸せ度が低い層の朝食の頻度と米を食べる頻度は、幸せ度が高い層の半分程度で、イライラや不安を感じる頻度が多くなっていた。また、幸せ度を判断する時に重視する項目の上位3位は経済的な余裕、健康状態、家族関係で、2010年と2022年で差はなかった。しかし、2010年では4位:仕事が充実していること、5位:自由な時間があることだったのに対し、2022年では4位:充実した余暇が過ごせること、5位:趣味を十分楽しめることに変化した。村上氏は、「2010年と2022年の間でコロナ禍や世代交代を経て価値観に変化が生じている。多くの人が朝食を積極的に摂り、心身の健康を保てるようにその重要性を周知していきたい。」と総括した。

「FOOD STYLE 21」2023年7月号 良食体健トピックスより

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