04認知症コラム
認知症が疑われる方を病院に連れていく
方法は?
-ポイントや準備を紹介-
2025.11.28
身近な方に認知症の疑いを感じても、どうやって病院に連れていけばいいかわからないという方は多いでしょう。この記事では、認知症の方に受診を促す方法、早期対応の重要性について解説します。また、病院に連れていく際の準備や、活用できるサービスもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
認知症の方を病院に連れていくのは難しい?
認知症の方を病院に連れていこうとしても嫌がるケースは多く、家族や介護者にとって大きな負担になることがあります。以下右記が、認知症の方が受診を拒否するおもな理由です。
- 受診を拒否する理由
-
- 病院での検査に恐怖や不安がある
- 自分が認知症だと思っていない
- 自分が認知症だと診断されるのが怖い
- 自分の尊厳を傷つけられるのが嫌
認知症の方が病院に行くのを嫌がっても、どう対応すればよいかわからず悩む家族は少なくないでしょう。無理に連れて行こうとすると、本人が強いストレスを感じてかえって症状が悪化することもあります。
こうした状況を避けるには、事前の準備や適切なアプローチが欠かせません。家族は、認知症の方の気持ちに寄り添い、安心感を与えつつ受診を促すことが大切です。
認知症の方を病院に連れていく5つの方法
認知症の方を病院に連れていくには、本人の不安や抵抗感を取り除かなければなりません。ここでは、受診を促すための5つの具体的な方法をご紹介します。
認知症の方の気持ちに寄り添う 家族の「心配している」という気持ちを伝える 健康診断をきっかけに受診を促す かかりつけ医に相談する 地域包括支援センターに相談する
認知症の方の気持ちに寄り添う
認知症の方を病院に連れていく際には、まず本人の気持ちに寄り添うことが大切です。認知症の方は環境の変化に不安を感じやすいため、病院に行くこと自体がストレスになる場合があります。決して嘘をついて無理に受診させたりしてはいけません。
本人の気持ちを理解し、安心感を与えるよう心がけましょう。病院に行く理由を丁寧に説明し、必要に応じて繰り返し伝えることで本人も納得しやすくなり、スムーズな受診につながります。
家族の「心配している」という気持ちを伝える
認知症の方に対して、「心配している」という家族の気持ちを率直に伝えることも大切です。病院に行く必要性を家族の立場から説明することで、本人の理解を促すことができます。
心を込めて接すれば、受診の意義を本人も感じ取りやすくなります。また、知人や友人、周囲の人の事例を紹介して不安を和らげるのもよいでしょう。
健康診断をきっかけに受診を促す
健康診断をきっかけに病院受診を促すのもよいでしょう。定期的な健康診断は、認知症の方にとっても重要な健康管理の一環であり、自然な流れで受診の必要性を伝えられます。「健康診断の結果を確認するために病院に行こう」と一言提案するだけでも本人の抵抗感は和らぎ、受診へのハードルが下がります。
かかりつけ医に相談する
認知症が疑われる場合、かかりつけ医への相談は欠かせません。患者の健康状態をよく理解しているかかりつけ医なら、どうやって受診を促せばよいか適切なアドバイスを提供してくれます。必要に応じてほかの専門医を紹介してもらえる場合もあり、スムーズな受診につなげることができます。
かかりつけ医に相談する際は、認知症の症状や日常生活での変化を具体的に伝えましょう。
地域包括支援センターに相談する
地域包括支援センターは、地域住民の健康や生活を幅広く支える総合窓口です。認知症に関する相談も受け付けており、医療機関や介護・福祉サービスなどと連携して適切な支援につなげてくれます。
家族だけで受診を説得するのが難しい場合でも、センターの職員が専門的な立場から助言を行い、必要に応じて医師やケアマネジャーに橋渡ししてくれます。そのため、受診までの流れをスムーズに進めやすいでしょう。
