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04認知症コラム

APOE(アポイー)遺伝子検査とは
-アルツハイマー型認知症のリスクを知るために

2025.10.31

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APOE(アポイー)遺伝子検査とは、APOE遺伝子のタイプを調べる検査です。APOE遺伝子のタイプがアルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドβの蓄積に大きく関わっていることから、注目されるようになりました。この記事では、検査費用や受検できる場所、保険適用可否などについて解説します。

APOE(アポイー)遺伝子検査とは?

アルツハイマー型認知症を発症するかの
リスクを調べる遺伝子検査

APOE(アポイー)遺伝子検査とは、アルツハイマー型認知症の発症リスクを調べるための検査です。日本の認知症患者全体の60%~80%を占めるアルツハイマー型認知症は、アミロイドβペプチドという老廃物が脳内に蓄積し、神経細胞を破壊することで発症します。

アミロイドβペプチドの蓄積に関わっているのが、APOE遺伝子のタイプです。APOE遺伝子のタイプには、6つのパターンがあり、それによってアルツハイマー型認知症を発症するリスクが変わります。したがって、自分のパターンが判明すれば、自分のアルツハイマー型認知症を発症するリスクがわかります。

アルツハイマー型認知症について詳しくはこちら

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APOE遺伝子とは?

アルツハイマー型認知症の発症に影響を及ぼす遺伝子

APOE遺伝子とは脳の神経修復や脂質代謝などに関与する遺伝子で、すべての方が持っています。アルツハイマー型認知症の発症と密接に関係があるアミロイドβの蓄積に関与するため、APOE遺伝子を調べることでアルツハイマー型認知症の発症リスクの高さを予測できるといわれています。

APOE遺伝子とアルツハイマー型認知症の関係

APOE遺伝子にはAPOE2(ε(イプシロン))、APOE3(ε3)、APOE4(ε4)の3つの種類があり、血液型と同じく両親から1つずつ受け継いで、6つのパターンを構成します。

このうち、ε2はアミロイドβの凝集を抑える効果があり、反対にε4はアミロイドβの凝集を促進する効果があるとされています。したがって、ε2を含むパターンはアルツハイマー型認知症の発症リスクが低く、ε4を含むパターンは発症リスクが高いと判断されます。

ε3/ε3のパターンの方のアルツハイマー型認知症の発症リスクを1とすると、ε4/ε4は約12倍です。なお、ε2/ε2は全体の約1%しかいないため、発症リスクは判明していません。

遺伝子のパターン 発症リスク
ε2/ε3 0.6倍
ε3/ε3 1.0倍
ε2/ε4またはε3/ε4 3.2倍
ε4/ε4 11.6倍

APOE遺伝子型ε4をもっていると必ずしも
アルツハイマー型認知症になるわけではない

APOE遺伝子のパターンを調べることで、アルツハイマー型認知症を発症リスクを調べられます。しかし、認知症の発症は遺伝子的要因だけが関わっているのではありません。たとえば、普段の食習慣や運動習慣なども影響を及ぼします。

そのため、ε4を持っているからといって、必ずしもアルツハイマー型認知症を発症するわけではありません。発症しやすさを理解したうえで、普段の生活に注意することが必要です。

APOE遺伝子検査の流れ

  • STEP1同意書の記入を行う
  • STEP2採血をする
  • STEP3専門機関が発症リスクを分析する
  • STEP4結果報告書を受け取る

APOE遺伝子検査は、まずは検査を実施している機関を探して予約します。なお、遺伝子検査のため、検査を実施する際には同意書が必要です。

APOE遺伝子検査は採血により実施され、採取された血液は専門の測定機関に送られて、発症リスクを判定したうえで結果報告書としてまとめられます。通常は2~3週間で結果報告書を受け取ることが可能です

APOE遺伝子検査の内容

アルツハイマー型認知症のリスクが気になる方は、APOE遺伝子検査を検討できます。受検場所や方法、検査費用などについて見ていきましょう。

受検場所 医療機関または自宅
方法 採血または口腔内粘膜の採取
費用 15,000円~25,000円
検査の頻度 一度のみ

受検場所

APOE遺伝子検査は病院やクリニックなどの医療機関で受けられます。ただし、実施している医療機関は限られているため、あらかじめ調べておきましょう。

また、自分で検査できるキットもあります。DNAサンプルを採取して送付すると後日結果を受け取れます。

方法

医療機関では、APOE遺伝子検査は採血により実施します。
キットを使って自宅で実施するときは、専用の綿棒で口腔内の粘膜を採取します。

費用

APOE遺伝子検査は保険適用外のため、全額自己負担です。また、医療機関によって費用が異なります。なお、15,000円~25,000円ほどが目安です。人間ドックの検査項目として追加できることもあります。

