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04認知症コラム

長谷川式認知症スケールとは?
検査方法から結果の見方までわかりやすく

2024.12.26

長谷川式認知症スケールとは?検査方法から結果の見方までわかりやすくイメージ

長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは、長谷川和夫医師によって開発された日本で広く使用されている認知症診断ツールです。この記事では、長谷川式認知症スケールの実施方法や点数基準、注意点を解説。また、検査の結果から認知症の疑いがあると判断されたときの対応方法についても紹介します。

長谷川式認知症スケールの概要

長谷川式認知症スケールは、日本で広く使用されている認知症診断ツールです。1974年に長谷川和夫医師らによって発表されました。なお、発表時の名称は、長谷川式簡易知能評価スケール(HDS)です。

その後、質問項目や採点基準などの見直しが実施されて、1991年に改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)となりました。HDS-Rは、「長谷川式認知症スケール」や「長谷川式スケール」とも呼ばれます。

長谷川式認知症スケールの概要イメージ

長谷川式認知症スケールの特長

長谷川式認知症スケールは記憶力や注意力、計算能力を評価する簡易検査で、質問形式で実施されます。日常生活に密接に関連した9つの設問で構成され、被験者の認知機能を多角的に評価することが可能です。

アルツハイマー型認知症の早期発見に主眼をおいており、被験者の生年月日さえ確認できれば5~10分ほどで実施できます。また、動作性検査がないため、運動機能に問題がある方でも測定できるのも特長です。

長谷川式認知症スケールの特長
  • 被験者の記憶力や注意力、計算能力を評価する簡易検査である
  • 9つの簡単な設問を元に行えるため、短時間で負荷なく行える
  • 他の検査方法と比較して、日本人が取り組みやすい

類似するテスト「MMSE」との違い

ミニメンタルステート検査(MMSE)は、国際的に広く使用されており、異なる国や地域での認知症評価の比較が容易です。一方、長谷川式認知症スケール(HDS-R)は日本で開発されたものであり、日本国内での診断・治療に特化しています。

MMSEは西洋の文化や生活習慣に基づいているため、日本人に適さない可能性がある点に注意が必要です。

長谷川式認知症スケール ミニメンタルステート検査
  • 日本国内での診断・治療に特化
  • 30点満点中20点以下を認知症の疑いありと判断する
  • 西洋の文化や生活習慣に基づく
  • 30点満点中23点以下を認知症の疑いありと判断する

長谷川式認知症スケール以外の検査方法について詳しくはこちら

長谷川式認知症スケールの検査について

長谷川式認知症スケールは、習熟すれば心理職のようなアセスメントの専門家でなくても使用できる検査方法です。検査のやり方や結果判断基準について解説します。

検査のやり方

長谷川式認知症スケールは、記憶力や注意力、言語能力を評価する質問で構成され、通常は医師や看護師が質問し、被験者が回答する方式で進めることが一般的です。たとえば、検査日の日付や年齢、簡単な計算問題、言葉の復唱などの質問が含まれます。回答の正確さや速さにより評価し、点数をつけます。

検査の所要時間

検査の所要時間は、10~15分程度です。被験者の負担に配慮し、集中力を維持しやすくするためにも、短時間で評価できるように設計されています。

検査には、リラックスした状態で臨むことが大切です。被験者が極度に緊張していると、普段ならわかることもわからなくなったり、回答までに時間がかかったりするため、正確に評価できない可能性があります。

判断する点数の基準

設問ごとに採点基準が定められており、30点満点中20点以下のときは認知症の疑いありと判断します。正しい答えを述べているかだけでなく、回答までにどの程度の時間がかかったかも評価の基準となる点に注意が必要です。

