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食品健康ビジネスにおける成功の鍵

プラントベースフード(PBF)にローカルフード、投資家も参入する食品産業の行方

植物性プロテインは健康ハロー効果がつよいと聞きますが、プラントベース肉代替品についてどのようにお考えでしょうか?

最近のアメリカやヨーロッパでは、プラントベース肉代替品の分野に、食品業界の専門家ではない投資家の参入があることも問題のひとつです。製品として成型するために多くの原材料を必要とする肉代替品は、天然でシンプルなものを欲する消費者のニーズと合いません。

さらに工程が複雑なため価格も高く、味が期待するほどよくないこともあって、2022年にはその売上高が20%近くも減っています。ある薬局での調査によると、世界6カ国の肉代替品メーカー100社における財務状況で利益を出している会社はひとつもありませんでした。

今後、プラントベース肉代替品において成功するためには、どのような戦略が必要でしょうか?

有効な戦略としては、これまで“肉らしいもの”として置き換えていた見せ方ではなく、まったく別の新しいカテゴリーとして見せるやり方でしょう。たとえば、オーストラリアのFable Food社のマッシュルームをつかった製品や、アメリカのAfia Food社の製品は、味もよく植物を便利に摂ることのできる製品として人気を集めています。これらはアーリーアダプター向けに的を絞った戦略で、シンプルかつ適切な原材料の料理で、食べることを楽しむという特徴をもった新しいカテゴリーです。

また、近年では世界中の研究者たちが「超加工食品」について懸念の色を示していることもあり、原材料に対して消費者の関心が高まりつつあります。現に、アメリカのGeneral Mills社がつくる原材料わずか3つほどのヨーグルトは、初年度1億ドルの売上高を達成し、今では2億5,000万ドルにも昇る勢いです。

では、国産などローカルフードについてはどのように見ていますか?

社会的かつ政治的な背景もあって、過去10年間でローカルフードに対する消費者の関心は高まってきていると言えるでしょう。ただし、国内産を好むひとがいる一方で、より安価な外国産を好むひともいます。これには、消費者の信念や行動を細分化して見ることが必要です。政治的なものについて個々の意思で変えることは難しい一方で、食べるものや買うものについては自ら情報を得て選択することができます。近年、売り上げを伸ばしている企業が原材料の出どころを明記しているのも、そうした消費者のニーズに応えるためかもしれません。

さいごに、食品業界の関係者に対してメッセージをお願いします。

日々、多くの製品やカテゴリーが登場する現代では、消費者に対する丁寧で段階を踏んだコミュニケーションが成功の鍵となるでしょう。そして、消費者にとって分かりやすい原材料と、信頼のある科学的なデータを添えることも有効です。

今回、お伝えしたデータや情報は必ずしもこうしなければいけないというものではありません。皆さんにとって有用なものを選択し、研究開発やマーケティングに活用していただければうれしいかぎりです。

Julian Mellentin氏 プロフィール

英国オックスフォード大学卒業後、マンチェスタービジネススクールにてMBA取得。
1985年より10年間、欧州主要各国、米国、オーストラリアにてブランディング、B to Bビジネス等、豊富なマーケティング経験を持つ。1995年New Nutrition Business社設立、2006年以来毎年発行する10 Key Trends in Food,Nutrition & Health誌の著者であり、世界の健康栄養食品業界におけるスペシャリストの一人として活躍中。


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