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ヘルスリテラシーを高めるために 「ファクトフルネス」で思い込みを乗り越える

エビデンスが重視される医学、科学の世界と接する分野でありながら、ウェルネスの分野では必ずしもエビデンスに基づいた情報発信がなされるとは限りません。健康関連の情報を入手・理解・評価・活用する方法や知識=ヘルスリテラシーの向上は、ウェルネスにおいて大きな課題といえます。今回は、その基本でもある「ファクトフルネス」の重要性を説いたベストセラー『ファクトフルネス』を紹介します。

ファクトフルネスとは「データを基に世界を正しく見ること」を意味する造語です。これはウェルネスの分野において、身に付けておくべき基本的な姿勢ともいえるでしょう。そのバイブルともいえるのが世界中でベストセラーになった『ファクトフルネス』(ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド著/日経BP)です。

新型コロナウイルスがパンデミックを引き起こす前年に日本で刊行された『ファクトフルネス』は発売以来売れ続け、2021年1月には累計100万部を突破しました。コロナ禍で世界が揺れる中、情報と正しく向き合い、命や生活を守るためには、本書が提案している「事実に基づいた世界の見方」がますます必要とされるようになったことがその背景にあると言えるでしょう。

脳の機能が「勘違い」をもたらす

著者のハンス・ロスリング氏はモザンビークで地域担当の医師として働いた後、スウェーデンのカロリンスカ医科大学でグローバルヘルスの教授をつとめ、「事実に基づく世界の見方」を広めるためにギャップマインダー財団を設立し、本書の執筆に最晩年を捧げました。本書は、教育レベルが高い人ほど間違って認識している(という結果が出た)13問のクイズでまず私たちを試します。

例えば、世界の平均寿命について。2020年の日本人の平均寿命は女性が87.74歳、男性が81.64歳で、いずれも過去最高を更新しましたが、世界の平均寿命は何歳でしょう。

A 50歳  B 60歳  C 70歳

答えはCの「70歳」で、これは保険指標評価研究所と国連のデータに基づくもの。ギャップマインダー財団が行った2017年の調査によると、先進国14カ国の平均正解率は37%で、日本は28%でした。貧富、人口、出生、死亡、教育、ジェンダー、環境などに関する他のクイズに比べると、平均寿命に関するものは正解率が高い方ですが、あてずっぽうで選んだ場合の正解率が33%(本書ではチンパンジーの正解率と呼んでいる)となることを考えると、低いと言わざるを得ません。

どのクイズでも、不正解のうち、よりドラマチックなほうを選ぶ傾向が見られることから、多くの人は「世界は実際よりも怖く、暴力的で、残酷だと考えているようだ」と、ロスリング氏は指摘しています。

「世界は悪くなる一方」というドラマチックすぎる世界の見方をしてしまうのは、最新の情報にアクセスできる立場や職業の人も同じで、その原因は人間に備わった脳の機能にあるという事実の認識が、ファクトフルネスの出発点です。
人間が何百万年も生き延びるために必要だった本能が、現在ではありのままに世界を見る妨げになっているというのは皮肉なことですが、これは飢餓に備えて余った糖質を脂肪に変えて蓄えておく本能が、現代では肥満や生活習慣病を招いているという事実にも通じるものがあります。

ファクトフルネスを実践するためには、私たちはドラマチックに世界を見てしまう傾向にあることを知り、正しく物事を判断できるという思い込みを一度リセットし、自分で考える習慣をつけることが大切です。

コロナ禍でより重要になってきたファクトフルネス

『ファクトフルネス』はコロナ禍が始まる前に書かれましたが、本書にはコロナ禍を予見していたかのような記述もあります。

事実に基づいて世界を見れば、世の中は昔よりよくなっている、というのが『ファクトフルネス』の主張ですが、一方でグローバルな危機が目の前にあることは間違いないとし、起きる可能性が高い最も心配なリスクは「感染症の世界的な流行、金融危機、世界大戦、地球温暖化、極度の貧困」の5つであると述べています。

これらの問題に取り組むには、「客観的で独立したデータが欠かせない。グローバルな協調とリソースの提供も必要だ。そして、小さな歩みを重ね、計測と評価を繰り返しながら進んでいくしかない。過激な行動に出てはいけない。(中略)本物の問題に注目し、どうしたら解決できるかを考えよう」という記載については、まさに現在の我々に向けられた言葉のようにも捉えられます。

一時、トイレットペーパーが買い占められたことも、反ワクチン運動も、「ドラマチックに世界を見る本能」である「焦り本能」「過大視本能」「恐怖本能」「単純化本能」などで説明がつきます。

一方で、日本人のヘルスリテラシーは諸外国より低いという“不都合なファクト”もあります。ヨーロッパヘルスリテラシー調査質問紙(European Health Literacy Survey Questionnaire 、HLS-EU-Q47)による欧米諸国およびアジア諸国との比較において、日本のヘルスリテラシーの平均点は最も低いという結果が出ているのです。

「コロナ予防に〇〇がいい」「ワクチンの副反応で〇〇が深刻らしい」など、健康や生命を左右するような言説が飛び交う中、自分や家族を守るためには複数の情報源にあたり、データを自分で確認すること。また、真偽が不明な情報については特定非営利活動法人ファクトチェック・イニシアティブなど真偽検証を行っているサイトを確認するなど、一人ひとりがファクトに基づいて判断することが求められていると言えるでしょう。

【書籍情報】
『ファクトフルネス 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド著/日経BP/2019年1月15日発行)


ウェルネス総研レポートonline編集部

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