【注目書籍】絵本を読むように「タンパク質」のキホンのキが学べる

タンパク質と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか? 筋肉を作る材料? アスリートの摂るプロテイン? そのどちらも正解ですが、それだけではありません。『新しいタンパク質の教科書』(上西一弘監修/池田書店)では、タンパク質は人間の「命」をつくっている基本であることを、栄養学の専門家が解説します。イラストがたくさん入って、まるで絵本で読み解かれるような本書を読めば、タンパク質だけではなく、人間のからだの不思議を楽しく知ることができます。

栄養の専門家の手でわかりやすく解説

世の中には、病気を予防したり、健康でいるためにたくさんの本が出版されています。本書は「タンパク質の教科書」とタイトルで銘打っているように、タンパク質の基本の「キ」から応用までが網羅されています。

1933年の創設以来、多くの管理栄養士や臨床検査技師などを輩出してきた、女子栄養大学の上西一弘教授が監修。その信憑性はお墨付きです。

さらには、本書の中でのタンパク質が関係する病気についての記述は、斎藤糧三医師(日本機能性医学研究所所長)と溝口徹医師(新宿溝口クリニック院長)が監修しており、タンパク質不足による病気や予防法とその見つけ方まで、まんべんなく紹介されています。

タンパク質たっぷりな1日の食事のメニュー例や、「肌トラブルを抱えている人」「筋肉をつけたい人」「ダイエット中の人」「胃腸が弱い人や高齢者向け」「メンタルを元気にしたい人」「鶏・豚・牛料理の脱マンネリしたい人」向けのレシピまで掲載されており、実用性も十分。

そのうえ、イラストをふんだんに使い、タンパク質がからだの中でどんな働きをし効果があるのか、実にわかりやすく解説されており、堅苦しい教科書のイメージとはひと味違う内容になっています。

からだの成長だけでなく、“こころ”もつくるタンパク質

自分たちが口にする肉や魚、卵などには、タンパク質という栄養が含まれていることを知っている人は多いことでしょう。そして「筋肉や髪や肌の材料になる」「タンパク質の摂取量が少ないと筋肉量が減って、寝たきりになる心配がある」ということも知っているでしょう。

しかし、タンパク質が、からだの機能を調整する「ホルモン」や「消化酵素」、免疫を担う「抗体」などのもとになることは、あまり知られていないかもしれません。特に、本書の最初に特記されているのが、「タンパク質はこころもつくる」栄養だということです。

脳内で分泌されるセロトニン(心を落ち着かせるホルモン)、ドーパミン(喜びや快楽を感じさせるホルモン)、ノルアドレナリン(恐怖や驚き、興奮を感じさせるホルモン)などは、すべて神経伝達物質として働くタンパク質なのです。

つまりタンパク質の摂取量が不足すると、脳内のそれらのホルモンがつくられなくなってしまい、メンタルの不調につながるのです。そこで起こるのが「うつ病」などのこころの病。

しかし、現代の日本人のタンパク質の摂取量は、戦後まもない時代と同程度。これだけ情報があふれ、脳内で処理することが増えたり、人間関係が複雑になっている時代に、タンパク質の摂取量が減っていては、メンタルを正常に維持できるかという心配です。

また、最近増えている子どもの発達障害のほとんどは、脳の神経機能の問題なのだとか。その原因のひとつが、タンパク質の摂取量の減少ともみられています。

それでなくても成長過程である子どもにタンパク質は欠かせません。年齢に合わせて、年々摂取量を増やしていく必要があります。

子どもが健やかに成長するためには、タンパク質以外にもビタミンD、カルシウム、亜鉛などを含むバランスの良い栄養と、規則正しい睡眠や適度な運度が必要。それらによって、成長ホルモンが適切に分泌されるのです。

摂り過ぎれば危険なことも

成人のからだの中の約60%は水分、残りのおよそ半分はタンパク質だそうです。それらのタンパク質は、存在する部位や働きによって名前を変え、人体にあるすべての種類を数えると5万とも10万ともいわれ、まだわかっていないものが多いのだとか。

その中で、肌のハリを生み出しているコラーゲンや、血管内で酸素を全身に運んでいるヘモグロビン、血糖値を下げるインスリンなどもタンパク質。シワが増え出したことが悩みだったり、肩こりや貧血が起こっていたり、高血糖などが心配な方は、「タンパク質をたくさん摂らなくちゃ!」と思われたかもしれません。

しかし、タンパク質が命を維持するためのほとんどの機能に関わっているとはいえ、過剰摂取は危険です。

まず、肉や魚、乳製品ばかり摂っているとからだが酸性に傾き、カルシウムやカリウムなどのミネラルがバランスを取るために使われることでミネラルが不足。骨粗しょう症などのリスクが増大します。

次に、肉類を摂り過ぎることで腸内環境が悪化。さまざまな不調の原因や大腸がんのリスクを高めます。さらには、尿路結石になったり、肥満のリスクも起こります。

本書には、健康診断でわかるタンパク質に関係する項目名も紹介されていますので、健康診断後の指針にするといいでしょう。

また、1日に必要なタンパク質量の目安は、体重や生活環境、からだの状態によって変わりますので、その記述に従って自分自身の適量を見つけることもできます。

「自分や家族には、どの程度のタンパク質が必要?」「この不調はタンパク質不足?」などの疑問がわいた時、生活の目安として、本棚に置いておきたい1冊です。

【書籍情報】
『新しいタンパク質の教科書』(上西一弘監修/池田書店)


ウェルネス総研レポートonline編集部

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