04認知症コラム
レム睡眠行動障害(レム睡眠行動異常症)とは?
特徴や原因、対処法について解説
2026.01.30
レム睡眠行動障害(レム睡眠行動異常症)とは、夢の中の行動が実際の行動として現れる病気です。たとえば、夢の中での発言が寝言として周囲に聞こえていたり、夢の中で手足を動かしたつもりが実際に動いていたりします。この記事では、レム睡眠行動障害の原因や診断、対処法について解説します。
レム睡眠行動障害(レム睡眠行動異常症)とは?
レム睡眠行動障害(レム睡眠行動異常症)とは、夢の中での発言や行動が、実際の発言・行動となって現れる病気です。
通常、夢を見ているとき(レム睡眠時)は身体の力が抜けるものですが、レム睡眠行動障害の方は夢の内容に合わせて言葉や動きが出ることもあります。40代後半以降の男性が発症することが多いとされ、場合によっては周囲に危害を加えることもあるため注意が必要です。
レム睡眠とは:
睡眠段階の一つ。睡眠脳波から判別され、急速眼球運動と骨格筋活動の低下を特徴とする。レム睡眠中には夢をよく見る。
出典:厚生労働省健康づくりサポートネット「レム睡眠とは」
レム睡眠行動障害の特徴
レム睡眠行動障害では、夢の内容に応じてさまざまな行動が現れます。はっきりとした寝言を言うだけのこともあれば、手足を振り回し、周囲の人々を攻撃することも珍しくありません。頻度も人によって異なり、毎晩起こる場合もあれば、月に数回だけの場合もあります。
症状が出ているときに声をかけると、すぐに目が覚めます。目覚めた後の意識ははっきりしており、夢の内容もよく覚えているのが特徴です。
認知症との関連性
レム睡眠行動障害は、レビー小体型認知症の初期症状として現れることが多く、診断の重要な手がかりです。レビー小体型認知症では、レム睡眠中に筋肉の動きを抑制する機能が失われるため、夢の内容に合わせて体が動く症状が出やすくなります。また、認知症を発症する何年も前から現れることがあり、「前臨床症状」として注目されています。
レム睡眠行動障害が起こる原因として考えられること
レム睡眠行動障害はさまざまな状況が絡み合って起こる病気です。一般的に考えられる原因について解説します。
夢の動きを止める脳のブレーキの故障 異常なたんぱく質による脳の働きの乱れ 頭部外傷による神経系の損傷 薬によるレム睡眠制御の乱れ
夢の動きを止める脳のブレーキの故障
レム睡眠とは睡眠段階の一つで、夢を見ることが多いといわれています※。また、眼球が急速に動き、骨格筋の活動が低下することも、レム睡眠の特徴です。
レム睡眠中は、身体を動かさないように脳が指令を出しているため、本来であればあまり身動きはできません。しかし、何らかの理由により、指令を出す脳幹の働きが弱まると、夢の内容に合わせて身体が動くことがあります。
※ノンレム睡眠中も夢を見ることがあります。
異常なたんぱく質による脳の働きの乱れ
αシヌクレインというたんぱく質が脳内に蓄積すると、神経細胞の働きが乱れ、身体の動きをコントロールしにくくなります。
パーキンソン病の研究では、発症の約20年前からこのαシヌクレインの蓄積が始まっていることが明らかになっています。このため、レム睡眠行動障害は、パーキンソン病発症の早期兆候である可能性が指摘されています。
頭部外傷による神経系の損傷
転倒や事故などで頭を強く打った経験があると、脳の深い部分にダメージが残ることがあります。その影響で、睡眠中の体の動きをコントロールする仕組みが乱れることがあります。特に高齢の方では、軽いけがでも長く影響が続くことがあるため注意が必要です。
薬によるレム睡眠制御の乱れ
抗うつ薬や一部の睡眠薬は、レム睡眠の仕組みに影響を与えることがあります。これらの薬の作用により、本来レム睡眠中に働く筋肉の抑制機能が弱まり、眠っている間に体が動いてしまうことがあります。
レム睡眠行動障害の主な3タイプの症状
レム睡眠行動障害には、主に3つのタイプの症状があります。寝言程度の軽いものから、激しく体を動かすものまで幅広く見られます。
発声として現れる症状
夢の中の会話や感情が声として現れるタイプの症状です。同じ部屋で寝ている人には寝言として気づかれやすく、普通に会話をしているように話すこともあれば、夢の中で感情が高ぶると叫び声になることもあります。
- 症状の例
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- 誰かと会話しているような寝言を言う
- 怒鳴る・叫ぶなどの激しい発声がある
- 突然笑い出す
- 恐怖や混乱を感じさせる声を出す
危険のない動きとして現れる症状
手足や体が小さく動く程度の、比較的軽いタイプの症状です。夢の内容とは無関係な動きであることが多く、本人も気づいていないことがほとんどで、周囲に危害が及ぶこともまずありません。
- 症状の例
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- 手足をバタバタさせる
- 何かを食べる・書くような動きをする
- 物をつかもうとする仕草をする
- 布団の中で身をよじる
危険を伴う動きとして現れる症状
夢に合わせて体が大きく動いてしまう、危険を伴うタイプの症状です。動きが激しいため周囲に危害を加える可能性があり、本人や一緒に寝ている人がけがをしたり事故に巻き込まれたりすることもあります。
