◎オートファジーで吉森保氏が講演◎
龍泉堂第6回学術セミナー盛況に開催
PQQの下肢筋力・握力の改善で国内臨床試験

龍泉堂(東京都豊島区・塩島由晃代表取締役)は9月13日に都内池袋のホテルメトロポリタンで「株式会社龍泉堂第6回学術セミナー」を開催し、製薬・サプリメントメーカーやメディア関係者など125人が参加し、セミナー後の懇親会も含めきわめて盛況となった。招待講演は吉森保氏(大阪大学大学院・生命機能研究科・医学系研究科教授)が務め、オートファジーのこれまでの知見や最近の取り組みについて解説。また龍泉堂からはピロロキノリンキノン二ナトリウム塩「ニーモPQQ」の新たな国内臨床試験、“リバランス”機能で注目されるイワベンケイエキス「ロディオライフ」の紹介などが行われた。

講演「健康長寿実現の鍵を握る細胞組織・オートファジー」

吉森 保 氏

吉森保氏は、2016年にノーベル医学生理学賞を受賞した大隈良典氏(東京工業大学栄誉教授)の元で、哺乳類のオートファジー研究に携わってきた。 近年オートファジーへの関心が一般レベルでも高まる一方、ダイエット法の一種のように捉える向きもある。実際そうではなく、人体に37兆個ある細胞1つ1つの内側に存在する、広大な宇宙(社会)のように複雑精緻な仕組みのなかでミトコンドリア、ゴルジ体、小胞体、数万種類のたんぱく質がそれぞれ機能を分担しており、これらの物質を回収・分解しリサイクルするシステムがオートファジーであると説明。具体的には細胞内にオートファゴソームと呼ばれる構造が形成され、他の構造やタンパク質を包み込み、細胞の消化器官であるリゾソームに運び込んで分解している。その役割は長く謎となっていたが、大隅栄誉教授による酵母オートファジーの分子機構解明がブレイクスルーとなり、一気に研究が進んだ。オートファジーの主要な機能は、①栄養飢餓時における細胞成分分解による栄養源確保、②常に細胞成分を少しずつ分解することによる細胞内部の新陳代謝、③細胞内部に現れた有害物の選択的な隔離除去である。動物試験などを通じ、オートファジーの仕組みを停止することが様々な疾患につながることも明らかにした。その一方、オートファジーの機能低下を促すタンパク質Rubiconを抑制することで、加齢に伴うオートファジーの低下を阻止し、寿命の延伸や加齢性疾患の抑制も見出した。これらの知見から吉森氏は、老化は阻止できるものであり、老化や死は不可侵なものではないと訴えた。

さらにこれまでのアンチエイジングと異なる、細胞の機能を回復させるサプリメント開発への取り組みや、オートファジー研究では論文被引用数が世界でもダントツであり世界をリードしていること、2016年に大隈良典氏がノーベル賞を受賞した際のスウエーデンでのエピソード、最近のYou Tubeでの対談など、多彩な話題についてユーモアを交えて話した。

ストレス社会の光明となるか「ロディオライフ(イワベンケイエキス)

龍泉堂開発室の高橋潤氏は、今年上市したイワベンケイ由来のエキス素材「Rhodiolife(ロディオライフ)」について、抗疲労・抗ストレスと共に注目される“リバランス” 機能について、海外での臨床研究を中心に紹介した。

イワベンケイ(学名:Rhodiola rosea)は、北半球の亜寒帯地域や高山に分布する多年草。その根は北欧やロシア、中国、チベットなどで伝統的な民間療法で長年用いられてきた。シベリア産イワベンケイの根から独自製法で抽出したエキスである「ロディオライフ」は、有効成分としてサリドロシドやロザビン類を含有する。その機能は①神経ペプチドの一種・NPYの発現亢進とそれに伴う抗ストレス作用と②HSP(ヒートショックプロテイン)の発現によるROS(活性酸素種)低減とGR(グルタチオンレクターゼ)の機能維持とする。海外の複数の臨床研究からは、精神疲労や運動後の炎症を改善し、日常的に起こりうる一時的な心身の乱れを整える“リバランス”機能と抗疲労、抗ストレス作用が期待できると話した。

「ピロロキノリンキノンニナトリウム塩(mnemo PQQ®)の筋力及び身体機能への有効性」

塩島 由晃 氏

龍泉堂の代表取締役・塩島由晃氏は、毎年恒例となった自社素材の未公開情報を解禁。今回は「ニーモPQQ」のフレイル・サルコペニア対策素材としての利用に向けた、国内臨床研究の概要を初公開した。野菜や果実、納豆など多くの食品や母乳に含有する天然の抗酸化物質であるPQQは、酸化還元酵素(脱水素酵素)の補酵素として、ヒトを含めた哺乳動物の健康維持に多様な役割を果たすことが近年明らかになっている。筋力や身体機能への寄与については、細胞中の正常なミトコンドリアの増加と活性化を通じた骨格筋の機能低下予防や骨格筋再生、また遺伝子の転写を制御する物質であるPGC-1αを活性化による筋肉タンパク質の分解抑制や筋肉量の低下抑制など複合的な作用が考えられている。

同社は、微生物発酵由来でピロロキノリンキノン二ナトリウム塩純度99%の粉末品「ニーモPQQ」を用いた新たな国内臨床試験として、筋力や身体機能に対する有効性をランダム化二重盲検プラセボ対照試験(RCT)で検討した。試験では、健康な日本人男女62名(平均年齢約54歳)を「ニーモPQQ」21.5mg/日摂取群とプラセボ群に分け、それぞれ12週間摂取し評価した。その結果、主要評価項目の下肢進展筋力および副次評価項目のうち握力について、摂取群ではプラセボ群に較べ有意な改善がみられた。また副次評価項目の10mシャトルウォーキングと6分間ウォーキング、10分間ウォーキングの各テストでもプラセボ群に比べ大幅な改善がみられた。

この結果から塩島氏は、「ニーモPQQ」が筋力・身体(運動)機能の向上・維持に役立ち、フレイルやサルコペニアなどの予防が期待できると述べ、今後機能性表示食品への対応化も目指すとした。

「FOOD STYLE 21」2023年10月号 良食体健トピックスより

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