04認知症コラム

認知症検査の種類や内容とは?費用や何科で受けられるかを解説

2024.05.17

認知症検査の種類や内容とは?イメージ

認知症は、高齢者を中心に発症する病気の一つであり、早期の検査と診断が重要です。この記事では、認知症を疑う症状で病院を受診した際に受ける検査の種類や内容、費用、何科を受診するかなどを詳しく解説します。

認知症を疑う症状に気づいたらすぐ検査を受けよう

認知症は高齢者に発症し、徐々に進行するのが特徴です。症状の進行を遅らせ、早めに治療を開始するためには早期発見が欠かせません。自分や家族が「認知症なのでは」と感じたら、できるだけ早く検査を受けることが望ましいです。認知症によくみられる症状として記憶力の低下が出現します。

また、認知症の一歩手前の段階を「軽度認知障害(MCI) 」と呼びます。この段階で早期に対応できれば認知症の発症を遅らせられる場合もあります。認知症でなかったとしても、似た症状がみられる別の病気の可能性もあるので、早めの受診が必要です。

認知症の症状チェックリストはこちら

認知症を疑う症状に気づいたらすぐ検査を受けようイメージ

早期発見できれば進行の抑制が期待できる

認知症は初期の段階であれば、生活習慣の改善や積極的な社会参加によって、改善または進行の抑制が期待できます。また、認知症の原因によっては、治療すれば改善が見込める場合もあるでしょう。

例えば、「慢性硬膜下血腫」という病気によって、脳の表面に血液が溜まることで発症する認知症では、麻酔下で脳に穴をあけて血液を排出することで治療できます。また、脳の中に脳脊髄液が溜まることで認知症が発症する「正常圧水頭症」という病気では、脳脊髄液を排出するチューブを留置することで発症前の状態までの回復が見込めます。

このように治療で改善が見込める場合もあるので、認知症の原因となる脳疾患を根本的に治療することが大切なのです。

認知症の検査を受けたいときは何科を受診する?

認知症の検査を受けたいときは、まずはかかりつけの医療機関に相談しましょう。その上で専門医の受診が必要な場合は、かかりつけ医からの紹介状があると病歴や内服薬などを伝えてもらえてスムーズに受診できます。

かかりつけ医がいない場合は、脳神経内科や脳神経外科、精神科、心療内科、老年病科などを受診して相談するようにしてください。しかし、お住まいの地域によっては対応可能な医療機関がない場合もあります。その場合は、住んでいる地域の地域包括支援センターに相談すると対策を教えてもらえることがあります。

認知症の検査の流れ

認知症の疑いがあり病院を受診した際は、問診、身体診察、認知症検査の順で進んでいきます。病院を受診してから認知症検査を受けるまでの流れを確認しましょう。

1問診 2身体検査 3認知症検査

認知症の検査の流れイメージ

1問診

病院を受診したらまず問診票に症状や持病、既往歴などを記入します。その後に医師からの問診と診察が行われます。問診の際は、一般的に病歴や現在の状態などのような内容について聞かれるでしょう。

  • いつごろから、どのような症状があるか
  • 日常生活にどのような支障をきたしているか
  • 病歴や内服薬

認知症で記憶力が低下していると本人が正確に伝えることが難しい場合もあるので、家族や付き添いの方が答えられるように準備をしておくのがおすすめです。

2身体検査

身体検査では、聴診や触診、神経学的な異常がないか神経診察が行われます。また、甲状腺機能低下症が認知症の原因となることもあり、甲状腺の触診も重要な診察です。

そのほかに、血液検査やレントゲン検査、心電図検査などを行う場合もあります。生活習慣病の有無などの健康状態や、認知症とは別の病気の可能性がないかを調べるために必要な検査です。

3身認知症検査

認知症検査は大きく分けると「神経心理学的検査」と「脳画像検査」の2種類に分類されます。「神経心理学的検査」と「脳画像検査」はそれぞれいくつかの種類があります。認知症検査の種類については次章で詳しく説明します。

認知症検査の種類

認知症検査は神経心理学的検査と脳画像検査に分けられます。それぞれの検査について詳しくみていきましょう。

神経心理学的検査

神経心理学的検査は、主に口頭での質問に答えたり、紙や各種道具、コンピュータなどを用いて図形や絵を描いたりする形式の検査です。認知症での知能・記憶・言語などの機能障害を数値化して客観的に評価するための検査で、医師や心理職が患者と1対1で実施します。


改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

記憶を含めた認知機能について調べる検査で、9つの質問から構成されています。それぞれの質問には1~6点が付けられており、計30点満点です。点数が20点以下の場合に「認知症の疑いがある」とされます。


ミニメンタルステート検査(MMSE)

時間、場所の見当識、3単語の即時再生と遅延再生、計算、物品呼称、文章復唱、3段階の口頭命令、書字命令、文章書字、図形模写の計11項目から構成される30点満点の認知機能検査です。MMSEでは23点以下が認知症疑いと判定されます。


時計描画テスト(CDT)

時計の絵と、指定された時刻に針を配置する描画検査です。評価は時計の絵の構成や、その時計に併せて描く指定された時刻の適正度から行います。「時計の絵を描く」という年齢や教育歴の影響を受けにくい検査なので、検査に対する抵抗が比較的少ないことが特徴です。


ABC認知症スケール(ABC-DS)

日本の研究者が開発したアルツハイマー型認知症の進行度合いについて調べる検査です。 本人ではなく家族や介護者から日常生活の動作・行動・心理症状について質問を行い、9段階で評価を行います。

