【マーケティングレポート①後編】人生100年時代の必需品となるか?「ヌートロピック」との付き合い方

ヌートロピックとは、健康な人の脳の機能や能力を高め、認知機能の向上や維持に役立つとされる物質の総称です。注目されている理由や成分について解説した前編に続き、日本におけるヌートロピックの現状や将来の可能性について、グローバルニュートリショングループ代表の武田猛氏にうかがいました。

ヌートロピックは主にどのような人が購入しているのですか?また、購入する動機は何でしょうか?

購入する人の目的は、国内外ですこし異なります。これはおそらく、ヌートロピックに対する位置づけの捉え方が異なるからでしょう。欧米では、仕事や勉強のパフォーマンスを上げるために使うという捉え方の人が多いようです。対して日本人は、加齢によって罹患リスクの高まる認知症を予防するために使うというような、予防的に捉える人が多いかもしれません。
ただし、最近の日本における市場を見てみると、予防的なニーズも継続してありつつ、アクティブな捉え方も増えてきたように思います。

日本人のヌートロピックに対する捉え方が、変わってきたということでしょうか?

ヌートロピックに対する考え方が変わったというよりも、生活者が能動的に自ら情報を調べて判断し、購入につながるスタイルへ変わってきたということだと思います。
20~30年前の日本で、健康食品がどのように販売されていたか思い出してみてください。現代のようなインターネットや通信販売は普及していません。そのため、人づてや訪問販売、試飲会などで販売につなげていたと思いませんか?それが2000年頃から通販が一気に広がり、今では、テレビやインターネットで簡単に注文できるようになりました。最近ではSNSによる情報収集の役割が商品購入においても大きくなっています。
つまり、健康食品やヘルスケアをうたう商品に関する市場の在り方と、生活者における行動のどちらも20~30年前とは大きく変わってきているのです。生活者自らが脳を効果的に使うことについて興味を持った結果、それが市場に反映されてきたといえるのかもしれません。

ヌートロピックに関して、日本独特の傾向はありますか?

日本では予防的な観点であっても慎重な姿勢をとる人が多く、市場の成長は外国よりも緩やかということでしょうか。その理由については憶測ですが、不安や誤解、偏った認識もあるのではないかと思っています。
例えば、ヌートロピックと検索すると、スマートドラッグという別の呼び名も出てくることで、これが覚せい剤や麻薬のように怖い印象をもつ人もいます。また、皆保険制度があることや自身での判断では不安という気持ちから、まずは医師に聞いてからという人もいるでしょう。
ただ、私たち日本人も以前から、生活の中に上手くヌートロピックを取り入れてきました。誰もが一度は、睡魔と闘うときにカフェインを摂ったり、リラックスしたいときにハーブティーを飲んだりしたことがあると思います。これらは、無意識ながら日常的におこなっている、ヌートロピックの応用なのです。午後2時~午後4時の「八つ時」に甘い物を食べる「おやつ」の習慣なども、その一つと考えても良いと思います。

今後のヌートロピックにおける展望を教えてください

国内外を問わず、現代人の脳は錯綜する多くの情報を処理しきれずに、日々疲れているということは紛れもない事実でしょう。とくに最近では、新型コロナウイルス感染症の拡大によって不安を抱える人も多く、メンタルヘルスに作用する成分が注目を集めています。加えて、運動不足による肥満や、生活の変化にともなう睡眠の乱れに対する成分も需要が高まっています。
多くの人が、不安に負けない、情報を仕分けできるしゃっきりとした脳のパフォーマンスを手に入れたいと願っているはずです。今後は日本でも、アクティブな視点で脳を活性化させるような成分が、市場を引っ張っていくだろうと予想しています。

ヌートロピックの正しい選び方

ヌートロピックに関する商品を選ぶとき、どのような点に注意が必要でしょうか?

