2024最新「NNB10キートレンド」でトレンド間の関連をつかむ!【後編】

「10のキートレンド」それぞれの推進要因と避けるべきリスク、トレンド同士の関連を深堀り!

キートレンド7の「脂肪の再定義」についてご解説ください。

とくに若い世代では高脂肪食に抵抗がなく、低炭水化物で高脂肪かつ高たんぱくな食事にすれば、必然的にそれが「血糖値フレンドリー」になっていくことを理解し始めています。低脂肪は以前ほど重視されなくなり、次いで人々は糖質を注視し、ご褒美と健康のための脂肪を選択する時代になりました。

一方で、日本を含むアジアや中東、欧米における年配の消費者の間では未だに「脂肪が太る」という考えが根強いようです。こうした傾向を見極めつつ、最近では種子油フリーを考える消費者も出始めているということを考慮しながら戦略を練っていくことが必要でしょう。

キートレンド8の「ムード&マインド」についてご解説ください。

このトレンドでは、日本を代表するプロバイオティクス乳飲料の「Yakult 1000®」をひとつの代表格として取り挙げ、消化器系のウェルネスと睡眠の密な親和性について分析しています。ここにさらに3つ、「メタボリックヘルス」「血糖値フレンドリー」「腸のウェイトウェルネス」というトレンドが結びつき、強力なベネフィットとなることで消費者が継続して受け入れているという形です。

「ムード&マインド」で成功するには、どのような点に注意が必要でしょうか?

昨今、コロナ禍によって大きな影響を受けたと言われる10代の消費者でとくに、メンタルの健康に対する関心が高まっています。ただ、この分野では約20年もの間、成功例はほとんどありませんでした。その理由は、消費者にとって効果が体感できなかったから。

これに対し、「Yakult 1000®」の成功は消費者がその効果を実感できたということが大きな要因で、加えて味がおいしいことで根強い支持を得られたからです。

株式会社グローバルニュートリショングループ主催
「NNB 10キートレンド 2024 理解度アップセミナー」(2024年1月25日開催)講演資料より

つまり、成功できる唯一の要因は、消費者が効果を実感できると信じること。あと、味が美味しいこと、最低でもニュートラルな味であることが条件でしょう。今後2~3年は、ストレスや睡眠に働きかける商品にとって好機なタイミングになると予測されています。

キートレンド9の「ホルモンヘルスの台頭」についてご解説ください。

株式会社グローバルニュートリショングループ主催
「NNB 10キートレンド 2024 理解度アップセミナー」(2024年1月25日開催)講演資料より

これまで、PMS(月経前症候群)に関する商品はごくわずかで、女性ホルモンの健康課題に対するソリューションはほとんどありませんでした。これが今、トレンドとなっている背景には、ソーシャルメディアのインフルエンサーが月経時に摂ることがよいとすすめる食材について情報配信を行っていることが挙げられます。この分野は「血糖値フレンドリー」とも非常に親和性が高く、“サイクルシンキング”と呼ばれる考え方(月経周期の段階ごとに食事の種類や摂り方を変える方法)に対してもニーズが高いようです。

なかでも、女性が解決したいのはホルモンヘルスといった抽象的な考え方ではなく、疲労や不安、ストレスなどホルモンの影響によって引き起こされる、しつこい症状のせいだと訴えるような商品も。これらは食品のカテゴリーを超え、コミュニティの提供やアプリにおけるレシピ提供なども展開しています。
興味深いのはシードサイクリングと呼ばれる、月経周期ごとに異なる種子を食べることで、ホルモンヘルスによるベネフィットを最大化するというもの。より自然なアプローチの探求と、効果を実感できるような食品成分がインフルエンサーによって、このトレンドを強く推進していることが分かります。

株式会社グローバルニュートリショングループ主催
「NNB 10キートレンド 2024 理解度アップセミナー」(2024年1月25日開催)講演資料より

キートレンド10の「リアルフード&超加工食品の挑戦」についてご解説ください。

いま、この分野で冷静に見るべきことは、UPF(超加工食品)について科学的根拠も定義も未だ存在していないという現状です。ただ、「消費者の嗜好はより伝統的で、より本物の食品に戻りつつある」というNNBの分析にもあるように、代替肉など高度に加工された食品は避けられる傾向にあることは間違いありません。一方のリアルフードについても明確な定義がある訳ではなく、地中海食のような加工度の低いシンプルな原材料で、添加物が少なくホールフードに近いという概念です。

このUPFを懸念する層としては高齢者が多いものの、マスマーケットでは大多数の人が「UPFを聞いたことがない/気にしない」といった回答も得られています。したがって、この分野はいますぐに何かが起こるという訳ではありません。

UPF(Ultra-Processed Foods)についての詳しい記事はこちら

「リアルフード&超加工食品の挑戦」の分野で成功するためのヒントがあれば教えてください。

言ってしまえば、この分野は未だ科学的な根拠はなく消費者の心理に基づくものです。だから、あえてUPFを意識しなくても、リアルフードやホールフードがトレンドといったトレンドを採用していけば必然的にリアルフードを取り上げることになります。

例えば、米州最大のベーカリーグループでGrupo Bimbo(メキシコ)は2019年から米国市場で無添加を公約に掲げ、より原材料がシンプルで分かりやすいパンを提供しています。このように、リアルな食材を選んで原材料を少なくしていけば、必然的にこのトレンドに当てはまっていくのです。

最後に、食品産業の関係者に向けてメッセージをお願いします。

とくにこの2024年版ではトレンド同士のつながりがこれまでよりも一層深く、複数のトレンドと関連付けながら戦略を練っていくことが重要です。活用のヒントとしては、ファクト全体の変遷を客観視し、焦点を当てたトレンドについて深堀りすることも有効でしょう。

このレポートで提示されたようなリスクはあらかじめ回避しつつ、中長期的な成功を目指せる素晴らしい商品開発に取り組めることを心から祈ります。

武田猛氏 プロフィール

株式会社グローバルニュートリショングループ代表取締役。
18年間の実務経験と20年間のコンサルタント経験を積み、38年間一貫して健康食品業界でビジネスに携わり、国内外750以上のプロジェクトを実施。「世界全体の中で日本を位置付け、自らのビジネスを正確に位置付ける」という「グローバルセンス」に基づき、先行する欧米トレンドを取り入れたコンセプトメイキングに定評があり、数々のヒット商品の開発に関わる。


ウェルネス総研レポートonline編集部

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