日常生活動作、精神症状、記憶障害、見守り時間などから家族や介護者が評価します。満点は117点で、117点〜101点が健常または認知症疑い(MCI)、100点〜86点が軽度、85点〜71点が中等度、70点以下が重度の認知症です。


Mini-Cog

Mini-Cogは3つの単語を思い出したり、時計を描いたりする能力を評価する簡単な認知機能検査方法です。Mini-Cogでは2点以下が認知症疑いとされており、比較的精度が高くMMSEと同様の妥当性を有するとされています。


MoCA(Montreal Cognitive Assessment)

MoCAまたはMoCA-J(Japanese version of MoCA)は視空間・遂行機能、命名、記憶、注意力、復唱、語想起、抽象概念、遅延再生、見当識からなり、軽度認知障害をスクリーニングする検査です。MoCAは25点以下が軽度認知障害と診断されます。


DASC-21

DASC-21は認知機能障害と生活機能障害に関連する行動の変化を評価する尺度で、介護職員やコメディカルでも施行できる21の質問からなります。また、DASC-21は臨床的認知症尺度(Clinical Dementia Rating, CDR)と相関があり、その妥当性が報告されています。

脳画像検査

脳画像検査では脳の形態や機能を画像化します。形態画像診断(CT、MRIなど)と、脳の機能を調べる機能画像診断(脳血流SPECTなど)の大きく分けて2種類あり、それぞれわかることが異なります。


CT

X線を使用して頭部を輪切りにしたような断層画像を映し出す検査です。脳の形態的な異常や血腫、腫瘍、脳梗塞の有無などを検出できます。認知症の原因を特定するのに利用されます。


MRI

強い磁力と電磁波を使って脳の断層画像を撮影する検査です。頭部MRIは脳の萎縮の状態や脳血管障害の有無を調べられます。頭部MRA検査では脳の血管を撮影し、主に脳血管疾患の発見に役立ちます。小さい脳梗塞が多くなると脳血管性認知症が現れる場合があります。


SPECT

SPECTは脳血流量を調べる検査です。微量の放射性物質を含む薬を注射し、数時間後の薬剤の分布状態から脳の働きを調べる検査です。人体臓器の生理学的な機能情報を画像化できます。


PET

PETはSPECTでわかる脳血流量のほか、酸素消費量やブドウ糖消費量も調べることができる検査です。放射性物質であるトレーサーを体内に投与し、そのトレーサーが集まる場所を検出することで、異常な組織や代謝の変化を可視化します。

認知症の検査にかかる費用

認知症の検査にかかる費用は、一般的に数百円から30,000円程度とさまざまです。これらの検査は基本的には健康保険が適用され、自己負担割合によって費用が異なります。神経心理学的検査は比較的安価で、3割負担の場合、数百円から1,000円程度で受けられます。

一方で、CTやMRIの費用は、3割負担の場合、4,000円から9,000円程度です。脳画像検査の中でSPECTは最も費用が高くなることが多く、30,000円程度かかります。

認知症の検査にかかる費用イメージ

知症の診察・検査を受ける際にすべきこと

認認知症の診察・検査を受ける際は問診で聞かれることを事前に確認しておくと診察がスムーズです。以下で、受診の前にすべきことを説明しますので確認してください。

普段の様子を記録しておく 心の準備をしておく 診断結果を聞くときは家族も同行する 必要に応じて
セカンド
オピニオンを検討する

普段の様子を記録しておく

前述したように、問診の際に症状について詳しく質問されることがほとんどです。本人が十分に記憶できていないケースも多いので、家族や付き添いの方は、普段の様子や気になる点などを記録しておくようにしましょう。また、正確に伝えるためにも記録した情報を整理しておくことが大切です。

心の準備をしておく

事前に認知症について正しく理解し、認知症と診断されたときに備えて心の準備をしておくとよいでしょう。最近では認知症に関する基礎知識や、認知症の人との接し方などさまざまなテーマの本が販売されています。これらの情報をもとに知識をつけておくことで、全く知識がない状態で受診するよりも認知症に対する不安感がやわらぎます。

診断結果を聞くときは家族も同行する

認知症と診断された場合、本人はショックを受けるのが一般的です。診断結果を聞いて頭が真っ白になってしまい、医師の説明が頭に入らないということもあります。本人が落ち着いて説明を聞くことが難しい場合を想定して、しっかり説明を聞けるよう家族が同行しましょう。

必要に応じてセカンドオピニオンを検討する

診断結果の説明や対応の仕方は、医師や医療機関によってさまざまです。中には診断や診察に納得できない、不安を感じるといった場合もあるでしょう。そのような場合はセカンドオピニオンを検討することも選択肢の一つです。基本的に、認知症への対応は医師との信頼関係が必要不可欠です。

医師の方針に疑問や不安があると信頼関係を築くことは難しいでしょう。納得できるように、ぜひ積極的にセカンドオピニオンを利用してください。

認知症かも?と悩んだら、
早めに医療機関を受診しましょう

高齢化に伴い、認知症は増加傾向にあります。手術を受けることで改善する認知症もあり、早期の検査と診断が重要です。病院を受診する際は、事前に症状について記録し、どのような検査を受ける可能性があるか知っておくと、受診の際にスムーズです。認知症と診断された場合でも、早めに治療を開始して、進行が緩やかになるように治療を続けましょう。

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