【マーケティングレポート①前編】健康な人の認知機能やパフォーマンスを向上する「ヌートロピック」の可能性

ヌートロピックとは、健康な人の脳の機能や能力を高め、認知機能の向上や維持に役立つとされる物質の総称です。人生100年時代、100年使い続けることのできる脳を目指してケアしていますか?日本では認知症対策など予防的な目的が目立ちますが、外国では学習能力の向上、不安やストレスの軽減を目的とした成分なども注目され、市場を伸ばしています。ヌートロピックは今、どのような成分が注目され、正しい情報発信のために何が必要なのか、グローバルニュートリショングループ代表の武田猛氏にうかがいました。

今、ヌートロピックが注目を集めている理由を知る!

「ヌートロピック」について教えていただけますか?

ヌートロピック(Nootropic)とは一言でいうと、健康な人の脳の機能や能力を高め、認知機能の向上や維持に役立つとされる物質の総称です。米国では、スマートドラッグや向知性薬と呼ばれることもあります。これには多くの物質があり、認知症やパーキンソン病、睡眠障害といった病気の治療につかう医薬品もその中の一つといえるでしょう。
ただ、日本ではまだ馴染みのない単語かもしれませんね。一方で、米国でのヌートロピックに関する市場(ブレインヘルスサプリメント市場)は2014年以降、二桁増しとなる成長を続けています。そして、実は日本でも各企業で、これに関連した製品が増えてきているのをご存じですか?

近年、通販サイトで見かけるようになった脳を活性化するというブレインサプリはヌートロピックの一つですか?

そうですね。ブレインサプリメントやブレインフードと呼ばれるものも、ヌートロピックの一つです。ただし、その使用目的やターゲットは大きく分けて3つに分かれるでしょう。
一つ目は、脳のパフォーマンスをあげるもの。二つ目は、脳を休めるもの。そして三つ目は加齢に対するものです。一口にヌートロピックと言っても、そのベネフィットにはいくつか知られていて、欧米では大学での研究結果をもとに臨床的に証明された製品もあります。

ヌートロピックのベネフィットは、どのようなものでしょうか?

まだ解明しきれていない成分や物質も多いのですが、代表的なものには次の8つがあげられます。ただし、食品として摂取するものについては医薬品ではないため、個人が治療するために用いることはできません。あくまでも、健康な人がよりよい日常を送るため、脳をケアするものとして捉えましょう。

【ヌートロピックのベネフィット】
 ・モチベーションを引き上げる
 ・疲労感や倦怠感を和らげる
 ・注意力、集中力を上げる
 ・記憶力を上げる
 ・認知機能を健康的に維持する
 ・気分を落ち込みにくくする
 ・不安とストレスを和らげる
 ・睡眠の質を上げる

ヌートロピックの代表的な成分について、教えてください。

ヌートロピックは、その成分により2種類に大別されます。一つは、スマートドラッグとも別名で呼ばれるように、薬物または医薬品の区分に定められている成分の合成ヌートロピック。もう一つは、ハーブや植物といった自然由来で、薬物や医薬品に指定されていない成分の天然ヌートロピックです。ただし、この分け方は、薬物だからとか食品だからというくくりではありません。
このうち、一般消費者の需要が高いのは天然ヌートロピックです。代表的な成分でいうなら、カフェイン、タウリン、ビタミンB群など栄養ドリンクでもお馴染みのものでしょう。また、オメガ3脂肪酸、L-テアニン、イチョウ葉、高麗人参というような個人的な目的に合わせて摂取する成分も、天然ヌートロピックを代表する成分です。

とくに人気があるのは、どのような目的をもつ成分でしょうか?

国内外ともに、いちばん注目されているのは認知症に対する成分ですね。日本はトップクラスの長寿国で、認知症患者さんの増加が容易に想像できると思いますが、世界でも課題となっています。世界保健機関(WHO)によると、2019年時点で全世界に5,000万人いるとされる認知症患者さんの数は、2030年には1.6倍、2050年には3倍になると予測されているのです。そして認知症に関する社会的費用は、全世界における国内総生産(GDP)のうち1.1%も占めます。
つまり、一般生活者のみならず社会全体で、認知症に対して早い段階からの予防的な介入が望まれているのです。こうした背景からも、認知症対策を目的とする成分の需要はこれから益々高まっていくでしょう。

認知症に対する成分とは、具体的に何ですか?

