04認知症コラム
認知症による入院は可能?
病院が必要な
ケースや悪化するリスク、費用と期間を解説
2025.03.27

「認知症で入院が必要なの?」「どんな病院を選べばいいの?」と疑問に思っている方も多いでしょう。総合病院の精神科病棟や、精神科専門の医療機関などでは、自宅介護が難しいときなどに認知症患者の入院を受け入れていることがあります。この記事では、入院が必要とされるケースや入院後の治療方法、悪化のリスクなどを解説します。
認知症でも入院できる

認知症を理由とした入院は可能であり、主に自宅介護が困難な場合に検討されます。認知症は精神科領域の疾病のため、精神科病院や認知症専門の療養病棟などに入院することが一般的です。
認知症専門医が在籍する医療機関では、入院だけでなく家族の相談も受け付けています。家族の入院を検討している場合は、事前に相談しておきましょう。
認知症の入院に対応できる病院の種類
認知症疾患医療センターは、認知症の診断、治療、医療相談などを包括的に提供する医療機関で、都道府県や指定都市が指定しています。具体的には、精神科のある救急病院や、認知症疾患医療センターを設置している病院などです。
認知症疾患医療センターは、認知症の診断・治療・医療相談など、認知症に関わることを包括的に対応する指定医療機関です。基幹型Ⅰ、基幹型Ⅱ、地域型、連携型の4つがあり、基幹型は総合病院や大学病院に設置され、救急医療機関として空床を確保しています。
認知症疾患医療センター | |||
---|---|---|---|
基幹型Ⅰ | 基幹型Ⅱ | 地域型 | 連携型 |
総合病院、大学病院 | 精神科単科病院 | 診療所 |
認知症で入院が必要なケース
認知症患者は、必ずしも入院が必要というわけではありません。しかし、いくつかのケースにおいては、入院による治療が必要です。
介護者の生活に支障が出ている場合
認知症患者の介護は、身体的にも精神的にも大きな負担となります。負担が続くと、介護者の健康が損なわれ、生活全般に支障をきたすこともあるでしょう。
介護者の生活に支障が生じるときは、認知症患者の入院が必要です。専門医療機関で入院することで、患者の安全を確保しつつ、介護者の負担を軽減できます。
精神保健福祉法による判断
認知症により興奮や暴力、自傷といった症状・行動が見られることも少なくありません。患者の状態が患者自身や周囲に危険を及ぼす可能性があるときは、精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)に基づき、患者本人の同意を得ずとも医療保護入院や措置入院を実施することもあります。
- 医療保護入院とは
- 自傷他害の恐れはないものの、本人の意思による入院が難しく、なおかつ入院が必要な精神障害者を入院させること。精神保健指定医もしくは特定医師の診察と、家族等のうちいずれかの者の同意が必要。
- 措置入院とは
- 入院させなければ自傷他害の恐れがある精神障害者を入院させること。精神保健指定医2名の診断の結果が一致した場合に、都道府県知事が措置入院を実施。
認知症専門医による診断
認知症専門医の診断の結果として、入院が必要だと判断される場合もあるでしょう。患者の認知機能や行動の変化、生活の質に影響を与えている要因などの幅広い要素を調べ、入院の必要性を総合的に判断します。専門医に診断されることで患者と家族は安心感を得られ、最適な治療方針の基礎になる場合も多いです。
認知症で入院できないケースや
退所を促されるケース
認知症患者の入院は可能ですが、すべての認知症患者が入院できるわけではありません。入院できないケースや退院・転院を促されるケースを紹介します。

本人の同意が得られない
医療保護入院や措置入院といった特別な入院以外は、患者の意思により実施します。精神科病棟への入院においても同様です。まずは本人の意思を確認してから、入院手続きに進みます。
患者本人が強く入院を拒否する場合は、医療機関側は慎重な対応が必要です。患者とできる限りコミュニケーションを取り、理解を得てから入院手続きを進めることが求められます。
暴力や徘徊、治療拒否が続く
