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04認知症コラム

認知症が一気に進む原因を解説│進行を遅らせるためには?

2024.05.09

認知症が一気に進む原因を解説イメージ

認知症は、加齢とともに発症することが多い病気です。発症後に一気に進行する場合があるため、不安に思っている方も多いのではないでしょうか。進行を遅らせるためには運動習慣や規則的な生活習慣を心がけることが重要です。この記事では、認知症が一気に進む原因や、進行を遅らせる方法について具体的に解説します。

認知症になる仕組み *認知症とは…記憶障害など脳の認知機能障害により、日常生活に支障をきたすようになる疾患

認知症とは、記憶障害や判断力の低下を引き起こす脳の認知機能障害を指し、それらの障害が日常生活に支障をきたすようになると「認知症」と呼ばれます。原因はまだ完全には明らかになっていません。高齢者が発症しやすく、アルコールの多飲によって認知症になりやすいとされますが、原因はさまざまです。

認知症の中でもアルツハイマー型認知症が最も多く、代表的な疾患といえます。

なぜ認知症になるのか

前述のとおり、認知症の原因は完全には明らかになっていませんが、脳細胞が破壊されることで脳の働きが低下し、引き起こされると考えられています。また、脳内に生じた神経細胞の障害や、脳の萎縮などによって引き起こされる場合もあり、脳梗塞などの大きな病気がきっかけとなり発症する場合もあるのです。

しかし、認知症になりやすいリスク因子は多様で、中には生活習慣病と重なるものも多くみられます。不摂生な生活習慣は、認知症の発症の原因になるとともに進行を早める原因にもなるため、日頃から生活習慣に気をつけることが認知症の予防法です。認知症を発症した場合も進行を遅らせることにつながるでしょう。

認知症について詳しくはこちら

認知症が一気に進む原因

認知症が一気に進む原因はいくつかあります。認知症は早期発見が重要なことに変わりはありませんが、一気に進む原因を理解して進行を遅らせる対策につなげましょう。

脳への刺激の減少 ストレス 失敗を責められる 生活習慣の乱れ 急な環境変化

認知症が一気に進む原因イメージ

脳への刺激の減少

自身で考える機会の減少など、脳の働きの低下につながることは、認知症を進行させやすいとされます。高齢の方の場合、家族や介護者は心配から身の回りのことをついやってあげたくなってしまいますが、できる限り脳の機能を活性化させるような刺激を与えることが重要です。

そのため、身の回りのことはできる限り本人に任せる、積極的に外出させるなど、刺激を与えて寝たきりの生活を避けましょう。

過剰な「やってあげる」に注意
  • 料理や掃除など家事を全部やりすぎていないか ⇒近くでサポートしながらもできることはさせる
  • おむつをつけさせる ⇒失敗を前提にしてでもできる限り自分でトイレに行く習慣を保つ
  • 家計管理も家族が行う ⇒何か家の仕事の中で仕事を頼むと脳の動きによい

ストレス

認知症の初期段階では、本人が自身の変化に違和感を持って対処しようとしている場合が多いです。しかし、その自身の変化や改善できないという失敗経験などにより、不安になったり自信を喪失してしまったりすることが心理的ストレスにつながります。

ストレスがかかると身体で産生されるストレスホルモンは、脳の血流を悪化させ、神経細胞に悪影響を及ぼす可能性があります。さらにうつ病や高血圧など、認知症に関連の大きい疾患にかかるリスクも大きくなるので、できるだけストレスがかからない生活をすることが大切です。

失敗を責められる

認知症の症状により、生活の中で失敗する機会が増えてしまいます。しかし、失敗を責められると、ショックを受けストレスが増えるほか、自分で何か行動を起こすことを避けてしまうようになることもあるでしょう。

また、失敗を恐れて本人の自由に任せるべき行動を制限してしまうと、「自分には何もできない」といった喪失感からうつ状態になり、認知症が悪化しやすくなるという場合もあります。

生活習慣の乱れ

食事と睡眠の乱れは認知症の進行を早める原因の一つです。また、入院してただぼーっとする時間が長かったことがきっかけとなり、退院後に以前できていたことができなくなってしまうケースもあります。

さらに、肥満や過度のアルコール摂取、喫煙なども、身体の健康に影響するだけでなく認知症の進行にも関わりが大きいため注意しましょう。

急な環境変化

社会的孤立や配偶者が亡くなるなどの変化は、生活環境の変化や心理的な喪失からうつ病とともに認知症の発症リスクや、進行の加速に関連しています。また、もともと認知機能が低下している方がいる中で気分を変えようと模様替えをすると、環境の変化に混乱してしまい悪影響になることもあります

