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04認知症コラム

認知症の性的異常行動とは?
男性に多い理由や原因、対処法を解説

2026.04.30

認知症の性的異常行動とは?男性に多い理由や原因、対処法を解説 イメージ

認知症の方は、ときに性的異常行動をとることがあります。男性に多く見られる症状で、性的欲求や本人のもともとの性格が原因ではなく、病気の症状として理解することが重要です。本記事では、認知症の方が性的異常行動をとる原因や対処法、予防のポイントを解説します。

認知症の方の性的異常行動とは
ーなぜ男性に多い?

認知症によって行動や判断が変化した結果、
周囲から“性的な行動”に見えてしまう状態

認知症の方の性的異常行動は、周辺症状(BPSD)の一つとして考えられています。本人に悪意があるわけではなく、性的な目的や意図によるものではありません。

男性に多く見られる傾向がありますが、「性的欲求が強いから」ではありません。認知症による脳の変化で行動を抑制する力が低下し、性的な行動に見えることがあると考えられています。必ずしも本人の意思ではないという点を理解することが大切です。

認知症の周辺症状(BPSD)について詳しくはこちら

認知症の方の性的異常行動とはーなぜ男性に多い? イメージ

認知症の方が性的異常行動を起こす4つの原因

認知症の方が性的異常行動を起こす背景には、症状の進行による脳や心身の状態の変化が関係しています。ここでは、代表的な4つの原因について解説します。

行動を抑える力が弱くなる

認知症になると、行動を抑える力が弱まり、距離感や振る舞いを適切に調整することが難しくなります。

その背景には、状況に応じて行動を切り替える能力が低下する実行機能障害が影響しているとされています。本人は普段どおりのつもりでも、周囲からはいつもと違う行動に見えることがあるためです。こうした変化の結果、周囲から性的な行動のように受け取られる言動が見られる場合があります。

実行機能障害について詳しくはこちら

人や状況の認識がずれやすくなる

認知症の方は、相手のことや状況を誤って理解しやすく、過去の記憶と現在の状況が混ざってしまうことがあります。こうした認識のずれは、認知機能の低下によって起こりやすくなるものです。

その背景には、相手を配偶者や恋人と勘違いしてしまう見当識障害があります。また、昔の記憶が強く残り、現在の状況と混線しやすくなる記憶障害が影響することもあります。これらが重なることで、周囲には性的な行動のように見える言動として表れる場合があります。

見当識障害について詳しくはこちら
記憶障害について詳しくはこちら

不安や寂しさを感じやすくなる

認知症の方は、不安や寂しさを感じやすく、「安心したい」「寄り添ってほしい」という気持ちが行動に表れやすくなります。とくに一人でいると心細さが増し、気持ちの揺れが行動に現れるケースが多いです。こうした不安定さに加えて感情のコントロールが難しくなるため、急な接触や距離の近さが、周囲には性的な行動のように受け取られる場合があります。

周りの変化に影響を受けやすくなる

認知症の方は環境の変化や周囲の雰囲気に敏感になりやすく、落ち着かない状況が続くと行動が不安定になることがあります。具体的には、急な予定変更や知らない人との接触などがストレスとなり、普段とは違う行動が表れやすいです。その結果、周囲には性的な行動のように受け取られる言動として見える場合があります。

認知症の方が性的異常行動を
起こしたときの対処法

認知症の方が性的異常行動を示したときは、慌てず落ち着いて対応することが大切です。ここでは、日常で実践できる具体的な対処法をご紹介します。

否定せず落ち着いた態度で対応する 気持ちに寄り添い安心感を与える 注意をそらし別の行動に誘導する ケアマネージャーや
かかりつけ医に相談する

認知症の方が性的異常行動を起こしたときの対処法 イメージ

否定せず落ち着いた態度で対応する

性的異常行動が表れても、強く否定したり叱ったりするのは避けましょう。緊張や混乱が高まって、逆に症状が悪化しかねません。相手の行動を受け止めながら落ち着いた態度で接すれば、その場の不安や動揺を広げずに済み、状況を穏やかに整えつつ次の対応を取れます。行動の悪化を防ぐためには、家族自身が冷静でいることが大切です。

気持ちに寄り添い安心感を与える

気持ちに寄り添い安心感を与えることは、性的異常行動のエスカレートを防ぐうえで重要です。認知症の方は気持ちを言葉で伝えにくいことがあり、その戸惑いが行動に表れやすくなります。

安心できる声かけや柔らかな表情で接すると緊張が和らぎ、「受け入れられている」と感じやすくなります。こうした関わりが、落ち着きを取り戻すきっかけにつながります。

注意をそらし別の行動に誘導する

性的異常行動を無理に止めようとせず、注意をそらして別の行動に誘導することも有効です。認知症の方は制止されると混乱や抵抗が強まりやすく、状況がこじれることがあります。別の話題や行動へ自然に切り替える方法は、介護現場でも広く使われている安全な対応です。負担のない誘導であれば、相手の尊厳を保ちながら場を整えられます。

ケアマネージャーやかかりつけ医に相談する

性的異常行動が見られる場合は、家族だけで抱え込まず、ケアマネージャーやかかりつけ医に相談することが大切です。家庭内だけで対応しようとすると負担が大きく、行き詰まりやすい場面もあります。