認知症にはさまざまな周辺症状があり、個人差はありますが経過中に表出することがあります。周辺症状の中には、暴力行為や徘徊といった他の患者やスタッフに危害を及ぼすものもあるため注意が必要です。
周囲に危害を与える可能性があるときや、患者本人が治療を拒否するときは、入院継続が困難と判断されるかもしれません。退院・転院を促されることもあるため、早めに専門医などに相談するようにしてください。
- 例
-
- 徘徊し、他の患者の病室に勝手に入ってしまう
- 早朝や夜間に大声を出し、他の患者の睡眠を妨害する
- おむつ交換をしようとした看護師に、興奮して手をあげてしまう
- 毎回、点滴を強引に抜いてしまう
認知症の入院時の治療方法
認知症の治療は、患者個々の状態に応じてアプローチを変えます。薬物療法では抗認知症薬や抗精神病薬などが、症状緩和のために使われることが一般的です。
また、非薬物療法として、リハビリテーションや作業療法が取り入れられることも少なくありません。最適な治療方法は患者ごとに異なるため、医療スタッフと家族が連携し、さまざまな方法を模索して患者に合った治療方法を構築していきます。
認知症の入院で症状が悪化するリスクがある
入院により、認知症患者の症状が悪化するリスクもあります。よくあるケースや対処法についてみていきましょう。
環境の変化による症状の悪化
誰にとっても住み慣れた環境から離れることはストレスになり、症状に悪影響を与える場合があります。一般的に不安・帰宅欲求が強いとされる認知症患者にとっては、大きなストレスになるでしょう。入院がきっかけで混乱や不安が強まり、認知機能に影響を及ぼす可能性もあるため注意が必要です。
- ポイント
- 普段から使っている枕やラジオ、家族の写真などを持ち込むことで、安心感を生む可能性がある。
筋力の低下による日常生活の困難
入院中はベッドで過ごす時間が増え、在宅時よりも体を動かす機会が減ると想定されます。筋力低下が急速に進行し、転倒リスクの増加や歩行困難を招くかもしれません。また、筋力低下により、退院後の生活に支障が生じる可能性もあります。
- ポイント
- 適切なリハビリテーションや身体活動を通じて身体機能の維持・向上を図ることが重要。
認知症の入院のその後に備えて知っておきたいこと
認知症による入院は、ほかの疾病やケガなどによる入院と比べて長期化する傾向にあります。入院中・入院後の計画を立てるためにも、平均的な在院期間や退院後の選択肢について知っておくことが必要です。

認知症で入院する期間
認知症の入院期間は、症状の重症度や治療の進行状況によっても異なります。令和2年患者調査によれば入院患者の平均在院日数は32.3日ですが、アルツハイマー病による入院は平均273.0日、血管性および詳細不明の認知症による入院は平均312.0日と長期です。
一般的には数週間から9カ月~2年程度
医師の診断や治療計画によっても入院期間は異なるため、主治医と話し合っておきましょう。
退院後の選択肢
退院後の選択肢についても検討しておきましょう。自宅介護を選択する場合は、訪問介護やデイサービスといった地域資源の活用を視野に入れられます。
また、介護施設への入所を検討する場合は、施設の種類やサービス内容を比較しましょう。各サービスを効果的に組み合わせ、家族の負担軽減を図りつつ、患者の安心な生活環境を整えることが必要です。
- 訪問介護やデイサービスを利用した自宅介護
- 認知症に対応した介護施設への入所
- 認知症に特化した病院への転院
悩んだ場合の相談先
退院後の暮らしや治療について悩んだときは、まずは地域包括支援センターに問い合わせてみましょう。制度や機関を超えたサポートを得られます。
また、入院している病院の医療相談室も活用してください。社会福祉士などの資格を持つ医療ソーシャルワーカーが相談に応じてくれます。専門家の助言を受けることで、より適切な判断が可能になり、安心して退院後の生活を迎えられるようになるでしょう。
地域包括支援センター
市町村が主体となり、保健師や社会福祉士などを配置して、住民の健康保持と生活安定のために必要なサポートを提供する機関。介護予防支援や総合相談支援などを受けられる。
病院に設置されている医療相談室
