「DEL-1」研究の最前線は常識破りの抗老化!
大さじ1杯のアマニ油がウォーキング1時間に匹敵

全身の老化を制御する因子として注目を集める「DEL-1」は、自らの意思でアプローチしやすいという点で、これまでの老化指標とは一線を画す存在です。DEL-1研究の最前線について、DEL-1研究の第一人者である、新潟大学大学院医歯学総合研究科 高度口腔機能教育研究センター 研究教授 前川知樹先生に伺いました。

DEL-1の特徴と減少が招くリスク、低い人に共通する10の症状

前川先生が「DEL-1」のご研究に着手されたきっかけや、全身におよぶ老化の制御因子であることを発見されたエピソードについて、お聞かせください。

私がDEL-1の研究に足を踏み入れたのは、2012年からペンシルベニア大学へ留学していた頃に遡ります。2014年頃、細菌に関する研究に没頭していた私に、共同研究者の医師が「DEL-1という分子を調べてみないか」と声をかけてくれたのがすべての始まりです。当時は、単に「好中球の暴走を抑えるだけの分子」としての側面しか知られていませんでした。まさか、これほど老化に深く関わっているとは夢にも思わなかったため、当初は老化に関する研究など、全く念頭になかったのです。

転機が訪れたのは2015年。骨の研究を進める中で、DEL-1が破骨細胞に直接作用し、骨がもろくなる「骨吸収」を抑える役割があることを発見しました。その時に、DEL-1があるのになぜ老化した生体では骨吸収が進んでしまうんだろうと疑問を持ちました。そこで老化したマウスを調べてみると、加齢によってDEL-1が著しく減少することを発見しました。つまりDEL-1は、若いマウスでは高い数値を示す一方で、老齢マウスでは顕著に低い数値を示します。この発見こそが、DEL-1を「老化の制御因子」として本格的に意識し始めた決定的な瞬間でした。

それから10年。現在では約5,000人分もの健康なヒトの血液中のDEL-1濃度を測定したデータを蓄積し、DEL-1と老化の相関関係が明らかになりつつあります。

DEL-1の作用するメカニズムや構造、身体の中で多く発現している部位といった特徴について、ご解説ください。

DEL-1の最も注目すべきメカニズムは、炎症を起こしている老化細胞を減らし、組織全体の慢性炎症を起きにくくすることです。例えば、脳内でじわじわと炎症が起こり、いわゆる「ゴミ(老廃物)」の蓄積が主な誘因となる認知症に対して、DEL-1を直接作用させると、炎症が抑制されてゴミを少なくすることができます。

こうしたメカニズムを支えているのが、DEL-1特有の「マルチドメイン」と呼ばれる非常に興味深い構造です。ドメインというのは特定の機能をもつ独立した領域のことで、いわば「どの部位に、どう働くか」という役割分担を決めるパーツのようなもの。一つのDEL-1は合計5つのドメインで構成され、筋肉に働く「E1」ドメインや、骨に働く「C1・C2」ドメインなどが組み合わさることで多様な機能を発揮できるのです。

DEL-1の発現部位を調べたところ、特に神経系などの「恒常性(ホメオスタシス)を保つべき臓器」に多く発現していることが分かりました。神経系には免疫細胞が存在しないため、組織を守るための「レジリエンス(回復力)」としてDEL-1が必要なのでしょう。DEL-1がそこで保護するように働くことで、組織は老いにくくなり、若々しい機能を保つことができると言えます。

ちなみに、男女の数値を比較すると、平均的には男性よりも女性の方が高い傾向にあります。これはホルモンの影響というよりも、一般に女性の方が健康意識は高く、日頃から健康食品などを上手に取り入れている人の割合が多いことも理由の一つでしょう。女性の方が男性より平均寿命が長いことにも関係しているかもしれません。

体内の各臓器とDEL-1との相関について、これまでに明らかになっていることを教えていただけますでしょうか?

