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健康や医療の分野に革命を起こす免疫学の最前線

新型コロナウイルス拡大による健康意識の高まりなどで、より注目を集める “免疫”というワード。免疫とは何かと問われれば、「細菌やウイルスなどの『異物』を攻撃し、からだを守る防御システム」と答えることが多いのではないでしょうか。確かに、大雑把にみればこの考えも正しいかもしれません。しかし本書を読むと、そう単純な話ではないことに改めて気づかされます。

近年、科学は飛躍的に進展し、免疫学の根本の仕組みが明らかになりつつあります。その最前線がわかるのが『美しき免疫の力 人体の動的ネットワークを解き明かす』(ダニエル・M・デイヴィス著 久保尚子訳/NHK出版)です。免疫学に関わる多くの科学者たちの苦悩と喜びのストーリーをたどりながら、免疫システムとはいったい何なのか、どのような可能性を秘めているのか、今まで漠然としていた知識が面白いようにクリアになっていきます。

科学者にしか見ることができない「美の世界」を見ることができる

「芸術家は花を観賞し称賛するが、科学者は花をばらばらにするからこそ、うち震えるほどの感動と神秘に触れることができる」。ノーベル物理学賞受賞者のリチャード・ファインマン氏のこの有名なエピソードこそ、著者ダニエル・M・デイヴィス氏が幼い頃から科学者を志していた理由だといいます。デイヴィス氏は、英国マンチェスター大学免疫学教授で、超解像顕微鏡を用いた免疫学の研究の第一線で活躍する世界的科学者。同時に優れたストーリーテラーともいわれています。そんなデイヴィス氏が織りなす免疫の物語は、世界の科学者たちによって明らかにされてきた「美の世界」で溢れています。免疫学を追求する科学者たちの情熱に触れながら、最新の知見を学べるのも本書の魅力の一つでしょう。

「免疫」の概念は目まぐるしく変化している

免疫システムは『体の一部ではないもの』を見つけて攻撃するシステムなのに、なぜは体の一部ではない食物には反応しないのか。もっといえば、なぜ腸内に生息する友好的な細菌には手を出さず、病気の原因となる危険な細菌だけに反応するのか。実は今では当たり前の認識ですが、「人体は体の一部ではない「異物」だからといって、必ずしも免疫反応を引き起こすわけではない」という重大な事実がはっきりと認識されるようになったのは実はごく最近で、1989年のこと。しかもこのことが深く理解されるようになるまでには何年もかかり、その複雑なシステムの解明に多くの科学者が果敢に挑み続け、発見を積み重ね、科学的理解を大きく飛躍させてきました。そして今では、「ストレスや加齢、時間帯や精神状態によって免疫システムの活性は変動している」という認識がスタンダードとなり、21世紀の医療の現場に革命を起こそうとしています。

健康や医療の分野に数々の革命を起こしてきた免疫学。現在も、樹状細胞の多様性やサイトカインによるがん免疫療法、抗TNF療法などといった免疫に関わるさまざまな研究が続けられています。今後、複雑な免疫システムの謎をひとつ一つ解明することができれば、私たちの健康と幸せに大きな変化が起こることは間違いないでしょう。

ウェルネス・ヘルスケアの未来を考えるには、まず免疫学の現在地を知ることから。今、免疫学はどこまで進んでいるのか。本書には、ストレスや加齢と免疫の相互関係やワクチンの可能性、自己免疫疾患やがんとの関係など、免疫学の最前線が紹介されています。自分や家族が感染症に罹患したとき、自己免疫疾患やがんを患ったとき……自分の体内でいったい何が起こっているのかを正しく理解するためにも、読んでおくべき一冊ではないでしょうか。

【書籍情報】
『美しき免疫の力 人体の動的ネットワークを解き明かす』(ダニエル・M・デイヴィス著 久保尚子訳/NHK出版)


ウェルネス総研レポートonline編集部

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