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04認知症コラム

認知症でトイレばかり行くのはよくあること?
その理由やケアの工夫を紹介

2026.01.30

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認知症の方がトイレばかり行く原因は、身体的な頻尿だけでなく、認知機能の低下による混乱や不安、薬の影響など複数の要因が関係しています。大切なのは、適切な声掛けや環境調整で本人の精神的負担を和らげることです。本記事では、認知症の人がトイレばかり行く理由と、原因別の対策・ケア方法、生活のなかでできる工夫について解説します。

認知症の人がトイレばかり行く4つの理由

認知症の方がトイレに何度も行こうとする背景には、いくつかの理由が存在していると考えられます。ここでは、その代表的な原因について解説します。

身体的な要因による頻尿 認知機能の低下による混乱 薬の影響による排尿促進 心理的な不安や習慣による訴え行動

認知症の人がトイレばかり行く4つの理由 イメージ

身体的な要因による頻尿

まず考えられるのが、身体的な要因によるものです。加齢や疾患の影響で膀胱の機能が低下すると、尿をためられる量が減り、わずかな刺激でも頻繁に尿意を感じやすくなります。

また、日常生活に支障が出るほど頻度が多い場合は、過活動膀胱や前立腺肥大などの疾患が隠れている可能性もあるため注意が必要です。

過活動膀胱
膀胱が過敏になることで尿が溜まっていなくても強烈な尿意を引き起こす
前立腺肥大
男性特有のもので尿道を圧迫することで尿が出にくくなり残尿感が残る

認知機能の低下による混乱

認知症による認知機能の低下が要因になっているケースも多いです。記憶障害が進むと、直前にトイレへ行ったことを忘れてしまうことがあります。また、見当識障害によって昼と夜の感覚がわからなくなり、何度も起きてトイレへ行くといった行動が見られる場合もあります。

記憶障害について詳しくはこちら
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薬の影響による排尿促進

服用する薬が影響しているケースも多いです。認知症の治療薬のなかには、排尿をコントロールする神経系に作用するものもあり、頻尿につながるケースがあります。また、睡眠薬や抗不安薬の副作用によって必要以上にトイレへ行きたくなる症状が現れることもあります。

心理的な不安や習慣による訴え行動

不安や孤独感、退屈といった心理的な理由から、認知症の方が「トイレに行きたい」と繰り返し訴えることもあります。
「安心できる場所」としてトイレに向かうことが習慣化することもあり、本人の心の状態が行動につながっているケースも少なくありません。

認知症の人がトイレばかり行くことで起こりうるリスク

認知症の方がトイレに頻繁に行く行動は、本人だけでなく周囲にもさまざまな影響を及ぼすことがあります。ここでは、起こりうるリスクについてみていきましょう。

転倒によるけが

認知症の方がトイレへ頻繁に移動すると転倒のリスクが高まります。認知症による判断力の低下から、段差や滑りやすい床を十分に注意できず、危険な動き方をしてしまうことも少なくありません。また、睡眠薬を内服していることでふらつきが出て転倒してしまうこともあります。

高齢者の場合、転倒は骨折や頭部外傷など重篤なけがにつながる可能性があります。とくに、夜間や足元が不安定な場面では注意が必要です。

睡眠不足や生活リズムの乱れ

夜間に何度もトイレへ行くと睡眠が断続的になり、十分な休息が取りにくくなります。その結果、昼夜逆転や落ち着きがない状態になりやすく、日中の活動や生活リズムへの影響も避けられません。

さらに、睡眠の質が低下すると認知機能の維持にも悪影響を及ぼす可能性があり、症状の進行を早める要因にもなりえます。

認知症と睡眠不足の関係について詳しくはこちら

精神的なストレスの増加

トイレに何度も行くという行動自体が、自分でよく理解できなくなって不安や焦りを生むこともあります。また、思うように排泄できないもどかしさが焦りや苛立ちにつながることも多いです。

さらに、家族や介助者から叱られたり責められたりすることで精神的なショックを受け、ストレスが増す場合もあります。

介護者の負担の増加

認知症の方が頻繁にトイレに行くと、介護者は何度も付き添う必要があり、大きな負担となります。とくに夜間は何度も起きることになり、睡眠不足や生活リズムの乱れから身体的・精神的な疲労につながります。

「またか」という気持ちが積み重なると、介護者と本人の関係性に影響を及ぼすこともあり、長期的な介護の質にも影響しかねません。

原因別
認知症でトイレばかり
行く場合のケアや対応の仕方

認知症の方がトイレに頻繁に行く場合、原因に応じた適切な対応を取ることが大切です。ここでは、日常生活で実践できる具体的なケアや工夫の方法をご紹介します。

医療機関での診断を受ける

身体的な要因の場合、頻尿の背景に病気が隠れている可能性があります。とくに、過活動膀胱や前立腺肥大などは専門的な治療が必要です。

まずは泌尿器科や内科などの医療機関で医師の診察を受け、頻尿の原因を明確にすることが大切です。早期に原因を特定することで、適切な治療やケアに結びつけやすくなります。

トイレの場所をわかりやすくする

認知症の方は空間認識能力や記憶力の低下により、トイレの場所がわからなくなることがあります。そのため、たどり着けずに不安になったり、何度も探しに行くなどの行動が見られたりすることも少なくありません。

こうした混乱を防ぐために、ドアに大きく「トイレ」と表示する、床に誘導ラインを貼るなど、視覚的にわかりやすくする工夫が有効です。環境を整えることで、本人の不安が軽減され、トイレへの移動もスムーズになります。

