「7つの健康セグメント」から見えてきたウェルネストレンド
一般社団法人ウェルネス総合研究所は、10代~70代、4800名の生活者の健康・ウェルネスに関する意識と行動分析に基づき、今後予測されるヘルス・トレンドシナリオを洞察した調査レポート『ウェルネストレンド白書 Vol.1』を12月7日刊行します。本白書ではプロファイリング分析により、生活者を「7つの健康セグメント」に新たに分類。各健康セグメントの特性を明らかにするとともに、各セグメントによる興味関心をヘルスベネフィット、素材・成分の観点から分析しています。この記事では健康セグメントの詳細とともに、セグメントから見えてきたウェルネストレンドの潮流についてご紹介します。
健康・ウェルネス市場のポテンシャルについて
人生100年時代にあって、「できるだけ長く心身ともに健康に過ごしたい」という生活者の健康ニーズは今後ますます高まっていくと考えられます。それに連動して、健康・ウェルネス市場は、国内において長期的な視点で見ると継続的な成長が見込まれています。
一方で、生活者の健康志向については、性別や年齢といった属性だけでなく、ライフスタイルや健康情報に対するリテラシーなどの影響で、より細分化されたセグメントを形成する傾向が見られます。また、長引くコロナ禍に代表される社会情勢や、欧米など海外におけるヘルス・トレンドも、国内の生活者の健康ニーズに大きな影響を与えています。
その機運を受けて、2015年4月にスタートした機能性表示食品制度は、6年半を迎えた現在、届出件数は4162件を数えています(10月27日現在。届出撤回件数は含まず)。急伸した機能性表示食品届出ですが、一方で、それだけで売れている商品はほとんどないのが現状です。ヘルスクレームは商品のメリットを伝える手段ではありますが、そのメッセージが生活者の必要としている課題解消につながっていなければ意味をなさないものとなります。エビデンス、商品設計、ヘルスクレーム、マーケティングコミュニケーションによるメッセージを統合的な生活者視点のストーリーとして設計し実行することで、はじめてその商品の価値が生活者の求めるものであると気付いてもらうことができるのです。
生活者視点でのストーリー開発の必要性
日本よりも早くから機能性表示(ヘルスクレーム)が幅広く認められている欧米では、今ではヘルスクレームに対する期待は高くないという状況にあります。例えば米国ニュートリション市場は「ファンクション(機能)からナチュラルへ」と大きく変化し、マーケティングの主眼も「表示ではなくストーリー」に大きく変化していることが見てとれます。ここで言うストーリーとは、単なる物語ではなく、サイエンスに基づいた生活者ベネフィットをわかりやすくシンプルに伝える情報すべてのこと。近年の欧米での成功事例の共通点を見ると、最終的にはここに落ち着くと考えられます。
機能性表示は生活者にストーリーを伝えるための手段の一つに過ぎませんが、機能性表示が可能になることで、それまでは伝えることができなかった情報を伝えることができるのは大きな違いとなります。しかしながら、重要なことは、表示の根拠となっているサイエンス(科学)を生活者にとってわかりやすく、使いやすい情報として提供することであり、何より生活者にとって価値のある商品化を進めることです。
サイエンスと生活者の架け橋になるのがコミュニケーションとなりますが、機能性表示や商品価値、その他の情報提供を含めたストーリーが、生活者の心を動かしているのです。
7つの健康セグメントについて
本白書ではプロファイリング分析により、生活者を7つの健康セグメントに新たに分類しました。各健康セグメントの特性を明らかにするとともに、各セグメントによる興味関心をヘルスベネフィット、および健康に関連した食品素材・成分の観点から分析しています。
分析の結果、健康に対して何らかの意識を持つ“健康高関与層”(「健康ストイック層」「健康コンシャス層」「コツコツ健康層」「ラクして健康層」が全体の6割を占めることがわかりました。一方、健康に対して明らかに意識が低い“健康低関与層”(「健康無関心層」)は全体の1割強でした。
各健康セグメントの具体的な特徴は次のようになります。
この7つの健康セグメントを、「認知素材数」(素材・成分をどれぐらい認知しているか)と「健康情報源数」(健康情報をどれだけの情報源からとっているか)の2軸で見てみると、「認知素材数」「健康情報源数」ともに最も多いのが「健康ストイック層」であり、最も少ないのが「健康無関心層」で、「認知素材数」は1.5倍、「健康情報源数」は2.5倍と大きな差がついています。健康意識の違いが、健康情報への関心の違いを、関心の違いが素材・成分の認知の違いにつながっていると考えられます。
ボリューム上位のヘルスベネフィットについて
食品機能性のマーケティングにおいては、素材・成分に関する市場動向の予測は重要な課題と考えられます。素材・成分の機能性についての認知、理解だけでなく、生活者の潜在ニーズを把握することも、市場動向の予測に役立ちます。
本白書では、生活者が関心を持つヘルスベネフィットの中で、市場ポテンシャルの高いヘルスベネフィットは何かを分析しました。具体的には、生活者がどのようなヘルスベネフィットに関心を持っているのか(関心度)、その関心は対策(行動)として顕在化しているのか(対策の有無)、行動にまで至っていなくても対策意向があるのか(対策意向の有無)を、47のヘルスベネフィットについて調べ、生活者の関心の実態、対策意向を構造化することで、顕在市場と潜在市場を類推し、市場のボリュームやポテンシャルを分析しています。
生活者の潜在ニーズを洞察することによって、素材の持つ機能性の打ち出し方、言い換えれば“ストーリー設計”のヒントが見つかるかもしれません。
ウェルネスに特化した生活者分析とトレンド予測
生活者の心を動かすストーリーを組み立てるためには、まずは生活者を知らなければなりません。しかし生活者を健康志向や健康食品素材の観点から専門的に分析したレポートはこれまでありませんでした。
本白書では、①生活者の特徴的な健康志向セグメント、②健康食品素材に求めるベネフィット、③健康食品素材の認知、摂取意向の3つの軸をクロスさせた俯瞰的な分析と、今後予測される生活者の健康・ウェルネスのトレンド・シナリオを提示しています。これは本白書が、ウェルネス業界に長年携わってきたメンバーによって調査・分析されたものであるからこそ、可能になったものといえます。
生活者視点でのマーケティングが求められる中、最新の生活者の健康意識と行動の把握を通じて、健康・ウェルネス領域で事業を展開されている企業・団体のマーケティング担当者、研究開発担当の方々の課題解決やビジネス拡大の一助となれば幸いです。