選んだり購入したりするときには、その成分が自分にとって必要なものなのかどうかという視点で見ることが大切です。研究がなされた上で開発された商品には、それぞれのエビデンスがあるかと思います。これについて、年齢や性別などを含め、自分に当てはまる条件で試験がなされているかという視点で見るようにしましょう。
ヌートロピックはそれらのもつ作用から、脳や神経に働きかけるものが多くあります。したがって、過剰摂取とならないように気を付けることは勿論、医薬品やほかのサプリメントなどとの相互作用にも注意が必要です。例えば、医薬品との相互作用が多いものに、西洋オトギリソウ(セントジョーンズワート、SJW)を配合している睡眠サプリがあります。
自らも調べることを基本として、不安のある人は医師や薬剤師などの専門家に相談するとよいでしょう。

多くの成分の中から、安全に選ぶ方法を教えてください。

まずは、機能性表示食品であるということが一つの判断材料になると思います。機能性表示食品は、安全性の確保を前提として科学的根拠に基づいた機能性が表示されているものです。
続いて、GMP(Good Manufacturing Practice:適正製造規範)と呼ばれる品質管理体制がある工場で製造されたかどうかも一つの判断材料になります。これにより、製造工場における品質管理や、成分の含有量に対する信頼性などが担保されています。
これらの表示を確認することで、数多くのヌートロピックに関する成分の中から安全に選ぶ習慣を身に付けましょう。

目的に合う複数の成分を組み合わせて摂取しても、問題ないでしょうか?

ヌートロピックに関する成分は、神経に作用するとされるものが多いため、とくに過剰摂取とならないように注意してください。
例えば、少し前に話題になったカフェインの過剰摂取による死亡例は、日本だけでなく外国でもおこっています。健康食品やサプリメントは食品だから安全と過信しすぎないようにしましょう。組み合わせるにしても、一つずつその成分の量を考えて摂ることが大切です。

日本でヌートロピックがさらに広がっていくには

日本でより受け入れられるようになるための条件や、マーケティング活動を行う際に注意することはありますか?

どこの国でも言えることですが、まず情報発信が何よりも大事です。ヌートロピックを活用し、身体にとって上手く作用させていくためには、その成分だけを摂ればよいという訳ではありません。生活習慣や基本的な食生活も大切にする視点をもちながら、取り入れていくものであるということを、正しく訴求していく必要があります。加えて、昨今はインターネットを使って、自由に個人輸入もできる時代です。外国では購入が認められている成分でも日本では禁止されているなど、それらについて分かりやすい表記を徹底することも重要でしょう。
そこで分かりやすい条件としては、わが国独自の機能性表示制度や保健機能食品制度などというものがあったり、広告活動の規制があったりするのだろうと捉えています。

ヌートロピックが私たちの未来をどのように変えると考えられますか?

ヌートロピックを食品成分として摂る場合、それは治療ではありません。かといって認知症などの病気の予防だけとも限りません。現代の私たちは食品を摂取することで、疲れにくく最大限にパフォーマンスを発揮できる脳を手に入れることが期待できるのです。
この人生100年時代に、100年使い続けることのできる脳を創ることも夢ではないかもしれません。そうすれば、今、世界で課題となっている認知症に関する社会的費用の増加幅も減らすことが期待できるでしょう。
そしてこれが、個々の将来は勿論、日本や世界の未来にも明るい兆しの一手となれば素晴らしいことです。

まとめ

認知機能を含めて、脳の機能は数値化できないからこそ難しいものです。ただし、脳科学の進歩により、少しずつこのひも解きが始まっているのも事実です。そしてこの市場は明らかに伸びており、社会的にも需要が高まっています。
これからはシニアに限らずどの世代においても、脳のケアを意識する時代になるかもしれません。
ひとり一人がより良い日常生活を少しでも長く送るために、ヌートロピックが活用されれば嬉しいと思います。

<マーケティングレポート①前編はこちら>

武田猛氏 プロフィール

株式会社グローバルニュートリショングループ代表取締役。
18年間の実務経験と17年間のコンサルタント経験を積み、35年間一貫して健康食品業界でビジネスに携わり、国内外650以上のプロジェクトを実施。「世界全体の中で日本を位置付け、自らのビジネスを正確に位置付ける」という「グローバルセンス」に基づき、先行する欧米トレンドを取り入れたコンセプトメイキングに定評があり、数々のヒット商品の開発に関わる。


ウェルネス総研レポートonline編集部

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