
【セミナーレポート】『抗疲労∞抗老化』啓発プロジェクト発足セミナー

講演①「抗老化を実現する食と栄養」
次に、日本抗加齢医学会評議員であり、アンチエイジングを専門とする満尾クリニック院長の医学博士 満尾 正(みつお ただし)先生が登壇。超高齢時代に健康で長寿を迎えるための食や老けない食べ方のコツ、空腹感の意味、具体的な食と栄養の効果、食生活のポイントについて解説しました。
超高齢時代で不足しがちな栄養素

まず、満尾先生が日頃、キレーション療法やサプリメントなどを用いた外来診療のなかで目にする、高齢者で不足しがちな栄養素について話しました。なかでも、ビタミンD、マグネシウム、そして亜鉛は、お手本のような食事をしていても充足が難しいと言われる栄養素です。とくにビタミンDは、約8割の高齢者が欠乏ないし不足状態とのこと。また、マグネシウムをはじめとするミネラル類は、ストレスによって体外に排出されやすいと説明しました。(ビタミンD濃度とは 25(OH)D3濃度であり、欠乏は < 20 ng/mL、不足は < 30 ng/mL )
日本における100歳以上の高齢者数と平均寿命の推移は増え続けており、2023年時点で90歳を迎える人は女性で2人に1人、男性では4人に1人と言われています。そこで、いかに健康で長寿を迎えるかが、高齢時代を乗り切る大切なテーマであると述べました。
かつてのブルーゾーン、沖縄の今

長寿地域と言われるブルーゾーンに沖縄県が含まれていたのは、過去の話です。一般的なブルーゾーンに共通する、野菜中心で腹八分目といった食に関する習慣は、戦後の沖縄県では見られなくなっていたことや、この変化による平均寿命の推移についても説明します。1980年代には男女ともに47都道府県の中で1位であった沖縄県の平均寿命は、2015年には36位(男性)と7位(女性)、2020年には43位(男性)と11位(女性)まで下がりました。
この背景には、沖縄県に日本の他地域よりもいち早くファストフードの文化が流れ込み、それまでの食生活が激変したことが大きな要因であると語ります。
PoAを握る3つの柱「心・食・動」

昨今、話題を集めるPoA(Pace Of Aging)も食と非常にリンクしており、アンチエイジングを専門とする立場から、老化をくい止める3つの柱は「心(メンタル)・食・動(運動)」にあると述べました。また、睡眠に関しては4つ目の柱として捉えるか、運動に含めて考えるとのこと。これらをいかにバランスよく維持するかが、老化のスピードを遅くすることに重要であると言います。そして、「食」の働きの3本柱は、人間の身体を「作る・動かす・守る」ことを念頭に置いて、日々の食生活を送ることが大切であると説明しました。
老けない食べ方のコツと、空腹の意味

老けない食べ方のコツではまず、空腹が持つ意味を理解することです。空腹というのは私たちの健康にとって非常に大事なコンディションであり、様々なホルモンも分泌されるタイミングで、体内に食事を取り入れる状態を教えてくれます。研究では、肝臓において解毒の中心となる胆汁は、空腹時の方が多く産生されることも分かっています。また、オートファジーは空腹で活性化することが知られ、不要になったタンパク質などを分解して排出に結びつける重要な機能です。
こうしたメカニズムが分かる大分前から少食はよいと言われており、江戸時代後期に人相見の水野南北が、「どんなに人相が悪い人でも、食事を慎んでいればその人の運命は良くなる」という話を参考例として紹介しました。
具体的な食品と栄養素、食生活のポイント

さらに詳しく、老けない食べ方のコツとして、具体的な食品を挙げて解説しました。小型で丸ごと食べられる魚類や皮ごと食べられる野菜、キノコや納豆など積極的に食べた方がよい食品から、白米やうどんなど食べ過ぎに注意が必要な食品についても説明しました。
最後に、健康効果の高い食品として推奨される5つの食材(ニンニク、生姜、玉ねぎ、ブロッコリー、卵)にはすべて解毒作用のある硫黄が含まれていることや、これらの頭文字をとった「GGOBE」について紹介し、ニンニクが持つ成分に今注目が集まっていると締めくくりました。