04認知症コラム

家族が認知症になった際の対応は?
介護疲れで限界を迎えないためのポイント

2024.11.13

家族が認知症になった際の対応は?介護疲れで限界を迎えないためのポイントイメージ

家族が認知症になった場合、「どうすればよいのか不安」「今から備えておきたい」とい思う方は多いでしょう。認知症は治療が難しい疾患で、徐々に進行します。この記事では、認知症を早期発見するポイントから、家族が認知症になったときの対応、介護疲れで限界を迎えないための心がけを紹介します。いざというときに備えて、ぜひ最後までチェックしてください。

家族の認知症は早期発見が重要

認知症は早期発見が重要です。認知症には有効な治療法が見つかっていないため、放置すると日常生活が困難になり、要介護状態になるリスクが高まります。早期発見できれば、適切な治療やケアを迅速に開始でき、症状の進行を遅らせられるかもしれません。

また、認知症介護による家族の精神的・経済的負担を軽減するためにも、可能な限り早期対応が望まれます。

家族の認知症は早期発見が重要イメージ

認知症の初期症状(MCI)を放置するリスク

認知症には「軽度認知障害(MCI)」と呼ばれる初期段階があります。MCIは認知症そのものではありませんが、健常な状態でもないグレーな状態といえます。症状を悪化させないためにも、MCIの段階で適切に対応することが重要です。

MCIの状況を放置して認知症の症状が進行してしまうと、以下のようなリスクが生じます。

症状の進行により考えられるリスク
  • 今まで支障のなかった動作が出来なくなる・やり方を忘れる⇒火災リスク
  • 自分がどこにいるか分からなくなってしまう徘徊・外出先での事故のリスク
  • 服薬習慣の存在を忘れてしまう・服薬したことを忘れ、薬を飲みすぎる⇒持病や疾患の悪化リスク
  • 物事を判断する力が衰える⇒詐欺被害・金銭トラブルのリスク

認知症の代表的な初期症状を知って早期発見を

認知症の初期症状は、主に「中核症状」と「周辺症状」の2種類に分けられます。日常生活の中で初期症状が見られたら専門医の診察を受けることを検討しましょう。

中核症状:物忘れや理解力の低下 周辺症状:不安感や気力の低下

認知症の初期症状のチェックリストはこちら

症状 症状の例
中核症状
  • 記憶障害
  • 見当識障害
  • 判断力・
    理解力の低下
  • 同じことを何度も言う
  • 同じことを何度も聞く
  • 最近の出来事が思い出せない
  • 大切な物を失くしてしまう
  • 同時に2つのことが出来なくなる
周辺症状
  • 不安感の高まり
  • 気力の低下
  • 興味関心の薄れ
など
  • 今までできていたことができなくなっていることに不安感を持つ
  • 今まで行っていた活動をしなくなる
  • 仕事や家事、趣味にも興味を失う

中核症状:物忘れや理解力の低下

中核症状とは、もの忘れや理解力の低下など認知症の初期段階で顕著に現れる症状です。最近の出来事や会話の内容を思い出せない、時間や場所などがわからないなど、記憶障害や見当識障害の症状が現れてきます。複雑な指示や新しい情報を理解できなくなるだけでなく、簡単な計算や料理のレシピも理解できなくなることがあります。

中核症状について詳しくはこちら

周辺症状:不安感や気力の低下

周辺症状は、中核症状に起因する行動・心理症状です。認知症においては、不安感や気力の低下といった抑うつ症状や、怒りっぽくなるなどの興奮症状が多くみられます。「普段は楽しく感じていた活動に対して興味を失う」「日常生活の些細なことに対して過度に不安を感じる」などが典型例です。さらに、これらの症状によって外出を避けたり、人と会うことを嫌がったりすることも少なくありません。

周辺症状について詳しくはこちら

認知症の症状別の対応について詳しく見る

家族に認知症の疑いがあるときの対応の流れ

認知症の疑いがある場合は、できるだけ早期に上記の取り組みを始めましょう。それぞれ詳しく解説します。

1家族で認知症の理解を深めて気持ちを整える 2介護の責任や相続の権利について確認する 3信頼できる医師や医療機関に相談する

1家族で認知症の理解を深めて気持ちを整える

まずは、家族全員で認知症についての正しい知識を共有することが重要です。認知症は脳の病気であり、単なるもの忘れとは異なることを理解する必要があります。最初は混乱してしまうかもしれませんが、認知症のサポートは家族全員で協力して行っていく必要があります。

気持ちを整える時間を作ったり、外部のサポートグループやカウンセリングの利用を検討したりしましょう。

2介護の責任や相続の権利について確認する

次に、家族間で介護の責任分担を明確にし、協力体制を築く必要があります。とくに問題になりやすい介護の責任と相続の権利については、早い段階で話しておくのがよいでしょう。

認知症が進行すると、本人との意思疎通が難しくなってしまいます。相続については本人の意向を早めに確認し、専門家にも相談して法的な手続きがスムーズに進められるようにしておきましょう。

3信頼できる医師や医療機関に相談する

認知症の治療は、専門医による診断を受け、正確な病状を把握したうえで適切な処置を早期に開始することが重要です。口コミや評判を参考に、実際に医療機関を訪問して慎重に選びましょう。

家族の負担を軽減するために、医療機関が通いやすい場所にあるかどうか、認知症の方が安心して通える環境であるかどうかを考慮して選ぶ必要があります。

認知症の家族に対応するときのポイント

認知症の方をサポートするのが初めての場合、「どう接していいかわからない」という悩みや不安もあるでしょう。認知症の方とコミュニケーションする際に押さえておくべきポイントについて解説します。

