◎抹茶と健康研究会 第3回セミナー開く◎ 心理的ストレス、肺炎球菌、動体視力で新知見

抹茶の多彩な健康機能を追求する「抹茶と健康研究会」は、5月13日に第3回の公開セミナーをWEB開催した。2021年6月からの第2期としてあいや、伊藤園、共栄製茶、ネスレ日本の4社による共同運営体制で初の公開セミナーとなった。農研機構の山本(前田)万里氏による基調講演をはじめ、かねて進めてきた数々の助成研究から最新の報告として、心理的ストレス、肺炎球菌、動体視力に対する影響という、抹茶と健康に関する3つの新知見を発表し、古くから身近に実践できる健康習慣として知られてきた喫茶の有用性をさらに裏付けた。外国人観光客の受け入れ再開に向けた準備が進むなか、抹茶のおいしさと新たな健康機能がインバウンド需要再燃に結び付くことも期待される。

同会は2017年、京都府とネスレ日本による宇治抹茶の振興に関する連携協定を端緒に発足した研究・啓発団体。2021年から第2期の4社体制に入り、抹茶と健康の取組みを京都・宇治から全国区へと拡大し、さらなる活動の輪を広げた。これまでの公募研究助成活動として、14研究機関・のべ23の研究プロジェクトを支援。その成果は公開セミナーを通じて発表し、健康寿命の延伸やQOL改善に向けた有益な知見として普及啓発を進めてきた。

今回の第3回公開セミナーでは、座長にお茶の水大学名誉教授・近藤和雄氏を迎え行われた。最初に大東文化大学スポーツ・健康科学部健康科学科教授、ネスレ日本学術顧問の福島洋一氏が同会の概要や取り組みを紹介。次いで同会学術委員を務める農研機構食品研究部門エグゼクティブリサーチャーの山本(前田)万里氏が「抹茶のポテンシャル 健康効果へのさらなる期待」と題し、基調講演を行った。山本(前田)氏は、碾茶(てんちゃ)を粉にした緑茶という抹茶の定義や鎌倉時代から始まる抹茶の歴史、茶園に覆いをかけて栽培する生産方法、カテキン類やビタミンK、ルテイン等の含有成分の特徴などを解説。さらに過去2回の公開セミナーで発表された、肌の保湿(大阪大・永井克也氏)、腸内フローラ改善(府立大・井上亮氏)、社会心理的ストレスへの耐性(農研機構・物部真奈美氏)、骨格筋量の増加(府立大・青井 渉氏)、認知機能改善(東京大・久恒辰博氏)、血管新生保護・脳血管老化予防(神戸大学院・水谷健一氏)と研究成果の数々を紹介した。続いて新たな3題の助成研究について、それぞれ研究者から発表が行われた。

大東文化大学スポーツ・健康科学部健康科学科教授、ネスレ日本学術顧問の福島洋一氏

同会学術委員を務める農研機構食品研究部門エグゼクティブリサーチャーの山本(前田)万里氏

「抹茶の継続飲用と心理的ストレスへの影響」

農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門茶業研究領域 物部真奈美氏

抹茶は煎茶に比べテアニンやカフェイン、茶カテキン(EGCG)含量が高い。このうちテアニンは200mg/日の摂取でストレス軽減作用が報告されているが、テアニン含量がより少ない標準的な抹茶の場合での影響について調査した。マウスに「水」、「煎茶」、「抹茶」、「低カフェイン抹茶」の4群でそれぞれ2週間摂取させ、その後見知らぬマウスとの1対1の飼育(じわじわストレス)および高所の迷路(突発的ストレス)によるストレス負荷を与えたところ、「抹茶」摂取群が4群中で最も探索意欲が低下しないなどストレス耐性が高く、抹茶のカフェインが抹茶のストレス耐性を高める効果に寄与する可能性が示された。

次いで喫煙者13名が食事・喫煙制限なしで180mL/日の抹茶または対照のほうじ茶を2週間飲用した後、試験当日に禁煙とし(じわじわストレス)、その後、「これから試験を始めます」という号令(突発的ストレス)をかけるヒト試験を実施した。禁煙による喫煙衝動は抹茶摂取の有無に関係なく高く、比較的強度なストレスに反応する唾液中コルチゾールには有意差がみられなかった。しかしながら抹茶摂取群では、突発的な号令直後の唾液α-アミラーゼ活性がカフェイン摂取量に依存して高まり、1日のカフェイン摂取量が約200mgを超えるあたりから急性ストレスに対し交感神経が興奮しやすくなる傾向がみられた。一方、対照茶のほうじ茶摂取群では、カフェインの摂取量に依存したαアミラーゼ活性の上昇は認められなかった。

これらの結果から、抹茶の継続飲用は、テアニンが比較的少ない場合にはストレス耐性がカフェイン依存的に発揮され、他の抹茶成分との相乗作用により突発的な緊張に対してストレス防御システムが作動しやすくなる可能性が示唆された。

「抹茶による肺炎球菌の殺菌作用と毒素阻害作用」

新潟大学大学院 医歯学総合研究科 微生物感染症学分野 教授 寺尾 豊氏

日本人の死因第3位である肺炎(誤嚥性肺炎を含む)の主な原因細菌は肺炎球菌である。抗生物質の頻用が一因となり、年々抗生物質が効きにくい耐性菌が増加している。これまでに、国内の市中で分離された肺炎球菌のうち80%以上はマクロライド系抗生物質が奏効しないこと、同菌のPLY毒素(肺炎球菌の感染時にヒト赤血球やヒト免疫細胞を傷害する毒素)が肺炎重症化に重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。

今回の研究では飲用濃度の抹茶で耐性菌を含め肺炎球菌の殺菌が可能か、PLY毒素の細胞傷害作用を阻害できるかについて解析を試みた。その結果、加熱した抹茶は、飲用よりも低濃度で肺炎球菌(耐性菌を含む)に対し殺菌作用を示した。また加熱した抹茶には、PLYが毒力を発揮する際に必要な重合体形成を阻害し細胞毒性も妨げること、さらにこの効果は、煎茶に比べ抹茶に約5倍多く含まれるEGCGが主に担うことを確認。
加熱した抹茶は、飲用濃度において肺炎球菌への殺菌作用や毒素阻害作用を有することが明らかにした(同研究は2021年12月にAntibiotics誌に掲載済み)。

「抹茶が動体に対する視覚機能に与える効果」

大阪大学 蛋白質研究所分子発生学研究室 教授 古川 貴久氏

抹茶は茶カテキンやルテインなどの抗酸化物質を含み、身体や精神への様々な効果が注目されるが、視覚機能への効果は明らかになっていない。今回、抹茶や茶カテキンの視覚機能に与える影響を明らかにすべく、マウスの視運動応答(Optokinetic Response: OKR)を指標とした動体に対する視覚機能(動体視力)を測定。これに先立ち従来のOKR計測法に比べてより客観性や定量性に優れた、精密OKR 計測法を確立した。

この精密OKR計測法によって21ヵ月齢の高齢マウスのOKRを測定したところ、2ヵ月齢の若年マウスに比べ、OKRにおける複数の指標が有意に低下することが明らかとなった。このことから若年期以降の加齢による動体視力の低下が観察された。現在、精密OKR計測法を用いて、抹茶の若年および高齢マウスの動体視力への効果を検証している。

「FOOD STYLE 21」2022年6月号 良食体験トピックスより

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