身の回りのことができなくなってくると、施設への入居を考えることもあるでしょう。しかし、施設への入居は安心できるサポートを得られる一方で、環境が変化することによって認知症の進行リスクを高める場合もあるので慎重に検討しましょう。

認知症の種類

認知症は最も有名なアルツハイマー型のほかにもいくつか種類があります。それぞれの種類の特徴を解説します。

認知症の種類イメージ

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症とは、脳の中で「アミロイドβ」という異常なタンパク質が蓄積し、主に記憶を司る海馬が萎縮することが原因で発症する認知症です。初期症状はもの忘れにはじまり、見当識障害や判断力の低下などを引き起こします。女性に発症することが多く、年代問わず認知症の中で最高の発症率です。
進行速度の特徴
アルツハイマー型認知症は、長い年月をかけてゆっくり進行する

血管性認知症

血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血をきっかけとした脳血管障害を原因とする認知症です。初期症状はもの忘れ、のちに手足のしびれや麻痺、嚥下障害、感情のコントロールができなくなるなど多彩な症状があります。男性の発症率が高く、日や時間帯によって症状に変動が出る傾向にあります。
進行速度の特徴
血管性認知症は、
急に発症し段階的に進行する

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症とは、脳に特殊なタンパク質「αシヌクレイン」が蓄積することが原因で発生する認知症です。主な症状に、幻覚や妄想が挙げられます。症状の特徴から抑うつやパーキンソン症状につながりやすいのですが、症状の現れ方には個人差があります。
進行速度の特徴
レビー小体型認知症は、
調子のよいとき・悪いときを繰り返して進行する

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症とは、脳の前頭葉・側頭葉の萎縮を特徴とする認知症です。症状は無感情や言語障害、意欲低下、同じ行動を継続したり異常な行動を起こしたりします。50歳代で発症することが多く、ほとんどは70歳までに発症し、緩やかに進行することが特徴です。
進行速度の特徴
前頭側頭型認知症は、緩やかに進行する

認知症の進行を遅らせるための対策

認知症の進行を遅らせるためには生活習慣の改善が有効です。運動や規則正しい生活といった具体的な方法について解説します。

有酸素運動を取り入れる

定期的な有酸素運動は、認知症の進行を遅らせる効果が期待できます。激しい運動よりも、散歩やジョギングなどの軽い有酸素運動が効果的です。思いつきで時々やるのではなく、手軽な運動を毎日行いましょう。最も効果的なのは中年の方で、認知症の進行を遅らせる以外にも認知症予防につながります。さらに生活習慣病の予防にも効果的です。

規則正しい生活を心がける

規則正しい生活によって心身のリズムを整えることが認知症対策において重要です。認知症が進行してしまうと、睡眠時間が乱れやすくなります。しかし、毎日決まった時間に起床や就寝、食事をすることで本人も安心するほか、介護をする家族の負担も大きくなりにくいです。また、食事の内容も、例えばアルツハイマーならアミロイドβの蓄積を防ぐ食材(青魚、緑茶など)を積極的に取り入れるなど工夫するとよいでしょう。

認知機能向上のためのトレーニングを行う

認知症はそのまま放置している限り進行してしまうため、非薬物療法の一環として、習字や塗り絵、音楽鑑賞など、直接脳の活性化につながる活動を積極的に取り入れることも有効です。また、料理は認知機能のトレーニングになります。家族がサポートしながら日常的に料理をするのも効果的です。

聴力の低下に注意する

聴力の低下や難聴は認知症の進行に関連するため、注意が必要です。聴力の低下は外部からの情報を耳から入れられず、脳に伝達できないことで脳機能の衰えにつながってしまいます。会話の中で聞き返してくる回数が増えてきたら、病院や専門機関の受診を促しましょう。

聴力に合わせた補聴器を活用し、耳からの情報が遮断され、聞こえないことによるストレスを受けないよう気にかけてあげましょう。

認知症は進行予防が重要。
ご自身でできることを行い、
迷う場合は医療機関を受診しましょう

認知症はアルツハイマー型認知症のほかに、さまざまな種類があります。認知症の種類に応じて、症状や進行速度が異なるため、まずは正確に診断を受けることが重要です。

認知症の症状が出現したときは、進行を予防するために脳への刺激を増やしたり、生活習慣の改善や運動を行ったりすることが効果的といえます。また、これらは有効な方法ですが、専門家から適切なアドバイスと治療を受けられるように医療機関を受診することも大切です。認知症の症状でお悩みの場合は、早めに専門の医療機関へ相談しましょう。

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