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04認知症コラム

認知症が疑われたら何科を受診すべき?
病院を選ぶポイントや診察の流れ、治療法まで解説

2024.12.26

認知症が疑われたら何科を受診すべき?病院を選ぶポイントや診察の流れ、治療法まで解説イメージ

認知症が疑われる場合、何科を受診すればよいのかわからないという方は多いのではないでしょうか。認知症の受診先は、主に精神科や脳神経内科、もの忘れ外来などさまざまで、症状に応じた診療科を選ぶ必要があります。この記事では、認知症の受診先や病院選びのポイント、検査費用、診断後の対応について解説します。

認知症とはどんな病気か?

認知症は、脳機能の低下により日常生活に支障をきたす病気です。記憶力の低下、判断力の衰え、性格の変化などが主な症状として現れます。

認知症には、アルツハイマー型認知症や血管性認知症など複数の種類があり、脳の神経細胞の損傷や死滅、血管障害など発症原因はさまざまです。一般的に高齢者に多くみられますが、若年層でも発症する可能性があるため注意が必要です。認知症は進行性の病気であり、早期発見と適切な対応が重要となります。

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認知症とはどんな病気か?イメージ

認知症は治療できるのか?

現時点で認知症を完治させる治療法は見つかっていませんが、症状の進行を遅らせることは可能です。薬物療法により認知機能の低下を抑制したり、リハビリテーションや心理療法などの非薬物療法で生活の質を向上させたりすることが期待できます。

いずれの場合も、早期発見と早期対応が症状の進行を遅らせる鍵となるでしょう。認知症を発症したあとも穏やかな生活を長く送るためには、適切な治療と周囲のサポートが重要です。

認知症の治療について詳しくはこちら

認知症が疑われるときに受診すべき診療科

認知症が疑われる場合、適切な診療科を選ぶことが重要です。症状の早期発見と適切な治療のために、専門的な診断が必要となるでしょう。まずはかかりつけ医に相談することをおすすめしますが、いない場合は以下の診療科に相談してください。

診療科 特徴
精神科 認知症の心理症状や行動障害に対応できる専門性を持つ。患者に寄り添った診療が特徴で、認知症専門医が在籍していることも多い。
心療内科 ストレス関連の疾患を中心に扱うが、近年では認知症診療を行う医師も増えている。さまざまな専門背景を持つ医師が在籍しているため、認知症への知見を確認することが重要。
脳神経内科・脳神経外科 脳や神経系の疾患を専門とし、認知機能低下の原因を詳細に調べられる。脳の異常に起因する認知症の症状に対応する専門性を持つ。
老年科 高齢者特有の疾患や症状に幅広く対応し、認知症を含むさまざまな老年期の問題を総合的に診療。認知症の判断が難しい場合の初期相談に適している。
もの忘れ外来 記憶障害に特化した専門外来で、認知症の早期発見と診断に重点を置いている。認知症以外の原因によるもの忘れの可能性も考慮した診療を行う。

精神科

精神科は認知症を含む心理的症状に対応可能な診療科です。とくに認知症の混乱につながる心理症状(BPSD)への対応に優れています。多くの精神科で認知症を専門に扱っており、症状や原因が不明確な場合でも適切な診断が期待できるため、何科を受診すべきか迷っている方におすすめです。

心療内科

心療内科では近年、認知症の診断を受けられる医療機関が増えています。おもに心身的ストレスによる疾患を診察する診療科ですが、精神科医や精神保健指定医など専門知識を有する医師が多いため、認知症の診断や治療にも対応できます。心身両面からのアプローチが可能な点も特徴です。

脳神経内科・脳神経外科

脳神経内科・脳神経外科は、脳や神経、脊髄、筋肉に関連した疾患の診察を行います。認知症は脳の機能低下がみられる疾患のため、適切な対応が可能です。また、脳出血・脳梗塞やパーキンソン病などの脳疾患の診察に対応しており、認知症の原因究明に役立ちます。

老年科

老年科は、高齢者に関連した総合的な医療を受けられる診療科です。高齢者によくみられる心身の不調や記憶力・判断力の低下にも対応してくれます。認知症だけでなく、加齢にともなうさまざまな症状を総合的に診断・治療できるため、認知症かどうかの判断がつかない場合は老年科の受診がおすすめです。

