あっと(株)の新しいCAS TABの機能と毛細血管スコープ「血管美人」のさらなる活用について
あっと(大阪市中央区・武野團代表取締役)は、かねて展開する、指の爪などの毛細血管からリアルタイムに健康を測る毛細血管スコープ「血管美人」およびその解析システムについて、新たな製品を市場投入する。新システム「CAS TAB Ver.2」は、独自のアルゴリズムにより撮影した中から品質の良い毛細血管画像を自動で撮影できるオートシャッター機能を実装。よりベストな状態の毛細血管画像を撮影・保存し、さらなる新機能・オーバーレイ機能によって、前回画像から毛細血管像を抽出し、リアルタイム表示画面に投影する事で、同じ個所を撮影する再現性を高めた。顧客・データ管理機能やカルテ機能、2画面比較なども合わせ、多くの被験者での定期的な毛細血管画像の管理や経時変化の把握がいっそうスムーズとなった。緑内障との相関性に関する研究(東北大学医学部眼科学教室)をはじめ、血管・血流の改善に寄与する食品成分の探索・評価など、健康指標としての毛細血管の状態観察の可能性が注目される。
毛細血管スコープの基本構成・特徴―①スコープ
同社が展開する毛細血管スコープ「血管美人」は、採血することなくヒトの指先の毛細血管像をモニタリングできる機器。研究用として大学や研究機関に置かれるほか、健保組合や薬局・薬店など健康相談を実施する施設で毛細血管測定デモンストレーションに広く利用されている。2009年の同社設立以降、スコープおよび管理ソフト、解析システムはより高精度に毛細血管の状態をリアルタイムに観察できるようになり、現在では血管・血流からの健康に役立つ食品成分の臨床研究にも導入されるようになってきた。
「血管美人」の主なシステム構成は、毛細血管スコープ本体「毛細血管スコープSC-10」および毛細血管解析ソフト「CAS(Cpillary Analysis System)」による。大まかな使用方法は、左手薬指の指の爪の付根(指爪床部)に専用オイルを少量塗布し、スコープと台座の間のスペースに指を入れ、スコープの位置(前後、左右、上下)、ピントを調整したうえで観察を行うというもの。毛細血管画像は、付属のモニターでリアルタイムに血管の形状や状態が観察できる。
なお、SC-10は、スコープ本体が非常に小型・軽量で台座から取り外して使用できる点が特長となっており、指の爪の付根以外の身体部位での観察も可能となった。さらにモニター・本体合わせ1820gと軽量化したことで、持ち運びが容易で、様々なロケーションでの利用しやすくなっている。
CASの基本構成・特徴―② 解析ソフト
観察で得られた毛細血管像は、PCにインストールしたソフトウェア「CAS」を本体と接続することで活用の幅が大きく広がる。被験者情報の入力・ID管理機能によって定期利用者のスムーズなデータ管理ができ、また動画・静止画のキャプチャーが可能。さらに画像計測機能によって、1枚あたり4秒ほどで自動的に数値化できるため、毛細血管の状態を定量的に評価することが可能だ。このほか前回の撮影画像との2画面比較に加え、クラウド解析システムを用いることで性別・年代での定量評価ができる。
毛細血管画像の自動数値化については、大阪大学医学系研究科との共同研究を通じて開発した画像処理アルゴリズム(反応拡散方程式)によって個人の毛細血管の本数・長さ・太さなどの数値化を実現。特許出願済みの新手法によって、二値化の際に従来は画像ごとに閾値を設定する必要が生じていたが、被写体の状態や環境に対する影響を受けにくい形で毛細血管の形状を抽出できるようになっている。
「CAS TAB Ver.2」の機能と特徴―③ 取得管理ソフト
2022年5月に同社が新たにリリースした「CAS TABVer.2」は、「CAS」の機能から数値化を除き、よりスムーズかつ正確に毛細血管画像が取得できる毛細血管画像管理ソフトだ。新機能として搭載した「CASキャプチャー」は、熟練者並みの毛細血管画像を自動で取得できるシステムとなっている。これまでの「血管美人」ユーザーとのコミュニケーションを通じて浮かび上がった、「操作の際に毛細血管に対して本当にピントが合っているか?」あるいは「画像に映っているのは血管の“濁り” なのか? それともピントがズレているだけなのか?」など操作に関する悩みに対応する。
主な新機能は、①独自の機械学習技術でベストな画像を自動で取得する「オートシャッター機能」、②毛細血管にピントが合っているかどうかを定量的に確認できる「ピーキング表示機能」。これらによって、操作に慣れない人でも失敗することなく画像が得られる。さらに③前回の毛細血管像を、リアルタイム表示画面に重ねる「オーバーレイ機能」も実装。前回画像と同じ場所を効率的に探索できるようになった。
このほか、顧客・データ管理機能も豊富で被験者の初見・症状などの情報を追加・編集できるカルテ機能、画像・動画の2画面比較には、所見・評価コメントが追記できるなど使いやすさを向上。CSVによる顧客データのインポート機能も有し、研究からプロモーションまで万全に対応できるシステムに進化した。
さらなる機器開発と研究領域拡大へ
同社では今後、「CAS TAB Ver.2」の利用を広げていくとともに、撮影した毛細血管画像について独自開発の受託解析システムやクラウド解析システムでの活用を提案している。また毛細血管スコープやシステムのさらなる改良を進め、血流の自動計測化やAIを用いた毛細血管・血流の評価などに取り組んでいく。さらに他の計測法や機器との相関解析や、治験や臨床研究などで用いられる多様な解析手法の提供など学術レベルのエビデンス開発も進めていく構えだ。
「FOOD STYLE 21」2022年6月号 特集2(健康データの測定、分析・評価)より