注目集める疾病リスク低減表示の動き

特定保健用食品(略称:トクホ)制度が1991年に施行されてから30年経過して、今、個別案件の疾病リスク低減表示についての動きに注目が集まっている。2023年2月に消費者庁は消費者委員会に個別案件の疾病リスク低減表示で3製品を諮問した。翌3月には消費者委員会で疾病リスク低減表示の基本的な“考え方”を共有するための部会および調査会の合同会議を開き議論した。最近では消費者庁が食品安全委員会に前述の3件のうち1件について疾病リスク低減表示トクホ製品の健康影響評価を依頼している。
 
これまで疾病リスク低減表示は、科学的根拠が医学的・栄養学的に広く認められ確立しているものとして、「カルシウムと骨粗鬆症」「葉酸と胎児の神経管閉鎖障害」が認められ、さらに2022年8月に「う蝕」が加えられた。これらは個別案件と比較して申請しやすい面があり、「カルシウムと骨粗鬆症」では複数製品が認可されている。一方、個別案件の申請も法律的には申請が可能であったが、要求する内容について国の通知では読み取れない部分もあり、また申請ガイダンスのようなものもなく、非常にハードルが高かった。そこで、日本健康・栄養食品協会は個別案件の疾病リスク低減表示に挑戦する事業者を公募し、仮の申請ガイダンス案を作成して勉強会を設置、協議を重ねて今日に至った。疾病リスク低減表示の個別案件は初めての試みで審議して認可となれば、その経緯を生かして “申請ガイダンス” を作成し、それを基として、これから続く個別案件の疾病リスク低減表示を申請する事業者が増えてくれば、トクホ市場が活性化する可能性がある。
 
これまでの経緯は、消費者庁が2月14日、疾病リスク低減表示に関連して3件の申請について消費者委員会に安全性および効果について諮問した。申請された3件の内容は、①申請者:マルハニチロ、関与成分:DHA・EPA、食品形態:フィッシュソーセージ、申請された保険の用途:歳をとってから心血管疾患になるリスクを低減する可能性がある旨を特定の保健の用途とする食品(以下同順)②花王、茶カテキン、茶系飲料、メタボリックシンドロームの発症リスクを低減する旨を特定の保健の用途とする食品③サントリー食品インターナショナル、桑の葉由来イミノシュガー、茶系飲料、Ⅱ型糖尿病の発症リスクを低減する可能性がある旨を特定の保健の用途とする食品である。どれも今までにない画期的な表示案となっており、日健栄協で公募し内容を協議してきたもの。今後は①消費者委員会新開発食品調査部会新開発食品評価第一調査会で効果の審査②すでに許可・承認されている特定保健用食品と異なる関与成分を含む食品は食品安全委員会で安全性審査③①と②で了承が得られた後は消費者委員会新開発食品調査部会で安全性および効果の審査④健康増進法第43条第5項の規定に基づく厚生労働大臣の意見聴取を得て認可される。
 
サントリー食品インターナショナルの製品「健康茶 血糖値対策500」として4月18日の食品安全委員会で今後、食品健康影響評価を審議することが明らかとなった。同品は関与成分が桑の葉イミノシュガー(3.5mg)、特定の保健の用途は「食後の血糖値の上昇を抑え、Ⅱ型糖尿病の発症リスクを低減する可能性がある」。
 
消費者委員会の新開発食品調査部会・新開発食品第一調査会合同会議では、サロゲートエンドポイントや観察研究、メタアナリシスについて話し合われ、例えば、メタアナリシスでは関与成分かバイオマーカーかどちらかと疾病関連のメタアナリシスで受領することがわかった。今後、消費者委員会の部会や調査会における議論の推移や、食安委の審査内容などを注視していく必要がある。

「FOOD STYLE 21」2023年5月号 F‘s eyeより

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