認知症の方が病院を受診しないリスク
認知症の方が病院を受診しないと症状が進行し、生活にさまざまな影響が出る可能性があります。また、本人だけでなく家族や介護者の負担も重くなるため、受診しないことによるリスク、早期対応の重要性をしっかり理解しておきましょう。
認知症の症状が進行する恐れがある
認知症は進行性の疾患であるため、早期に適切な治療を受けなければ症状が進行してしまうおそれがあります。早期の段階であれば、適切な治療やリハビリによって進行を緩やかにしたり、生活機能を維持したりすることが可能です。
しかし、受診が遅れると記憶障害や判断力の低下が進み、日常生活に支障をきたすようになります。薬物療法や非薬物療法など多様な治療法を検討するためにも早期診断は欠かせません。
家族の負担が増える
認知症が疑われるのに病院を受診しないでいると、本人だけでなく家族の負担も大きくなる可能性があります。診断や治療を受けないと物忘れや混乱などの症状が悪化し、見守りや介助の時間が増えてしまうからです。
家族の負担を軽減しつつ介護を続けられるようにするためにも、早期の受診を促し、適切なサポートを受ける必要があります。
受けられるケアの選択肢が狭まる
病院での診断が遅れると、受けられる認知症ケアの選択肢が狭まる可能性があります。
早期に診断を受ければ適切なケアプランを立てられるため、薬物療法やリハビリテーション、日常生活のサポートなど、多様な支援を受けられます。しかし、症状が進行してしまうと、在宅介護が難しくなるなど利用できるケアが限られてしまうリスクが高いです。
認知症の方を病院に連れていくための準備
認知症の方を病院に連れていく際は、事前準備をしておくとスムーズに受診できます。受診前に確認しておきたいポイントや必要な準備をみていきましょう。
認知症の方の状態を把握し整理しておく
認知症の方を病院に連れていく前に、日常生活で見られる変化や困りごとを整理しておくことが大切です。いつ頃から症状が見られたのか、きっかけはあったかなどの具体的なエピソードを整理しておくと、診断や今後の対応方針の判断に役立ちます。
状態の把握には家族や介護者同士のコミュニケーションも欠かせません。普段から日常の様子を共有するようにして、より詳細な情報を提供できるようにしておきましょう。
整理事項の例
物忘れの頻度 感情の変化 食事や睡眠の様子 徘徊や妄想
受診に必要な書類をそろえておく
病院を受診する際には、必要な書類を事前にそろえておくことが重要です。健康保険証や診察券、過去の診療記録など、必要なものをリストアップして忘れずに持参しましょう。
特に初診の場合は、これまでの病歴や現在使用している薬の情報を求められることがあるため、事前に整理しておくとスムーズに受診できます。
受診の際に必要な書類
診察券(再診の場合) 過去の診療・検査記録や紹介状 服薬中の薬の情報(薬手帳や処方箋のコピー) 身分証明書(必要に応じて) 家族が説明する場合は、家族関係がわかるものや連絡先情報
必要な書類は事前に病院に確認し、把握しておくと安心です。書類が揃っていると診療がスムーズに進み、認知症の方も落ち着いて受診できます。
医療機関までの移動手段を決めておく
認知症の方を病院に連れていく際には、移動手段をあらかじめ決めておきましょう。公共交通機関を利用する場合、混雑や乗り換えが負担になることがあります。そのため、事前にルートを確認しておくとスムーズに移動できます。タクシーや介護タクシーの利用を検討することもおすすめです。
移動中は、好きな音楽を聴かせたり、リラックスできるアイテムを持たせたりするなど、ストレスがかからないような工夫も大切です。
認知症と診断されたら-受けられるサービスの種類
認知症と診断されたら、さまざまな支援やサービスを利用できます。在宅や施設で受けられるおもなサービスの種類をみていきましょう。
在宅で受けられるサービス