様子や変化を暖かく見守る

認知症の方の状態は日々変化するため、よく観察することが重要です。もの忘れや、理解力・判断力が低下して困っている場合も、すぐに認知症と決めつけずまずは様子をみましょう。

無視や放置などはよくありませんが、過度な介入は認知症の方の自尊心を傷つけてしまうかもしれません。焦らずに暖かく見守る姿勢を大切にし、必要に応じて適切なサポートを行うようにしましょう。

できるだけ明るい気持ちになってもらう工夫をする

認知症の方の日常生活に楽しみを取り入れ、明るい気持ちで過ごせるようなサポートも大事です。たとえば、好きな音楽を聞かせたり、趣味や興味のある活動を一緒に楽しんだりするとよい影響があるでしょう。

家族や友人との交流が増えれば、認知症の方の孤独感が軽減されます。できるだけポジティブな気持ちを引き出せるように努めましょう。

過度に責めない・不安な気持ちにさせないようにする

認知症の方を過度に責めたり、厳しい言葉で叱ったりすることは症状を悪化させるため避ける必要があります。これまでできていたことができなくなる、もの忘れが多くなることに対して、本人は不安や戸惑いを覚えるでしょう。その気持ちを理解し、共感の姿勢を持つことが重要です。

繰り返し同じ質問をされることがあるかもしれませんが、根気よく優しく対応してあげましょう。失敗しても怒らず、対策を一緒に考えるなど認知症の方に寄り添う姿勢が大切です。

認知症ケアについて詳しくはこちら

認知症の家族に対応するときのポイントイメージ

認知症の症状別の対応

認知症の方は思いもよらない行動をすることがありますが、落ち着いて対応する必要があります。症状別の対応方法を押さえておきましょう。

徘徊への対応

認知症の方は、時間や場所がわからなくなり徘徊してしまうことがあります。何度も徘徊を繰り返すとつい怒ってしまいがちですが、その気持ちを抑えてまずは徘徊をする理由を聞いてあげましょう。

住環境に対して不安やストレスを感じている場合は、その原因を取り除く必要があります。徘徊する場合、なじみの場所にいることが多いですが、もし行方がわからなくなってしまったらすぐ警察に捜索届けを出し、地域包括支援センターに相談しましょう。

認知症による徘徊について詳しくはこちら

物盗られ妄想への対応

認知症の方の特徴として、ものやお金を取られたと思い込む「物盗られ妄想」という症状があります。物盗られ妄想は不安や怒りの感情に起因するため、落ち着いて話を聞くことが大切です。

言っていることを否定せず、安心できる言葉選びを意識しましょう。肩に優しく触れるなど、非言語的なサポートがあればさらに安心感を与えられます。

認知症による妄想について詳しくはこちら

暴力・暴言への対応

認知症が進行すると、病気に対する不安から暴力や暴言など攻撃的な行動を起こすことがあります。その際に否定や叱責で押さえつけようとすると、エスカレートする可能性があり危険です。

まずは落ち着かせることを優先し、なぜ暴力や暴言に至ったのか原因を探りましょう。状況によっては心理的・物理的に距離を置いてみるのも一つの方法です。解決の糸口が見つかる可能性もあるため、周囲の人やケアマネージャーなどに相談するのもよいでしょう。

認知症による暴力・暴言について詳しくはこちら

弄便への対応

認知症の方はトイレに失敗してしまうことがあります。弄便は認知症の方にとっても非常にショックです。決して叱ったり責めたりせず優しい言葉をかけ、お風呂に誘導して流してあげるなどの対応をしましょう。

また、弄便した恥ずかしさから下着を隠したり、隠したことを忘れてしまったりするケースもあります。もし見つけたら、認知症の方の心情に配慮しつつ汚れが広がらないよう後始末しましょう。

弄便について詳しくはこちら

家族が介護疲れしないための心がけ

認知症の介護は決して無理をしないことが大切です。介護疲れしないために必要な心がけについてご紹介します。

認知症介護の難しさを理解する

認知症介護では、認知症の方の行動や言動が予測できず、常に気を張っていなければなりません。また、認知症の方とのコミュニケーションが難しく、フラストレーションを感じることも少なくないでしょう。まず前提として、認知症介護の難しさ、身体的負担と精神的ストレスの大きさを理解し、適切な支援を求めることが重要です。

ひとりで抱え込まずにお互いを頼る

介護はひとりで抱え込まず、複数人で支え合いながら行っていくことが大切です。家族間で介護の役割を分担し、密にコミュニケーションを取りながらお互いの状況を共有しましょう。また、友人・知人や親戚に協力を依頼し、外部の視点を得ることも日々の介護のヒントになります。地域のサポートグループや介護者向けの相談窓口なども積極的に活用しましょう。

外部の相談先の例

……など

外部サービスを検討する

介護負担を軽減するためには、外部サービスの利用も検討するべきでしょう。最近では介護者である家族の休息時間を確保するために、デイサービスやショートステイを利用する「レスパイトケア」が注目されています。訪問介護や訪問看護を活用すれば、専門的なケアやアドバイスを受けることも可能です。

これらのサービスは介護保険制度を活用できるため、経済的な負担も軽減できます。詳細な情報は地域の介護支援センターや市町村の福祉課に相談してみましょう。

認知症への理解を深めて無理のない介護を

認知症は一度発症すると治療が難しく、普段からの予防・ケアが大切です。家族に認知症の疑いがある場合は、適切な対応を心がけて進行を抑えましょう。普段から家族間でコミュニケーションをとれば、些細な変化に気づけるようになります。

認知症の兆候を見過ごし、病気が進行すれば、本人はもとより家族など周囲の負担も大きくなります。認知機能を維持するための方法はいくつか見つかっており、早期発見できれば症状の進行を遅らせることができます。ぜひ最新の研究をチェックしてみてください。

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