疾病リスク低減トクホの個別評価第1号

個別評価型の疾病リスク低減トクホの認可第1号が誕生し、大きな注目を集めている。マルハニチロは2月1日、疾病リスク低減トクホ商品「DHA入りリサーラω(オメガ)」(魚肉ソーセージ)を新発売した。疾病リスク低減トクホの個別評価の許可第1号である。また、心血管疾患リスク低減の可能性がある特定保健用食品は日本初であり、今後も疾病リスク低減トクホに挑戦する企業が出てくる期待感がある。

心血管疾患とは心臓や血管に起こる病気の総称で、がんに次いで日本人の死因で2番目に多い疾患。同疾患による日本人の死亡者数は増加傾向にある中、同社は通常の食生活の中で心血管疾患リスクを低減する商品「DHA入りリサーラω」を新発売した。許可された表示は「本品はドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)を豊富に含みます。日頃の運動とDHAおよびEPAを含む健康的な食事は、将来、心血管疾患になるリスクを低減する可能性があります。【1日当たり摂取目安量】1本(50g)を目安にお召し上がり下さい」となった。同品はDHAを850mg、EPAを200mg含有する。申請の中で、自社商品を使用した複数のヒト臨床試験を実施したことや、約40報の論文も申請し総合的な判断で結論に至ったと推測する。同社は以前からトクホの魚肉ソーセージ「DHA入りリサーラ」を市場展開しており、血中中性脂肪を下げる効果が期待できる製品として販売している。こちらもDHA850mg、EPA200mgと「DHA入りリサーラω」と同じ量であるが、同社によれば製品の中身が違うとのことである。

同社では春季新商品発表会を1月半ばに開催し、疾病リスク低減トクホとして「DHA入りリサーラω」を発表した。その際に日本健康・栄養食品協会の矢島鉄也理事長が登壇し、「個別評価による初めての疾病リスク低減表示許可」と題して登壇し、疾病リスク低減表示への同協会による取組み支援や取得することの意義、今後トクホ制度と機能性表示制度をどのような制度にすべきか等について講演し注目を集めた。

これまで疾病リスク低減表示は、科学的根拠が医学的・栄養学的に広く認められ確立しているものとして、「カルシウムと骨粗鬆症」「葉酸と胎児の神経管閉鎖障害」「う蝕」が認められている。これらは個別評価と比較して申請しやすい面がある。一方、個別評価の申請も法律的には申請が可能であったが、申請ガイダンスのようなものもなく、非常にハードルが高かった。そこで、日健栄協は個別評価の疾病リスク低減表示に挑戦する事業者を公募し、勉強会を重ねて、消費者庁とも協議を行い、消費者委員会の審議も経て、今回の場合は約1年弱で申請から販売まで漕ぎ着けた。これまでの経緯は、消費者庁が昨年2月に消費者委員会に個別評価案件の疾病リスク低減表示で3製品を諮問した。3月には消費者委員会で疾病リスク低減表示の基本的な“考え方” を共有するための部会および調査会の合同会議を開き議論が行われた。4月には消費者庁が食安委に3製品のうち1製品について疾病リスク低減表示製品として健康影響評価を依頼している。消費者委員会は10月2日、内閣総理大臣から諮問されていた、「DHA入りリサーラソーセージω」(マルハニチロ)を疾病リスク低減表示トクホとして認めることと差し支えないと答申した。特定保健用食品制度が1991年に施行されてから32年が経過した。今、トクホ市場が伸び悩む中、トクホの疾病リスク低減表示の個別評価第1号が誕生したことは、業界にとって画期的なことである。

「FOOD STYLE 21」2024年2月号 F’s eyeより

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