DEL-1と各部位、あるいは疾患との相関を調べていく中で、興味深い結果が出ているのは「腎臓」と「認知症」との関係です。

このうち腎臓に関しては、約200症例もの慢性・急性腎不全患者さんの血液や組織を測定した結果、DEL-1が有意に低下しているという顕著なデータが出ています。
ここで、DEL-1の産生条件として重要なのが「血管の多さ」で、腎臓は血液と血管が非常に多く集まる臓器です。そこでDEL-1が強力に産生されているのではないかという仮説を立てて検証したところ、実際に腎臓がDEL-1を生み出す主要な拠点の一つであることが分かりました。

現在、脳神経系におけるDEL-1の挙動についても詳しく解析を進めています。もし、DEL-1を効率よく脳へ誘導できれば、これまで「不可逆」とされてきた認知症の治療や予防に対しても、一石を投じることになるでしょう。

また、DEL-1を治療薬や食品として取り入れることを想定し、経口摂取した際の血液や唾液との相関も明らかにしなければいけません。その結果を踏まえ、DEL-1がしっかりと脳まで到達できるかを確認していく必要があります。

各臓器とDEL-1の相関を考える際に重要なのが、臓器ごとの「ターンオーバー(細胞の入れ替わり)」の速さの違いです。例えば肝臓は再生能力が高く、たとえ半分損傷してもある程度は自力で回復できるため、DEL-1による保護をそれほど必要としません。

一方で、脳神経系や腎臓、血管、腸管、筋肉、歯肉など、DEL-1が多く発現する部位は、ターンオーバーが遅い組織です。こうした「自力での再生が難しい部位」ほど、DEL-1の必要性が高いといえそうです。
その他にもさまざまな臓器についても検証を進めているところです。

DEL-1は、加齢以外にどのようなことが誘因で低下し、その結果どのようなリスクを招くのでしょうか?

加齢以外でDEL-1を低下させる要因としては、ストレスの影響が非常に大きいと考えています。過度なストレスは肥満を引き起こしたり、睡眠不足を招いたりするだけでなく、DEL-1の低下にも大きく加担していると考えて間違いないでしょう。

一方で、一般に身体にとって有害とされる過度の飲酒は、ことDEL-1の数値に関して言えば、それほど直接的な影響を与えないという意外な結果も出ています。

DEL-1の減少が招くリスクは、ひと言でいうと「炎症や外傷に対して、極端にもろくなる」ことです。事実、DEL-1が欠損したマウスを用いた実験では、ごく軽い刺激を与えただけで神経系の病気を発症したり、歯周病があっという間に重症化したりする様子が確認されています。

ヒトにおいて、高齢者ほど病気や感染症にかかった際に重症化しやすいのは、DEL-1の低下によって組織を若く保つためのレジリエンスが失われていることも要因の一つでしょう。DEL-1が恒常性を保つべき組織ほど多く発現している以上、その減少は生命を維持する主要な部位の老化、ひいては個体全体の老化を加速させることを意味するのです。

DEL-1の減少によって、具体的にはどの部位で、どのような症状が見られるのか、ご解説いただけますか?

DEL-1の減少によって最初に変化が現れやすいのは、肌や目、口の中といった「体の表面や粘膜」です。実際、これまでのヒトによる計測データでも、いちばん顕著な変化が見られたのが肌でした。肌が綺麗な人はDEL-1の値が高い傾向にあり、逆に数値が低い人では肌のカサつきや目の乾燥(ドライアイ)、歯ぐきの腫れなどが出やすいことが分かっています。

こうした表面的な部位は、DEL-1の数値が下がり始めてから2〜3週間ほどで変化が現れやすい一方で、意識して数値を高めれば、比較的早く改善を実感しやすい部位でもあります。そのほか、DEL-1の低下は、骨粗鬆症や腸炎、下痢、関節の痛みといった全身の不調として現れる可能性もあります。

次に示す表は、DEL-1が低い人に共通する10の症状をまとめたものです。このうち3項目以上に該当する場合は、体内のDEL-1が不足している状態かもしれません。

今後は認知症との相関についても項目を追加し、さらなる検証を続けていく予定です。

DEL-1を測定するのに適したタイミングや、測定する頻度の目安について教えてください。

DEL-1は、血液や唾液によって測定することが可能です。将来的には、一般の人が自分で測りたいと思うタイミングで、自宅でも簡単に測定できるセルフチェックキットの開発も視野に入れています。

また、DEL-1には、1日の中で数値が変わる日内変動はほとんどありません。そのため、朝と夜、あるいは食前食後といった条件で結果が変わる心配もなく、測定にあたっての細かな制限が必要ないことも大きな利点です。測定するタイミングとしては、食習慣の改善や運動の効果を確かめたいときに実施するのも有効でしょう。頻度については、まずは月に1回程度を推奨します。

その理由は、DEL-1の著しく低い人が良質な脂肪酸を摂取したり、ウォーキングなどの運動を習慣化したりした場合、数値に変化が現れ始めるのはおよそ2週間後からだからです。短期間での変化を確認したい場合は最短で2週間、定期的な健康管理として取り入れるなら1ヶ月ごとの測定を目安にしてください。

ウェルネス総研レポートonline編集部

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