◎健康・加齢・美容における毛細血管の役割を解説◎毛細血管ラボ・社会実装コンソーシアム
第3回研究会・オープンセミナー開催 早稲田大 矢澤氏、国衛研 國澤氏が講演

毛細血管ラボ・社会実装コンソーシアム〈主催:近畿バイオインダストリー振興会議〉は1月12日、2022年度第3回研究会・オープンセミナーをWEB開催した。毛細血管の劣化と様々な生活習慣病や加齢性疾患との関連が明らかとなるなか、同会が取り組む毛細血管の状態を画像化・測定することで健康指標としての活用が注目されている。今回は早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 部門長の矢澤一良氏、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所ワクチン・アジュバント研究センターセンター長の國澤純氏が登壇し、健康・加齢・美容における毛細血管の役割に関して解説した。

毛細血管ラボ・社会実装コンソーシアムは2021年8月1日に設立されたコンソーシアム。毛細血管計測画像を用いて、会員の研究・ビジネスの発展に貢献し、かつ、毛細血管計測画像を健康指標として確立することや、その社会実装を行うために活動を進めている。毛細血管の劣化が多くの加齢性疾患につながることを示してきた大阪大学・髙倉伸幸教授を会長に迎え、また指先の毛細血 管画像解析と緑内障などの疾患との相関性を明らかとした東北大学大学院・中澤徹教授らが参画するなど、医療をはじめ、食や運動を通じた疾病予防も含めた幅広い活動を進めている。3回目となる今回のオープンセミナーでは、大学や研究機関、企業の研究者ら約200名が参加し、盛況となった。

講演①「血行促進と予防医学」

早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構規範科学総合研究所
ヘルスフード科学部門 部門長
矢澤 一良 氏

矢澤一良氏は、まず近年注目される「Well-being」を支えるためには食育が大切であり、食育の基本であるバランスガイドなどを提示した。また中国医学には内科医や 外科医のほか、食医という医者分類があり、漢方生薬を用いて未病状態を治す“予防医学”が定着していたと解説した。加えて同氏は、予防医学に関連して、フレイルからなる高齢者の負の連鎖についても言及。一度フレイルに陥ると、基礎代謝やエネルギー消費、食欲の低下などから慢性的な低栄養を引き起こし、さらに筋肉量が減少して多様なフレイルを巻き起こす可能性があると指摘し、自身の健康状態について早めに気づくことが大事だと話した。また血流は、栄養素や酸素の供給、代謝 物運搬・排出などの役割を持ち、生体恒常性維持や感染・フレイル予防、疾患改善・治療につながるため、予防医学とQOL改善には欠かせないと述べた。なかでも毛細血管については、栄養と酸素を入れ老廃物と二酸化炭素を出す働きがあり、劣化が起きると血管がゴースト化し、さらなる老化の進行につながるとした。

講演②「 健康社会の実現に向けた腸内環境の見える化と血管・毛細血管との関連可能性」

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所ワクチン・ アジュバント研究センター
センター長
國澤 純 氏

國澤純氏は、腸は体内における最大の免疫臓器であり、腸管局所だけでなく、体全体の免疫バランスに影響していると解説した。例えばマウスにアマニ油を摂取させた場合、アレルギー性下痢の発症が抑制されるなど、アレルギー症状が軽減するデータも紹介。大豆油と比較しても発症率は大きな差があり、腸管免疫の制御における食用油の種類や質が重要であることが分かっているとした。さらに腸管組織では、亜麻仁油を摂取することで抗アレルギー性脂質代謝物が産生されているが、脂肪酸からの代謝物質には大きな個人差があることも指摘した。それらを踏まえ同氏が活用しているのが、医薬基盤・健康・栄養研究所で研究を進めている、健常 人を対象とした9,000人以上のマイクロバイオームデータベースだ。同データベースを活用することで、健康にいいと言われる食品の摂取について、食品の健康効果を予測する層別化/個別化AIの開発や、効果が期待できない人への代替法の提案につながると述べた。

「FOOD STYLE 21」2023年2月号 良食体健トピックスより


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