在宅で受けられるサービスには、介護保険を利用した訪問介護やデイサービス、民間の介護保険外サービス、地域包括支援センターなどの行政サービスがあります。それぞれ役割や対象が異なるため、状況に応じて組み合わせて利用することが大切です。
| 介護保険 サービス |
訪問介護やデイサービスなど、介護保険の対象となるサービス |
|---|---|
| 介護保険外 サービス |
民間の家事代行や訪問看護など、介護保険の対象外だが柔軟に利用できるサービス |
| 行政 サービス |
地域包括支援センターを通じた相談や福祉サービスの案内、補助金制度など行政が提供する支援 |
入所して受けるサービス
入所型のサービスには、要介護度に応じた特別養護老人ホーム、介護スタッフが常駐する有料老人ホーム、少人数のグループホーム、生活支援付きのサ高住などがあります。こちらも、それぞれ特徴やサポート内容が異なるため、本人の状況に合った施設を選びましょう。
| 特別養護 老人ホーム |
要介護度が高い方を対象に介護と生活支援を提供する公的施設 |
|---|---|
| 介護付き 有料老人ホーム |
介護スタッフが常駐し、日常生活全般のサポートを受けられる民間施設 |
| グループホーム | 少人数で家庭的な環境を共有しながら、認知症の方の生活支援や介護を行う施設 |
| サービス付き 高齢者向け住宅(サ高住) |
バリアフリー住宅に生活支援サービスが付帯し、比較的自立した高齢者が安心して暮らせる住まい |
認知症の方を病院に連れていく方法に関するよくある質問
認知症の方を病院に連れていく際、「こういう場合はどうすればいい?」という状況に直面することもあるかもしれません。ここでは、よくある質問とその回答をまとめました。
認知症が疑われる場合に病院を受診すべきタイミングはいつですか? 認知症が疑われる場合は何科を受診すべきですか? 認知症の自覚がない方に受診を促す際の注意点はありますか?
Q認知症が疑われる場合に病院を受診すべきタイミングはいつですか?
認知症が疑われる場合、できる限り早期に受診しましょう。物忘れや判断力の低下、日常生活での変化など、普段と異なる様子に気づいた時点で医療機関を受診することをおすすめします。早期に受診することで、進行を遅らせる治療が可能です。かかりつけ医や地域包括支援センターへの相談も検討しましょう。
Q認知症が疑われる場合は何科を受診すべきですか?
認知症が疑われる場合は、まずかかりつけ医に相談しましょう。かかりつけ医がいない場合は、精神科や心療内科、脳神経外科、脳神経内科、老年科、もの忘れ外来などで診断や治療を受けられます。
専門的な診断や相談を希望する場合は、認知症疾患医療センターの利用も可能です。事前に医療機関へ連絡し、必要な書類や手続きを確認しておくスムーズに受診できます。
Q認知症の自覚がない方に受診を促す際の
注意点はありますか?
認知症の自覚がない方に受診を促す際は、本人の気持ちに寄り添い、否定せずに接することが重要です。「認知症かも」と指摘するのではなく、「最近、物忘れが増えて心配だ」と共感を示しながら話すと、受診へのハードルが下がります。また、ほかの人の体験談を共有すると、本人が受診を前向きに考えるきっかけになる場合があります。
認知症の方の気持ちに寄り添いながら受診をすすめよう
認知症の方を病院に連れていく際は、受診を無理強いするのではなく、本人の気持ちに寄り添いながらすすめることが大切です。心配しているという家族の思いを伝えたり、健康診断を活用したりすることで受診へのハードルを下げられます。
事前の準備や適切なアプローチを心がけて早期診断と適切なケアにつなげ、本人と家族双方に負担がかからないようにしましょう。
認知症の方を受診に導く際には、家族のサポートや適切な準備が大切です。日常生活の工夫や介護方法についてさらに知りたい方は、「認知機能ケアプロジェクト」がお届けする最新のガンマ波研究や認知機能向上に関する情報も参考になります。ぜひチェックしてみてください。