もの忘れ外来

もの忘れ外来は、もの忘れや認知機能の低下が加齢によるものなのか、病気によるものなのかを判断し、必要に応じて治療を行う専門外来です。認知症の専門知識を持つ医師が診断を行い、多くの場合、心理学検査や脳画像検査に対応しています。

病院を選ぶ際のポイント

認知症の診断や治療を受ける際、適切な病院選びは非常に重要です。専門性の高い医療機関を選ぶことで、より正確な診断と効果的な治療を受けられるでしょう。

認知症専門医のいる機関を選ぶ

認知症専門医は、日本認知症学会が認定する認知症診療における十分な経験と知識を有した医師です。専門的な治療を受けたい方は、認知症専門医がいる医療機関を選ぶことをおすすめします。

認知症専門医や認知症専門医のいる医療機関は、日本認知症学会および日本老年精神医学会のホームページから検索可能です。

日本認知症学会HP
日本老年精神医学会HP

認知症疾患医療センターに該当するところを選ぶ

認知症疾患医療センターでは、総合的な認知症ケアが受けられるため、認知症の診断や治療を検討している医療機関が該当するか一度確認しておくとよいでしょう。

認知症疾患医療センターとは、専門医による認知症の診断や医療相談を受け付けている医療機関です。都道府県知事または政令指定都市の市長が指定する病院に設置されており、地域のかかりつけ医や介護・福祉施設、地域包括支援センターと連携しています。

認知症の診断の流れ

専門医による面談から始まり、一般的な身体検査、認知症に特化した検査へと進むというのが認知症の診断の流れです。この過程を通じて、医師は患者の状態を総合的に評価し、適切な診断を下します。

1.面談・診察 2.一般的身体検査 3.認知症検査

認知症の診断の流れイメージ

1.面談・診察:症状や経過を確認する

診断の最初のステップは専門医との面談です。面談には認知症の方とその家族が参加し、症状の詳細や生活習慣、過去の病歴について話し合います。この際に、医師は認知症の方の表情や言動からも多くの情報を得ます。

面談は、認知症の可能性や他の疾患の有無を初期評価し、今後の検査方針を決定する重要な段階です。

正しく診断を受けるためにも、認知症の方の普段の様子を観察しておこう

2.一般的身体検査:医療方針や介護方針を決める

一般的身体検査では、認知症の原因を確認するために、血液検査、尿検査、心電図検査などの一般的な検査に加え、甲状腺機能やビタミン欠乏症、感染症などの検査も行われます。

これらの検査を行うことによって、認知症の症状を引き起こす可能性のある他の病気の有無や身体の状態を確認し、適切な医療方針や介護方針が決められます。

3.認知症検査:認知症の種類・進行度を特定する

認知症の検査は、主に神経心理学的検査と脳画像検査の2つに分けられます。神経心理学的検査は、記憶力や注意力、言語能力などを評価する検査です。脳画像検査では、MRIやCTスキャンを用いて、脳の萎縮や血流障害など認知症の特徴的な変化を確認します。

各検査の結果から認知症の種類や進行度を特定し、最終的な診断が下されます。

認知症の検査について詳しくはこちら

認知症の検査費用はどれくらい?

認知症の診断には、初診料、診察料、検査料など複数の費用がかかります。これに加え神経心理学的検査や画像検査の費用負担が必要です。また、保険適用外の検査や特別診療を受ける場合はさらに費用が高額になる可能性もあります。

具体的な費用は医療機関や受ける検査の種類によって異なりますが、一般的に1万円から2万円程度となるケースが多いです。事前におおよその費用を医療機関に確認しておくことをおすすめします。

保険適用の場合総額1万円から2万円程度が必要となることが多い

認知症の検査費用について詳しくはこちら

認知症の方が受診を拒否する場合の対処法

認知症の疑いがある方に家族が受診を促す際、本人が拒否することも少なくありません。ここでは、本人が受診を嫌がる場合の効果的な対処法をいくつかご紹介します。

かかりつけ医に相談する 無理な説得をしない 本人のプライドを傷つける
表現を使わない
伝える人を変えてみる

認知症の方が受診を拒否する場合の対処法イメージ

かかりつけ医に相談する

かかりつけ医は認知症の方の健康状態や性格をよく理解しているため、適切なアプローチ方法を提案してくれます。長年の信頼関係から、認知症の方が受け入れやすい形で受診を勧めてもらえるかもしれません。まずはかかりつけ医に相談してみましょう。