記録をつけてパターンを把握する

トイレの回数や尿量を記録するのも有効な対策です。3日ほど継続して記録すれば排泄パターンを把握できるようになり、飲水量をコントロールするなどの対応ができます。

また、計量カップで尿量を測り、尿漏れの有無も併せて記録しておくとよいでしょう。本人もトイレに行った時間や回数を客観的に確認でき、「トイレに行きすぎている」ことを認識しやすくなります。

記入する内容

排尿時刻 尿量 飲水量と時間 尿失禁の有無

利尿作用のある薬の服用を見直す

降圧剤や利尿剤など、一部の薬には排尿を促す作用があり、認知症の方の頻繁なトイレ行動に影響することがあります。そのため、飲み物の種類や摂取タイミング、服薬内容について医師や薬剤師と相談し、必要に応じて調整することが大切です。

また、利尿作用の少ない薬への変更が可能であれば、代替となる薬を検討することでトイレの回数を減らせる場合があります。

声かけや付き添いで安心感を与える

認知症の方が安心して排泄できる環境を整えるには、優しく声をかけたり、必要に応じて付き添ったりすることが大切です。「またトイレ?」など否定的な言い方をすると、本人の不安や混乱が強まる可能性があります。

逆に、本人の気持ちに寄り添い、「大丈夫ですよ」と伝えるだけでも安心感を与えることができます。こうした声かけや付き添いは、頻繁なトイレ行動に対する心理的な負担を軽減するうえで非常に有効です。

トイレ以外の安心できる居場所をつくる

認知症の方にとって、トイレが「安心できる場所」になっている場合、そこに行くこと自体が目的となってしまうことがあります。こうしたケースでは、トイレ以外にも落ち着ける居場所を用意し、トイレへの執着を和らげることが必要です。

たとえば、お気に入りの椅子や、慣れ親しんだ座布団があるリラックススペースなど、本人が安心できる環境を整え、心理的な安定を促すことでトイレの頻回行動を減らしましょう。

日常生活でできるトイレの回数を
減らすための3つの工夫

認知症の方の頻繁なトイレ行動は、日常生活の工夫である程度軽減できます。ここでは、トイレの回数を減らすために実践できる具体的な方法をみていきましょう。

紙おむつを着用する ポータブルトイレを使う 就寝前の水分・カフェインを控える

日常生活でできるトイレの回数を減らすための3つの工夫 イメージ

紙おむつを着用する

トイレに間に合わず漏らしてしまう場合には、紙おむつの使用が有効です。万が一間に合わなくてもベッドや衣類を汚す心配がなく、介護する側の負担も軽減できます。

使用に抵抗がある場合は、夜間だけでも構いません。また、使用時間や形状を考慮して、本人に合ったタイプのおむつを選ぶことも大切です。

ポータブルトイレを使う

ポータブルトイレとは、持ち運んで使える簡易トイレのことです。寝室など身近な場所に設置しておくことで、夜間に遠くのトイレまで歩く必要がなくなり、本人も安心して使用できます。

とくに足腰が弱い方や歩行が困難な場合に役立ち、転倒リスクの軽減にもつながります。

就寝前の水分・カフェインを控える

就寝前に利尿作用のある飲み物を摂ると、夜間にトイレに行きたくなる原因となるため、飲む量や時間に注意することが大切です。とくに、就寝前の摂取はできるだけ避けましょう。

ただし、脱水症状を防ぐため、水やお湯を日中にこまめに飲む習慣を意識することも重要です。

就寝前に控えたい飲み物の例
コーヒー 緑茶 アルコール飲料

水分不足と認知症の関係について詳しくはこちら

認知症の方がトイレばかり行くことに関するよくある質問

認知症の方がトイレに頻繁に行くと、介護の場面でさまざまな影響が出て困るケースは多いでしょう。よくある質問とその回答をまとめましたので参考にしてください。

認知症でトイレばかり行くときにはどのような声掛けが適切? トイレへの移動中に介護者が気をつけるべきリスクは何ですか? 頻尿の症状が認知症に与える影響はどのようなものですか?

Q認知症でトイレばかり行くときには
どのような声掛けが適切?

否定的な言葉を避け、ゆっくりかつ簡潔で穏やかな口調で話しかけることが大切です。「大丈夫ですよ」など安心できる言葉を使い、相手に寄り添う姿勢で接することで、不安を緩和しストレスを軽減できます。

Qトイレへの移動中に介護者が気をつけるべき
リスクは何ですか?

トイレへ誘導する際や、便座への移乗時には転倒の危険が非常に高まるため注意が必要です。とくに夜間や暗い場所では足元がふらつきやすく、判断力の低下によってバランスを崩すこともあります。手すりを活用するなどして安全に気を配りつつ、側を離れないよう見守りましょう。

Q頻尿の症状が認知症に与える影響は
どのようなものですか?

頻尿や排泄トラブルは、睡眠を妨げることにもつながり、結果として生活リズムを乱す可能性があります。これにより昼夜逆転や不穏状態が生じやすく、認知機能のさらなる低下を促す可能性もあるため、然るべき対策が必要です。

トイレに頻繁に行く原因を見極めて
安心できる環境を整えよう

認知症の方はトイレに頻繁に行く傾向があり、それに伴う転倒や睡眠不足、精神的ストレスなどのリスクも生じます。本人の安心だけでなく、介助する側の負担も考慮しながら、医療機関での診断や環境の工夫、声かけや記録など適切な対処法を組み合わせることが重要です。原因に合わせた対策で、安心・安全の環境を整えましょう。

認知症のトイレ対策とあわせて、認知症に関する最新の研究や正しい知識を取り入れることも大切です。「認知機能ケアプロジェクト」では、認知症に対する効果が注目されているガンマ波の最新研究情報も配信しており、日常のケアに役立つ知見が得られます。より効果的なサポート方法を知るためにも、ぜひチェックしてみましょう。

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