ケアマネージャーやかかりつけ医はこれまでの経過や現在の様子を踏まえて助言や支援の方向性を示し、必要に応じて環境調整や医療的な対応について検討を進めます。相談を重ねることで家族の負担が和らぎ、継続的な支援につながります。

認知症介護における心構えや注意すべき言動と対応について詳しくはこちら

認知症の方の性的異常行動を
起こりにくくするための予防法

認知症の方の性的異常行動は、日常生活の工夫で起こりにくくなる場合があります。ここでは、具体的に実践できる予防法を押さえましょう。

生活リズムを整える

認知症の方の諸症状は、脳機能の低下に加え、昼夜逆転や睡眠不足などによる生活リズムの乱れの積み重なりが原因で発症することがあります。そのため、一定の生活リズムを保つことが重要です。

起床・食事・入浴・就寝の時間をできるだけ一定に保ち、日中は適度に身体を動かすことで覚醒と休息のメリハリが生まれます。規則正しい生活リズムは情緒の安定につながり、衝動的な言動の予防になるでしょう。

具体例
  • 起床・食事・入浴・就寝の時間を毎日ほぼ同じにする
  • 日中に軽い散歩や体操などの活動を取り入れる
  • 昼寝は長くなりすぎないように調整する
  • 夜は強い光や騒音を避け、落ち着いた環境にする

不安や孤独感を減らす環境を作る

不安や孤独感を減らす環境づくりは、性的異常行動を予防するうえで欠かせない要素です。

認知症の方は人との関わりが少なくなると情緒が揺らぎやすく、不適切な言動が出やすくなることがあります。そのため、日常的な声かけや適度な見守りがあると心が落ち着き、安心できる居場所が整います。

また、心地よい刺激や馴染みのある物を生活に取り入れることで安心感が高まり、衝動的な行動の抑制に役立ちます。

具体例
  • 穏やかな声かけやゆっくりした動作で接する
  • デイサービスや家族以外との交流を取り入れる
  • 不安が強くなりやすい時間帯にそばで見守る
  • 好きな音楽や馴染みのある物を身近に置く

過度な刺激や混乱を避ける

過度な刺激を減らし、分かりやすい環境を整えることは、性的異常行動を予防するうえで重要です。周囲の音や人の出入り、強い光など刺激が多い状況では落ち着きにくく、心が不安定になりやすくなります。テレビの音量を抑える、人の動線を整理するなど、環境をシンプルに保つ工夫が役立ちます。

また、プライバシーが守られた空間を確保することで、安心して過ごせる時間が増え、衝動的な行動の抑制につながります。

具体例
  • テレビやラジオの音量を下げる
  • 部屋の照明を一定に保ち、明るすぎ・暗すぎを避ける
  • 服の着脱が難しい場合は、前開きの衣類や
    簡単に着られる服に変更する
  • トイレや自室の場所が分かりやすいように
    案内表示をつける

身体の不調を早めにケアする

身体の不調を早めに整えることは、性的な行動のように見える言動を防ぐための大切な基盤です。認知症の方は痛みやかゆみ、排泄の不快感などを言葉で伝えにくく、小さな不調でも生活のリズムが崩れやすい傾向があります。

介護者は日頃から表情や動きの変化を観察し、健康状態や排泄・皮膚のトラブルをこまめに確認することが重要です。体調が安定すると安心して過ごせる時間が増え、衝動的な行動の予防につながります。

具体例
  • 便秘・脱水・痛みなどの不快感がないか日常的に確認する
  • 定期的に受診し、薬の飲み忘れや副作用がないかチェックする
  • 水分補給や食事のバランスを整える
  • 皮膚トラブルやかゆみなど、小さな不調も早めにケアする

Q認知症の性的異常行動は「性的脱抑制」という
症状のことですか?

はい、医学的には性的脱抑制という症状として扱われます。認知症に伴う脳の変化で抑制が効きにくくなり、性に関する不適切な言動や行動が出る状態です。周囲の状況や社会的なルールを判断する力が低下することで、性的に見える行動が現れやすいといわれています。

Q認知症の性的異常行動に薬などの治療法はありますか?

症状に直接作用する治療法はまだ確立されていません。基本的には行動介入や環境調整など非薬物的対応が取られますが、それでも日常生活に支障が出る場合には抗うつ薬や抗精神病薬などが用いられるケースもあります。

Q認知症の性的異常行動は女性にも見られることがありますか?

女性でも起こり得る可能性があります。男性に多い傾向はありますが、認知症の影響で抑制が効きにくくなり不適切な性に関する行動が見られるケースは男女ともに報告されています。

性的異常行動は「認知症の症状」という理解が大切

認知症の方の性的異常行動は、本人の意図や性的欲求の強さによるものではなく、脳の変化による抑制低下や不安・環境の影響が背景にあります。そのため、行動を否定せず落ち着いた対応を心がけ、安心できる生活リズムや環境を整えることが予防につながります。家族や専門職と連携して支援体制を整え、適切に対応しましょう。

認知症の方への対応や予防の理解を深めるうえで、正しい知識を持つことは非常に大切です。「認知機能ケアプロジェクト」では、ガンマ波に関する最新研究情報や認知機能ケアの実践的な知見を配信しています。日々のケアに役立つ情報も多く、理解をさらに深めたい方はぜひチェックしてみましょう。

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