ポイント
かかりつけ医が本人に直接話をすることで受診の重要性を伝えられる

無理な説得をしない

無理な説得は認知症の方の反発を招き、信頼関係が悪化してしまう可能性があります。決して無理強いはせず、認知症の方の感情やストレスを考慮することが重要です。認知症の方の不安や心配事に耳を傾け、共感的な態度でコミュニケーションし、少しずつ受診の必要性を理解してもらいましょう。

ポイント
ゆっくりと時間をかけて理解を深めてもらうアプローチが効果的である

本人のプライドを傷つける表現を使わない

認知症の疑いを指摘する際は、認知症の方の自尊心を傷つけないことが大切です。「ボケた」「忘れっぽくなった」などの表現は避け、代わりに「健康診断」や「脳ドック」といった中立的な言葉を使うことで、本人の抵抗感を減らすように心がけましょう。

ポイント
「今の体調を一度しっかり見てもらうと安心だよ」「定期的な検診が大事だって、みんなも受けているみたいだよ」と直接的に表現するのを避けて受診をすすめる

伝える人を変えてみる

家族からの説得が難しい場合は、信頼できる友人や親戚、他の医療専門家に協力を依頼してみましょう。第三者によって異なる視点からアプローチしたほうが、本人の心を動かせる場合もあります。

ポイント
普段から信頼関係のある第三者からの話は受け入れてもらいやすい

認知症患者に接するポイントについて詳しくはこちら

認知症と診断されたらすべき4つのこと

認知症と診断されたら、本人と家族の生活の質を維持し、将来に備えるための準備が必要となります。また、本人に認知症であることを告げるときの伝え方やタイミングについては、医師などの専門家と十分に話し合うことが必要です。

認知症への理解を深める

まずは、家族が認知症の概要や予想される症状、ケアの方法、接し方などを理解しておくことが重要です。インターネットや書籍で情報を得るのはもちろん、担当医に直接聞いてみるのもよいでしょう。

認知症への理解を深めることで、心に余裕が生まれ、適切な対応ができるようになります。また、将来起こりうる変化に対しても心の準備ができ、不安の軽減にもつながるでしょう。

認知症に関するコラム一覧はこちら

生活習慣を見直す

認知症の進行を可能な限り緩やかにするためには、日々の生活習慣を見直すことが大切です。食事や運動、人との関わりなど健康的な生活習慣を心がけるようにすれば、認知症の進行に悪影響を及ぼす可能性がある生活習慣病も予防できます。

また、適度な運動や社会活動への参加は脳の活性化にも役立つため、家族で一緒に生活習慣の改善に取り組み、本人をサポートしていきましょう。

サポート体制を整える

認知症の診断を受けたら、地域の支援や介護保険を使って受けられる介護サービスを活用し、適切なサポートを受けることが重要です。地域包括支援センターでは、介護やケア以外にも幅広くアドバイスを受けられるため、積極的に活用しましょう。

また、家族や友人、近隣住民など周囲とのコミュニケーションを大切にし、日常的な見守りや支援の体制を整えることも重要です。

財産管理や相続について相談する

認知症の方の判断能力が低下すると、本人の意思で財産を管理することが難しくなるおそれがあります。判断能力がないとみなされると、銀行口座が凍結される、不動産売却が難しくなるなどのトラブルも起こりえるため、早い段階で財産管理について整理しておくことが必要です。

本人の判断能力が失われる前に、弁護士や司法書士など専門家に相談し、成年後見制度の利用や財産管理の方法などを決めておくようにしましょう。

確認すべきものの例

銀行口座 不動産・株式

相続で利用できる制度の例

家族信託 成年後見制度 生前贈与

早期受診と適切な医療機関選択が認知症ケアの第一歩

認知症が疑われる場合、精神科や脳神経内科、もの忘れ外来など症状に応じた適切な診療科を選ぶことが重要です。認知症の診断には複数の検査が必要で、費用は保険適用の有無により変動します。医療機関を選ぶ際は、これらの認知症の検査費用に加え、信頼できる専門医の有無や設備の充実度、アクセスもしっかり確認しておきましょう。

認知症は発症後の治療が困難なため、日常的な予防とケアが重要です。しかし、認知機能を維持するための方法も徐々に明らかになってきており、運動や栄養管理、認知トレーニングなど最新の研究成果に基づいたアプローチが注目されています。

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