機能性表示食品:制度、評価、安全性確保のために

食の安全研究センターは6月12日、「機能性表示食品:制度、機能性評価と安全性確保~正しく知って正しく使う~」をテーマに東京大学農学部フードサイエンス棟中島董一郎記念ホールでシンポジウムを開催した。

シンポジウムは、食品の機能性や安全性に関する専門家5人がそれぞれの立場から講演し、冒頭で東京大学大学院農学生命科学研究科附属食の安全研究センター長の平山和宏氏が「機能性表示食品と保健機能食品制度」と題し、消費者が正しく知り、賢く利用するための正しい情報発信が必要であると話した。機能性表示食品の解説では、販売前に安全性および機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届けられた食品であり、企業の責任において、特定の保健目的が科学的根拠に基づいて機能性を表示できる点、治療や予防を目的としたものではない点を強調。多く摂取すれば多くの効果が得られるものではなく、過剰な摂取が健康に害を及ぼす場合も考えられると話した。

また東京大学大学院農学生命科学研究科附属食の安全研究センター教授の八村敏志氏は、「機能性表示食品の機能性を示す」について、専門である食品における免疫調節の研究分野から、「免疫機能維持」や「目鼻の不快感の軽減」「脂肪の低減」などを例に、作用機序や機能性の科学的根拠を解説。届け出された情報が消費者庁のウェブサイトで確認できる点などを紹介した。

続いて、同大学大学院農学生命科学研究科附属食の安全研究センター教授の喜田聡氏は、「ELSI の観点から食品の機能と安全を再考する」と題し、現在の研究プロジェクトである「食の心理メカニズムを司る食嗜好性変容制御基盤の解明」について紹介。ELSI が意味する「倫理的・法的・社会的な課題」の観点から食品の機能性とその安全性についてこれから起こりうる食の問題を予測することが大事であると述べた。

また星薬科大学薬学部教授の穐山浩氏は「機能性表示食品の安全性評価」について、令和6年通知に沿った機能性表示食品の安全性確保について概説。その流れを説明する中で、令和2年の食品衛生法改正(第8条追加)に触れた。コレウス・フォルスコリー、ドオウレン、プエラリア・ミリフィカ、ブラックコホシュの4つが、注意を要する「指定成分」とされ、これらを含有する健康食品の販売は認められているものの、健康被害があったときには、必ず届け出ることが義務化された。また同時に指定成分等含有食品の製造または加工を行う場合の基準として、適正製造規範(GMP)が定められ、制度化された。食品が医薬品と異なる点として、医薬品が副作用よりも有効性に重点が置かれているのに対し、食品は有効性よりも安全性が重要視されると説明。また「安全な食品があるのではなく、安全な量がある」とし、食品添加物であっても、機能性表示食品であっても度を越して食べれば有害作用があるとした。さらに、食経験だけではなく、摂取量、摂取形状、摂取頻度などが大事であると述べた。

また東京農業大学客員教授の清水誠氏は、「機能性表示食品の課題と未来」と題し、食品の機能性研究においては、作用機序の解明が大事であり、機能性表示食品においても科学的根拠、メカニズムが明確であることが大事であると強調した。また、以前トクホの審査に関わったときの経験を紹介し、健康強調表示に関して当時は主に①機能を示す成分とその性質②作用メカニズム③有効性の3つに焦点を置いていたが、ヒト試験の方法については基準がなく評価法は定まっていなかった。トクホの審査基準委員会がその後発足し、試験方法や摂取期間、被験者、評価指標、統計解析法など、具体的な項目が決定され、現在のトクホ商品のクオリティーに至っていると語った。

「FOOD STYLE 21」2024年7月号 F’s eyeより

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