進化するビタミンK2の研究と働き

ビタミンK2が最近再び注目を集めている。最近の研究で、フェロトーシス(鉄依存性細胞死)を抑制する研究や、体内のビタミンKサイクル(酸化防止システム)に関与する研究発表が次々に行われ、アンチエイジング素材として脚光を浴びている。

ビタミンK2はもともと骨密度、骨強度の維持がその機能として知られ、また、動脈にカルシウムが付くのを防ぐ心臓病予防にも役立ち幅広く使用されてきた。マルチビタミンプレミックスのようなサプリメントや、最近では完全栄養食のような製品にビタミンKが配合され、定番化している。

このような中、「ビタミンK2シンポジウム2024」が、国際展示会 ifia / HFE JAPAN 2024において、5月22日東京ビッグサイト南3ホールで開催され、満員の盛況ぶりであった。プログラムは、座長の開催挨拶(矢澤一良・早稲田大学ヘルスフード科学部門長)、①「アジアの栄養問題とJapan Nutrition」(中村丁次・日本栄養士会代表理事会長)②招待講演「ビタミンKの研究史とビタミンK2機能の多様性」(駒井三千夫・東北大学名誉教授兼東北アグリサイエンスイノベーション代表取締役)③「ビタミンK誘導体の創製と抗腫瘍活性」(影近弘之・東京医科歯科大学生体材料工学研究所長/生体機能分子研究部門薬化学教授)④「ビタミンK2とアンチエイジング」(佐藤俊郎・J-オイルミルズ研究開発センターシニアマネージャ―)⑤総括と閉会挨拶(矢澤一良氏)となっている。中村氏は貧困地域の栄養状態の実態報告などを、駒井氏はフェロトーシスの最新研究や抗血液凝固剤ワルファリンとの作用などを、影近氏はビタミンKの医薬化学研究をそれぞれ講演した。また、佐藤氏はビタミンK2依存性たんぱく質の活性化、骨の機能維持、血管・軟部組織へのカルシウム沈着抑制、抗酸化機能、コラーゲン産生等を話した。還元型のビタミンKは、ビタミンEやコエンザイムQ10よりも高いラジカル消去能があるほか、最近になって、フェロトーシスを抑制する因子によってつくられる経路が発見された。フェロトーシスは鉄を介した脂質酸化依存的な細胞死であり、アルツハイマー病などの神経変性疾患やがん細胞に対する抗がん剤感受性などに関与することが知られており、フェロトーシスの抑制には特にビタミンKの効果が高いことが報告され、臓器の炎症を防ぐという。

ビタミンK2の機能性には、ビタミンDとともに骨の形成を促進する働きがある。そのメカニズムは、ビタミンDが血液中へのカルシウム吸収を促進するのに対して、ビタミンK2は、骨へのカルシウムの沈着を促進する。そのため、ビタミンK2は、骨粗しょう症の治療薬として認可もされている。食品添加物としては既存添加物名簿にビタミンK2(メナキノン-4)として収載されている。一方、納豆菌末、納豆菌抽出物は、食品扱いのビタミンK2(メナキノン-7)が流通しており、J-オイルミルズ等が展開している。

現在、「食事摂取基準2025年版案」がまとめられている。食物繊維の「理想的な摂取量」として、これまでよりも1g高く、成人で25g/日にしているほか、食塩の摂取量は男性で1日7.5g、女性で6.5gとなっている。ビタミンKは150μgで2020年版と変わらないが、2015年版では、2010年版と比較すると、例えば15~17歳で2010年版時に男性で80μg、女性60μgであったが、2015年版では男女ともに150μgと倍増しており、この時に大きな注目を集めた。研究も盛んであったために、今回の相次ぐ研究報告では再注目され、今後さらに研究が進み、ビタミン・ミネラルが機能性表示食品にも採用されることを期待したい。

「FOOD STYLE 21」2024年6月号 F’s eyeより

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