療養に伴う社会的・経済的・心理的問題など、生活に関わる全般についての相談に対応。相談内容によっては、他の医療機関や公的機関、介護施設とも連携可能。
自治体の担当課
自治体によっては、介護や医療の相談窓口を設置していることがある。また、市区町村の社会福祉協議会では介護費・医療費・生活費などの相談に対応。
認知症入院にかかる費用の目安
生命保険文化センターが実施した「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によれば、平均入院費用は1日あたり20,700円、認知症の療養のように長引く場合(1年超~3年以内)では1日あたり21,600円です。
公的医療保険が適用されることで自己負担額は1割~3割になりますが、入院保証金としてまとまった費用が発生することもあります。そのため、入院前に医療機関と話し合い、正確に把握しておくことが大切です。
入院費用の負担を減らす制度
認知症による入院は長引く傾向にあるため、費用の負担も大きくなります。負担軽減に利用可能な制度についてみていきましょう。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、同一月にかかった医療費の自己負担額が一定額を超えた場合に、払い戻しを受けられる制度です。医療費が高額になることが分かっている場合は「限度額適用認定証」、70歳以上の方は「高齢受給者証」を提示することで、その場で高額療養費制度を利用できます。後日払い戻しの手続きをする必要がありません。
- 例
- 70歳以上で年収が約156万円~370万円の場合、ひと月の医療費の上限額は57,600円。
この額を超える分について、医療費が支給される。
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」
入院時食事療養費制度
入院時食事療養費制度とは、入院期間の食事代について1食ごとの標準負担額のみ支払う制度です。従来は食事代を1日あたりで支払っていましたが、1食ごとに変わったことで入退院時や手術時などの食事代を最低限に抑えられるようになりました。また、所得によってはさらに負担を軽減できます。
1食あたりの負担額 | |
---|---|
一般の方 | 490円 |
難病患者、小児慢性特定疾病患者の方(住民税非課税世帯を除く) | 280円 |
住民税非課税世帯の方 | 230円 |
住民税非課税世帯の方で過去1年間の入院日数90日を超えている場合 | 180円 |
住民税非課税世帯に属しかつ所得が一定基準に満たない、70才以上の高齢受給者 | 110円 |
出典:厚生労働省提出参考資料「入院時食事療養費及び入院時生活療養費における標準負担額」
公費医療負担制度
公費医療負担制度とは、特定疾患による療養や生活保護世帯などに適用される医療費の補助・免除制度です。公費医療負担制度が適用される場合は、自己負担額なしに医療を受けられます。
民間の介護保険も活用可能
認知症介護に特化した民間保険会社の介護保険も活用も検討してみましょう。加入している場合は、認知症による入院・介護費用の補填を受けることが可能です。また、介護保険によっては、公的介護保険制度の「要介護1」以上の認定を受けると、その後の保険料の支払いを免除されるものもあります。
認知症の入院判断で迷うときは専門医に相談を
認知症により入院するかどうか迷ったときは、認知症専門医に相談してください。認知症専門医は患者の状態を総合的に評価し、入院も視野に入れた適切な治療方針を提案します。
また、患者の生活も重要ですが、サポートする家族が疲弊することは避けなくてはいけません。認知症専門医以外にも、医療機関や地域の相談窓口を活用し、適切な支援を受けることが大切です。
早めに認知症専門医に相談してみよう
認知症により入院が必要と思われるときは、早めに認知症専門医に相談することが大切です。患者の症状や必要な介護の程度、家族から得られるサポートなどを総合的に評価し、専門医の見解も含めた判断を得られます。
また、認知症についての知識を深めることも重要です。認知症の最新研究に触れることで、患者への対応や予防活動についての理解を深められます。ぜひ以下から最新研究の動向をチェックしてみてください。