- 症状の例
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- 隣で寝ている人を蹴る・殴る
- ベッドから飛び出して壁にぶつかる
- 枕や物を投げつけるような動作をする
- 家具にぶつかる
レム睡眠行動障害の診断に用いられる方法
レム睡眠行動障害の診断では、複数の検査を組み合わせて総合的に判断します。以下、主な診断方法について説明します。
問診によって症状の傾向を把握する
まずは、問診による症状の把握が実施されます。患者本人や家族から、睡眠中の行動や夢の内容、症状が見られるようになった時期、他の異常行動、また、必要に応じて生活背景などを確認します。薬物の影響も原因の一つとして考えられるため、持病や服薬歴も合わせて確認されることが一般的です。
終夜睡眠ポリグラフ検査によって
脳と筋肉の動きを確認する
睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)は、レム睡眠中の異常行動を客観的に捉えるための検査です。脳波、筋電図、眼球運動、呼吸、心拍などを一晩かけて記録し、本来レム睡眠中に弛緩しているはずの筋肉が動いているかどうかを筋電図で確認します。映像記録と組み合わせることで、実際の行動と生理的変化を照合し、レム睡眠行動障害かどうかを判断します。
鑑別診断によって他の病気との違いを見極める
他の病気との違いを見極め、誤診を防いで適切な治療を行うために鑑別診断が重要です。睡眠中に発語や体の動きが現れる病気には、レム睡眠行動障害以外にもてんかん、夢遊病、パーキンソン病などがあります。そのため、MRIやCTで脳の構造を調べたり、血液検査で内科的な問題を除外したり、認知機能を評価したりして、総合的に病気を特定します。
レム睡眠行動障害の対処法3選
レム睡眠行動障害を発病すると、本人だけでなく家族に危害を加える可能性があります。また、家族の睡眠を妨害する恐れもあるため、何らかの対策が必要です。
寝室の環境を整えて安全を確保する
睡眠中に危険を伴う動きが見られるときは、ケガや事故につながる恐れがあるため、寝室の環境を工夫することが必要です。同室で寝る人がいる場合は、家族の安全を考慮した対策を行いましょう。
- 対処法の例
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- ベッドの周囲にクッションやマットを敷く
- 壁や家具の角を保護する
- 隣で寝る人との距離をとる
- 落下や衝突を防ぐためにベッドの高さを調整する
生活習慣を見直す
生活リズムが乱れているときや快い睡眠が得られない環境下では、レム睡眠行動障害の症状が悪化する恐れもあります。初期段階や軽症の場合は、普段の生活や睡眠環境を見直すことで症状の改善が見られることもあるでしょう。
- 対処法の例
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- 就寝・起床時間を一定に保つ
- 寝る前のスマホやカフェインを控える
- 適度な運動で睡眠の質を高める
- ストレスをためないよう意識する
薬物治療をする
本人や家族に危害を加える可能性がある場合は、薬物治療も検討してみましょう。抗てんかん薬や抗不安薬により布動きを抑制すると、筋肉が適度に弛緩し、不安や緊張が和らぐこともあります。また、睡眠時無呼吸症候群を併発しているときは、睡眠時無呼吸症候群に適した薬物が必要です。
レム睡眠行動障害に関するよくある質問
レム睡眠行動障害は早ければ40代後半から発症することがあります。家族やご自身が発症した場合に備えて、疑問を解消しておきましょう。
Q何科を受診したらいいですか?
神経内科や精神科、心療内科を受診します。睡眠専門の外来がある医療機関でも相談可能です。
Qレム睡眠行動障害の診断基準は何ですか?
主な診断基準は、終夜睡眠ポリグラフ検査によるレム睡眠中の筋電図異常の確認です。睡眠時の動きや脳波なども測定し、総合的に判断します。また、他の疾患との鑑別のため、血液検査やMRI、認知機能検査も組み合わせて実施されます。
Qレム睡眠行動障害は治りますか?
現時点では根本的な治療法はありませんが、症状を抑えることは可能です。一般的には、ベンゾジアゼピン系の抗てんかん薬・抗不安薬であるクロナゼパムという薬物療法で症状を抑えたり、寝室環境を整えて事故を防ぐ対策を行ったりします。
Qレム睡眠行動障害を放置するとどうなりますか?
放置し、症状が重症化した場合には、本人や家族がケガをするリスクが高まります。高さのあるベッドではなく布団で寝る、就寝時には周囲に壊れやすいものやケガの原因になるものは置かないといった対策が必要です。
睡眠時の問題は医師に相談しよう
夜中に叫び声が聞こえる、どこかに身体をぶつけて朝になるとアザがある、といった症状が見られるときは、レム睡眠行動障害かもしれません。放置すると本人や家族がケガをするリスクがあるため、早めに医療機関を受診し、詳しく検査をしてもらいましょう。
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