ただし、検査結果だけでなくほかの診断手法も実施し、多面的に評価することが求められます。

検査を受ける方法

長谷川式認知症スケールの検査は、医療機関で受けることが一般的です。かかりつけ医や専門クリニックで相談し、検査を予約してから受けるようにしましょう。

簡易的に家庭で実施することも可能ですが、医療的な判断を下すのは容易ではありません。慎重に認知症かどうかを判断するためにも、まずは医療機関で相談してください。

認知症検査の種類や内容について詳しくはこちら

家庭で長谷川式認知症スケールを行う場合

医療的な判断を下すことは難しくとも、検査を実施すること自体は家庭内でも可能です。家庭で長谷川式認知症スケールを実施する場合のやり方や注意点を紹介します。

評価前に準備しておくもの

検査を開始する前に、テスト用の質問紙とペンを準備しましょう。時計やカレンダーも準備しておくと、回答を確認する際に役立ちます。

また、静かで集中できる環境も準備しておくことが必要です。被験者がリラックスできるようにコミュニケーションを取り、威圧的にならないように質問を進めていきましょう。

テスト用の質問紙イメージ 出典:日本老年医学会「改訂長谷川式簡易知能評価(HDS-R)」

具体的なやり方

検査を実施する方は、被験者にリラックスした状態を保つように促します。質問紙の質問を順に読み上げ、被験者に回答を求めてください。

質問は全部で9項目あり、それぞれ0点~5点(質問によっては1点もしくは2点が上限)のスコアをつけます。全質問が終了した後に、合計点を算出してください。

チェックする際のポイント

長谷川式認知症スケールは、質問の順序を守ることが重要です。単に回答を促すだけでなく、被験者の反応を注意深く観察し、回答スピードや迷いの有無、表情もチェックしてみてください。

検査を実施する方は中立的な立場を保ち、正解に誘導するような声がけをしないようにすることも大切です。また、評価結果は、正確かつ詳細に記録するようにしてください。

長谷川式認知症スケールを使用する際の注意点

より正確に判断するためにも、静かで集中できる環境を準備し、被検者がリラックスできるようにサポートしてください。また、被験者のプライバシー保護に注意を払い、個人情報や結果を厳重に管理することも大切です。

被験者がリラックスして検査に臨むためにも、検査を実施する方との信頼関係が欠かせません。良好な関係を構築してから検査を実施するようにしてください。

また、長谷川式認知症スケールの結果だけで認知症を判断するのは危険です。あくまでも評価スケールのひとつと考え、実際の症状や他の検査結果も通して総合的に判断するようにしましょう。

認知症患者と接する際のポイントについて詳しくはこちら

テスト実施の注意点
  • 被験者がリラックスできる環境を用意する
  • 被験者のプライバシー保護を厳重に行う
  • 被験者に敬意を払って実施する
  • 長谷川式認知症スケールをもって認知症だと決めつけない
長谷川式認知症スケールを使用する際の注意点イメージ

検査の結果で認知症が疑われる場合

長谷川式認知症スケールのスコアが20点以下のときは、認知症の疑いがあると判断できます。認知症が疑われるときに実施すべきことについて見ていきましょう。

まずは認知症に関する理解を深める 予防を意識し認知症の進行に備える かかりつけ医などの相談先を用意しておく

まずは認知症に関する理解を深める

認知症が疑われる場合、まずは認知症に関する理解を深めることが重要です。認知症の症状や進行度によって必要なケアやサポートが変わるため、認知症について深く理解することで適切な対応ができます。家族や介護者は認知症について深く理解して、より適切な対応を実施していきましょう。

認知症の中核症状について詳しくはこちら

予防を意識し認知症の進行に備える

認知症は一度発症すると根治することは困難な病気です。普段から認知症予防を意識し、運動習慣やバランスのとれた食事などを実施していきましょう。

メモやカレンダーなどのアイテムを使って、記憶や認知機能をカバーする工夫も大切です。また、社会的な交流も、脳を健康に保つために有用とされています。早期から認知症予防を始めることで、発症の不安を軽減していきましょう。

認知症の予防について詳しくはこちら

かかりつけ医などの相談先を用意しておく

認知症の疑いがあると判断されるときは、かかりつけ医に相談してください。また、認知症専門のクリニックや病院を受診し、検査や治療計画を立ててもらうことも大切です。

認知症かどうかわからないときも、気になることがあるときは、地域の保健所や介護支援センターで相談してみましょう。家族や介護者向けのサポートグループなどもあり、精神的なサポートを得られることもあります。

認知症患者の日常生活自立度について詳しくはこちら

認知症チェックにスケールを活用しよう

長谷川式認知症スケールは、比較的簡単に認知症の疑いがあるかどうかを判断できる検査方法です。30点満点中20点以下のときは認知症の疑いがあると判断しますが、それだけで判断せずに、ほかの検査も受けて包括的に判断するようにしてください。

認知症は一度発症すると根治が難しいとされているため、予防が大切です。認知症予防に対する研究は日々進歩しています。ぜひ最新研究もチェックし、認知症予防に活かしてください。

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