◎GAPDH、骨格筋への影響など最新知見◎
第25回酸化ストレス研究会、京都で開催 抗糖化を栄養指導など活用促す

糖化ストレス研究会(米井嘉一理事長)は9月10日、京都市の同志社大学今出川キャンパスで第25回講演会を開催した。初の試みとして管理栄養士向けプログラムを実施し、食後高血糖時に過剰生成されるアルデヒドが健康や美容に及ぼす影響とその対策としてのレシピや食生活などについて提言を行った。特別講演では米井氏が糖化ストレスを通じた認知症対策に関する研究成果を報告したほか、マンゴスチン抽出物やGAPDH、骨格筋の糖化など注目度の高い話題が集まった。

初の管理栄養士向けプログラムを開講

同志社大学・アンチエイジングリサーチセンター/糖化ストレス研究センター教授の米井嘉一氏が主宰する糖化ストレス研究会は、グルコースに微量に含まれるアルデヒド型グルコースが食後高血糖時に様々なアルデヒドを過剰に生成し、これらがタンパク質を変化させて生じるカルボニル化タンパク質や終末糖化生成物(AGEs)がさまざまな加齢性疾患の原因になるという、糖化ストレスとその対策を研究する団体。今回の講演テーマは「糖化ストレス研究会は本気です!」とし、研究成果のさらなる社会での活用を促すべく、前半部を管理栄養士向けプログラムとして編成した。会場・WEB合わせて100人を超える参加者が集まった。

管理栄養士向けプログラムでは、まず同会事務局の辻久美子氏が糖化ストレスの基本的なメカニズムや、その対策が糖尿病の合併症予防や健常者の疾病リスク低減に有用であり、生活習慣の改善と時間栄養学の考え方を踏まえた朝食・睡眠など重要性などを説明。次いで管理栄養士でアンサンテの代表取締役・島田淳子氏が、1日350g必要という野菜摂取量を「見える化」するデバイスの活用と抗糖化作用のあるモロヘイヤやごぼう、ほうれんそう、青ねぎなどの野菜によるレシピ提案、具体的な料理の提案からうまく行動変容に繋げるための説明の仕方や表現などのポイントを解説した。美容家で弥勒寺子屋・サン・ロータス代表の上田祥子氏は、美容業界で“黄ぐすみ”など肌の糖化対策への関心が高まっているとし、普段の食やライフスタイルからの対策について、米井氏らとの討論を交えて個々に紹介した。

Aβの糖化予防が認知症対策に

後半部の講演では、米井氏が認知症の原因となるアミロイドβ(Aβ)を貪食する免疫担当細胞・ミクログリア
が糖化修飾されると貪食能が低下することを細胞試験で確認。さらに睡眠時に分泌されるメラトニンが貪食を促進することも明らかにし、Aβの糖化を抑制できる食習慣と睡眠の質向上が認知症予防につながると述べた。日本新薬・前嶋一宏氏は、糖化ケアで初の機能性表示に対応したマンゴスチン抽出物由来「マンゴスティア」を紹介。含有するロダンテノンBがメイラード反応阻害活性を有しAGEsの生成阻害を通じて皮膚の粘弾性や水分値が改善し、”肌の潤い保持”でのヘルスクレームに対応した届出資料や受理までの流れなどを詳しく説明した。

前嶋一宏氏

佐藤健司氏

江川達郎氏

京都大学の佐藤健司氏は、近年高感度定量法が開発されたことで解糖系酵素GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素)と短鎖アルデヒドの生成の関係が明らかとなってきたと述べ、またモデルマウス肝臓において高脂肪食摂取で減少するGAPDHが、クロレラ熱水抽出物およびフェニチルアミンの経口投与で回復し、それに伴い肝臓中の短鎖アルデヒドも生成抑制されることで肝機能保護に寄与する可能性があるなど、GAPDHに関わる複数の知見を紹介した。

京都大学の江川達郎氏は、糖化ストレスの骨格筋への影響を検討。AGEsを投与したマウスでは筋力トレーニング中に筋細胞が崩壊する現象を見出し、その原因として、細胞膜や細胞接着に関わるタンパク質群が糖化により脆弱化などを起こすことを明らかにした。今後、糖化ストレス対策を通じた高齢者のフレイル対策などを検討していく。

このほか、会場内のポスターセッションでは抗糖化が期待できる食材やMNMに関する機能性研究などが幅広く発表され、多くの口演で盛況を博した。

「FOOD STYLE 21」2022年10月号 良食体健トピックスより


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