機能性表示食品制度が10周年を迎えて

機能性表示食品制度は2015年4月にスタートしてから今年4月で10周年を迎える。昨年3月に小林製薬事案が明るみになってから、消費者庁をはじめとした政府関連や業界団体、関連企業、通販業界などでは大きな混乱をもたらしたが、政府の動きも意外と早く、昨年9月1日には法令化を実施、健康被害情報の収集体制やGMP義務化、届出情報の表示方法の見直し、改正後の届出に関する事項(新規成分に係る届出者の評価を慎重に確認する手続き〈60日→120日〉を含む)などが施行された。昨年12月27日には微生物等関連原材料に関連した製品標準書の作成指針などを追加改正した通知を発出した。小林製薬事案で問題となった、微生物などを利用した培養・発酵工程を経て製造される原材料について、GMP指針の中で製品標準書による取扱い方を明記し、原材料の同等性/同質性を確保するのが目的である。また、今年1月17日には機能性表示食品制度の改正にともなう内閣府告示案を公表し、届出方法や自己点検・評価に関連して提出資料の様式を改めるなどの内容のパブコメ募集を開始した。2月17日12時まで受け付ける。今回のパブコメは、今年4月1日から施行されることになっている事項(表示の内容、安全性および機能性の根拠に関する情報、生産・製造および品質管理に関する情報など)については、その様式および報告の方法などについて内閣府が告示で定めることになっていることから、告示案を示してパブコメ募集し、それを踏まえて告示し、4月1日から施行されるという手順である。これには年1回報告が義務化される機能性の最新研究報告なども含まれる。このように制度は着々と整備され進んでいる。

ところで、昨年の後半に開催された食品機能性関連のいくつかの学会では機能性表示食品を取り上げるシンポジウムが注目を集めていた。例えば、ファンクショナルフード学会第19回研修会(8月末開催)において、堀正敏東大教授が登壇し、健食の制度についてサプリメント法制定などの新しい提案や、国内の抱えている健康食品の問題点などの解説を行った。健食分野の制度や、国民の意識調査の結果などから国民の健康食品への意識は高いが、正確に健康食品の分類やリスクを理解できてない点を説明し、日本の健康食品の今後について、①サプリメント法の整備②トクホ制度と機能性表示食品制度の統合などを提案した。

第22回日本機能性食品医用学会総会(12月開催)では、健康食品産業協議会との共催で行われたシンポジウム「生まれ変わる機能性表示食品制度の今後について」が注目され、大勢の聴講者が参集した。講演の中で、同協議会は、PRISMA2020の傾向と対策について近く発表するとし、機能性表示食品で受理されてない「しわ」「毛髪」の皮膚領域表示拡大検討の話題も提供した。

第29回 日 本 フード ファク ター学 会 学 術集会(12月開催)では、特別企画「食品の機能性、安全性を考える」を実施。星薬科大学薬学部創薬科学科の穐山浩教授が原材料について通知の自主指針で、食経験関する情報調査、原材料に含まれる成分の基原や安全性の文献検索などいくつかのステップがあることを強調。また、小林製薬事案の再発防止のため、微生物等(藻類も含む)を用いた培養・発酵等関連原材料に成分規格などを設定し、同等性の分析など(クロマトパターン分析などを要望)を求めることを講演し、また、東京農業大学上岡洋晴主任教授は今のSRは玉石混交であると指摘。SRを評価するツール「ハムスター2」で評価した結果などを話した。制度は整備されつつも、発展途上にあるという見解が示された。

「FOOD STYLE 21」2025年2月号 F’s eyeより

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