機能性表示食品開発と未利用資源の有効活用との連携を目指して
制度開始から9年目を迎えた機能性表示食品は、総届出件数7,000件(撤回分含む)まで伸長を遂げた。前年度の2022年 “Hナンバー” の届出件数は1,429件で締められ、現在23年度 “Iナンバー” の届出が毎週着々と消費者庁WEBサイト上で更新されている。2022年度は前半の届出受理のペースこそ不安定で、業界内に波紋を呼んだこともあったが後半一気にペースを上げ、2021年度の1,445件と同水準に落ち着いた。
2020年度1,067件、2019年度の882件と比べても顕著に増しており、矢野経済研究所の調査によるメーカー出荷ベースの金額をみても、この5年機能性表示食品で市場は倍増し、2023年度には5,000億円超えを予測する。健食市場全体ではこの数年8,000億円台半ばを微増推移するなかで、機能性表示食品の存在感は明らかに強まっている。
このような市場伸長の要因は超高齢化を迎えるなかで、健康の価値が相対的に高まり、また共通認識として広がったことが土台である。その価値を守る為の手段は日常的な運動、生活習慣や普段の食生活の改善、生活や労働環境の改善など多岐に渡るが、通常の食事を踏み越え、特定の食品成分の摂取によって健康維持・改善の一助とするサプリメントの利用の広がりについては、本制度ならびにその “前身” たるトクホや栄養機能食品制度も含め、人々の認識を改めていく上で重要な役割を果たしたと捉えている。
制度開始当初からエビデンス確保に率先して取り組んできた研究開発型の企業にとっては、制度を通じて研究投資の成果が “情報” としての正当な価値とリターンを生み、さらなる研究投資を進めるという好循環を生み出すことを可能にした。流通・販売事業者にとっても一定の信頼性ある商品として、自信を持って扱うことができる。機能性成分の測定、臨床試験での評価、査読論文の作成、安全性の評価、ルールに則った届出、さらにこれらの情報がWEBサイトで常時公開されていることが社会的な透明性と信用を高め、それまで健康食品に一定の距離を置いてきた事業者の参入を促し、新たな事業やサービス、企業連携を進める上で合意形成しやすい環境を生み出しつつある。
本制度のさらなる有効活用先として本欄担当者が期待するのは、各地域の未利用資源の有効活用だ。本誌シリーズ連載「地方発バイオイノベーションの進展と機能性食素材開発」(※現在リニューアルに向け休載中)で紹介してきたように、地域の農林水産物から生じる未利用の部位や成分、中山間地域の耕作放棄地対策などで栽培・生産を進める新規の食素材、絶えて久しい古来の伝統農産物の復活と有効利用など、地域活性化を目指した機能性食品の開発は各地で取り組まれ、日本のみならず台湾やハワイ、欧州各国でも同様の試行錯誤が続いている。これまでの取材を通じた見聞からは、ヒット素材・成分として広く流通するものも増えてきた一方、コストや予算、マンパワー不足、オピニオンの不在など諸事情により拡大が叶わず “ご当地の健康素材”に留まるものも少なくない。そこで改めて機能性表示食品への対応化を目標に捉えることで新たな枠組みを作り、好循環の輪に乗せることができるのでは、と考えている。
本誌と食品化学新聞社が来年5月22~24日の「ifia/HFE JAPAN2024」で新規開設する「機能性表示食品開発パビリオン」は、このような課題を解決できる場として機能できるよう、様々な団体・企業の参加を募っている。原料素材・OEM(ODM)・SRコンサルティング・CRO・分析評価など制度に関わる人士の交流が行き詰まりの打開策を生み、企業活動のみならず地域活性化の起爆剤になることを期す。読者の皆様のご参加により、さらに大きな輪を一緒に作って頂きたいと願う次第だ。
「FOOD STYLE 21」2023年6月号 F‘s eyeより