例えば、ビタミン BおよびE、鮭や新鮮なマグロに含まれるオメガ3脂肪酸といったような多価不飽和脂肪酸がよく知られているものですが、ほかにも沢山あります。

その一つは最近、注目を集めているCBD(カンナビジオール)。これは、大麻に含まれる成分の中でも、向精神作用を持たない成分です。

もう一つは、α-GPC(グリセロホスホコリン、L-alpha-Glycerylphosphorylcholine)が欧米では人気ですね。これは人の脳や母乳に含まれる成分で、神経伝達物質であるコリンの前駆体(ぜんくたい)として働くことで、認知能力の回復に役立つとして期待されています。その原料は主に大豆レシチンで、インターネットでも身近に買うことができます。 しかし、ヌートロピック全般では、安全性についてはおおよそ確認ができているものの、有効性について十分に保証されている訳ではありません。したがって、成分に加えて商品そのものをしっかりと見極める知識を身に付けることが大切です。

多岐にわたるヌートロピックに関する成分の捉え方

認知症予防に対する成分のほかには、どのような成分がありますか?

私たちがふだん何気なく摂っている食事の中にも、ヌートロピックに関する成分が含まれているということを意識している人は多くないかもしれません。昔からよく知られている成分には、お茶に含まれるテアニンや、神経伝達物質の合成を促すビタミンB6、必須アミノ酸でバナナや鶏肉に多く含まれるトリプトファンもヌートロピックに関する成分です。
こうした成分は、脳を健康的な加齢へと導くことに加え、リラックスや安眠に働くなど多岐にわたって私たちの健康に役立ってくれます。

小さな子供でも安全に摂取できるのでしょうか?

子供に対するヌートロピックは、キッズニュートリションという分野で外国ではよく知られています。しかし、日本ではまだそこまで周知されていません。なぜなら、日本には風習として、まずはきちんとした食事を摂らせましょうという考え方が根強いからです。
対して欧米では、通常の食事で十分な栄養素を摂るのは難しいためサプリメントで補いましょうというような考え方があり、日本との風習の違いが感じられます。
ただ、日本において子供に対するヌートロピックに関する成分が無いかというと、そういう訳ではありません。例えばDHAはその一つで、多くの乳幼児用粉ミルクにはDHAが配合されています。

糖質制限やケトジェニックダイエットは、ヌートロピックの一種でしょうか?

広義でいうと、糖質制限やケトジェニックダイエットもヌートロピックの一つといえるでしょう。なぜなら、単なるウェイトマネジメントではなく、糖質を抑えることで脳内の神経細胞がそのエネルギー源を切り替えるからです。
例えば、少し前に日本でも流行ったバターコーヒー(グラスフェッドバターとMCTオイル入りのコーヒー)は、これに当てはまるでしょう。身体をケトーシス(ケトン体を利用して脂肪燃焼を促す状態)にし、ケトン体を効率的に作り出すMCTオイルを組み合わせることで、脳が栄養不足に陥ることなく活動を続けることができるという訳です。
ほかには、ココナツオイルやBHB(ケトン体の一種であるβ-ヒドロキシ酪酸)などがあります。欧米では、これらをプロテインシェイクの中に配合したりして人気を集めているようです。

<マーケティングレポート①後編はこちら>

武田猛氏 プロフィール

株式会社グローバルニュートリショングループ代表取締役。
18年間の実務経験と17年間のコンサルタント経験を積み、35年間一貫して健康食品業界でビジネスに携わり、国内外650以上のプロジェクトを実施。「世界全体の中で日本を位置付け、自らのビジネスを正確に位置付ける」という「グローバルセンス」に基づき、先行する欧米トレンドを取り入れたコンセプトメイキングに定評があり、数々のヒット商品の開発に関わる。


ウェルネス総研レポートonline編集部

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