キットの費用は、実費や検査費、報告書の作成費などをすべて含んで、15,000円~20,000円ほどが目安です。

検査の頻度

検査は一生に1回のみで十分といわれています。遺伝子はすべての人に固有であり、どのタイミングで遺伝子検査を実施しても結果は変化しないためです

APOE遺伝子検査を受ける3つのメリット

APOE遺伝子検査は、任意で実施する遺伝子検査です。そのため、必ずしも受ける必要はありません。受検するか迷ったときは、APOE遺伝子検査のメリットを確認してみましょう。

認知症のリスクが可視化できる

認知症の発症リスクは遺伝子だけで決まるものではありません。しかし、APOE遺伝子のパターンによって「発症しやすい」「発症しにくい」傾向があるのは事実です。自身の遺伝的な認知症リスクを理解しておくと、認知症予防に対する意識づけや行動変容にもつながるでしょう。

一度の検査で長期的な健康管理に活用できる

遺伝子型は一生涯変化しないため、再検査の必要がありません。一度APOE遺伝子検査を受けておけば、将来にわたって結果を活用し、健康管理に活かせます。

認知症のリスクに備えた準備を始めるきっかけになる

APOE遺伝子検査によりアルツハイマー型認知症の罹患リスクが高いと判定された場合は、生活習慣の改善にもより積極的に取り組めるでしょう。また、家族と検査結果を共有することで、介護やライフプランもより計画的に準備できるようになります。

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APOE遺伝子検査を受ける3つのメリット イメージ

APOE遺伝子検査とあわせて検討したい
MCIスクリーニング検査プラス

MCIスクリーニング検査プラスは、MCI(軽度認知症)のリスクを測定する血液検査です。血液中のタンパク質を調べることで、リスクを判定します。

MCIを放置すると認知症に進行することがありますが、MCIの時点で気づき、適切な予防を実施することで健常な状態に戻ることもあります。認知症の早期治療のためにも、MCIのリスクを調べる習慣を身につけましょう。

MCIスクリーニング検査プラスは、APOE遺伝子検査と同様、血液検査のみで調べられます。MCIが増え始める40歳ごろから始めてみてはいかがでしょうか。

MCIスクリーニング検査プラスについて
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APOE遺伝子検査に関するよくある質問

APOE遺伝子検査についてのよくある質問とその答えをまとめました。ぜひチェックしてみてください。

QAPOE遺伝子検査は自宅でも受けられますか?

APOE遺伝子検査は、専用キットを用いて自宅で実施できます。
自宅でAPOE遺伝子検査を実施したい方は、専用キットの購入を検討してみましょう。

QAPOE遺伝子検査キットはどこで購入できますか?

APOE遺伝子検査のキットは、インターネットショッピングサイトで購入できます。
さまざまな会社が販売しているため、扱い方の手軽さや検体送付後の対応、結果報告書の内容、会社の評判なども参考に選びましょう。

QAPOE遺伝子検査は何歳から受けられますか?

APOE遺伝子検査には、とくに年齢制限はありません。
アルツハイマー型認知症は、発症の10年以上前からアミロイドβの蓄積が始まるとされているため、早期の予防を考える方には40歳前後での検査が一つの目安になります。また、予防意識の高い方であれば、20代や30代で受けておくことも有効です。

QAPOE遺伝子検査を受ける際に保険は適用されますか?

APOE遺伝子検査は、医療機関で受ける場合であっても保険は適用されません。全額自己負担となります。

認知症予防に自費検査も取り入れよう

APOE遺伝子検査は、アルツハイマー型認知症の発症リスクを調べる検査です。遺伝子型は変わらないため、一生に一度だけ受検すればよい点も特徴です。

しかし、アルツハイマー型認知症を発症しやすい遺伝子タイプと判断された場合も、必ずしも発症するわけではありません。検査で「アルツハイマー型認知症のかかりやすさ」を把握しつつ、認知症予防につながる生活を送ることが大切です。

「認知機能ケアプロジェクト」では、ガンマ波の最新研究情報を配信しています。最新の情報を入手することは、認知症の理解を深めるためにも不可欠です。認知症予防が気になる方は、ぜひチェックしてみてください。

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