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04認知症コラム

認知症の本人の気持ちはどのようなもの?
寄り添うために家族ができること

2026.06.17

認知症の本人の気持ちはどのようなもの?寄り添うために家族ができること イメージ

認知症になると意思表示が難しくなるため、本人の気持ちが外からわかりにくく、接し方に悩む方も多いのではないでしょうか。実際には、不安や戸惑い、孤独感などさまざまな感情が複雑に絡み合っており、その気持ちに配慮して接することが大切です。本記事では、認知症の方の気持ちに寄り添うために家族ができることについて解説します。

認知症の本人が感じやすい主な気持ち

認知症になると、日常生活においてこれまで通りにいかない場面が増えるため、ネガティブな感情を抱えやすくなります。本人に寄り添った適切なサポートができるよう、まずは認知症の方が抱きやすい感情について理解しましょう。

認知症の本人が感じやすい主な気持ち イメージ

できないことが増えることへの不安と戸惑い

認知症になると、これまで当たり前にできていたことが急にできなくなる場面に直面し、そのギャップに強い不安を感じるようになります。

さらに、失敗を繰り返すうちに「またうまくいかないのではないか」という予期不安が高まり、行動そのものに消極的になることも少なくありません。

こうした変化に自分自身の感覚が追いつかず、戸惑いが積み重なっていきます。

迷惑をかけたくないという強い気持ち

認知症の方には、家族や周囲に負担をかけているのではないかという申し訳なさが常につきまといます。

自分のせいで予定が変わったり、手間をかけさせてしまったりすることを過度に気にし、その気持ちが行動の萎縮につながることも多いです。

自尊心の揺らぎやプライドの傷つき

できないことを指摘され、「自分らしさ」が失われていくような感覚を抱くこともあります。失敗が続くと「自分はもうダメだ」と感じるなど自己評価の低下につながりやすく、その影響は小さくありません。

また、これまで担ってきた役割を果たせなくなり、「プライドが傷ついた」という思いとして積み重なっていくこともあります。

理解されない孤独感や疎外感

認知症の方は自分の気持ちをうまく言葉にできないため誤解が生まれやすく、それが孤独感や疎外感につながることがあります。周囲の会話のスピードについていけないことも多いため、場の流れから取り残されているように感じる場面もあるでしょう。

こうしたことが積み重なると、「誰も自分の気持ちをわかってくれない」という深い孤独へつながっていきます。

怒り・混乱・悲しみが入り混じる複雑な感情

認知症によって思い通りにいかない状況が続くと、感情の起伏が生じやすくなります。

自分でも理由がわからないまま、怒りや悲しみ、混乱が同時に押し寄せる場面も少なくありません。

こうした感情の変化に自分自身がついていけず、そのことがさらに落ち込みにつながることもあります。

状況別認知症の本人が気持ちの揺れを
感じやすい場面

認知症の方はさまざまな気持ちを抱えており、家族や介護者はそのことをよく理解する必要があります。とくに本人の感情が揺れやすい場面を把握しておきましょう。

自分の失敗に気づいたとき

認知症によって、料理や家事、ちょっとした段取りなど、これまで自然にこなしていたことが急にうまくいかなくなると感情が揺れやすくなります。

とくに、同じ失敗を繰り返し「また間違えた」と自分で気づく瞬間はつらさを感じやすいものです。

こうした経験が重なると、できない自分を受け止めきれず、戸惑いや落ち込みが強まっていきます。

他者から指摘や強い言葉を受けたとき

認知症の方は、物忘れやミスを指摘されるとこちらが思っている以上にショックを受けたり恥ずかしさを感じたりする場合があります。

たとえ悪意がなくても「さっき言ったでしょ」「なんでできないの」といった指摘や強い言葉は禁物です。

急かされたり強い口調で注意されたりすると、頭の中が整理できず思考が止まってしまい、状況が悪化することも少なくありません。

外出や社会的な場面でうまくいかなかったとき

日常の社会的な場面でも認知症の方は混乱しやすくなります。

たとえば、人が多い場所では周囲の目が気になって買い物の支払いに戸惑ってしまったり、順番がわからなくなったりすることで焦りが強まります。

初めての場所では、道に迷う、目的地を忘れるということが多くなり、混乱が生じやすいです。

こうした状況でうまく行動できないことが重なると、気持ちが落ち込みやすくなります。

診断を受け入れられないとき

認知症と診断されると、本人は「本当に自分が認知症なのか」という戸惑いや混乱、将来への不安といった感情が一気に押し寄せます。

さらに、「周囲が自分を病気として扱い始める」という気持ちが強まり、疎外感や孤独感につながる場合もあります。

認知症の本人の気持ちに影響する主な症状

認知症になるとさまざまな症状が表れ、本人の感情に影響をおよぼします。適切なサポートをするためにも、認知症の症状と本人の気持ちにどのような関係があるのか理解しておきましょう。

記憶障害

認知症による記憶障害が現れてくると、新しい出来事を覚えることが困難になり、直前の会話や行動が抜け落ちてしまうことが増えてきます。

初期から中期では、こうした記憶の混乱をまだ自覚できるため、「自分が自分でなくなる」ような不安や焦り、苛立ちなどの感情を抱きやすいです。また、そのことで失敗が増えると、次第に自己評価も下がっていきます。

認知症による記憶障害について詳しくはこちら

注意力・判断力の低下

認知症の方は、複数の情報を同時に処理できず、状況をうまく整理することが困難です。そのため、ものごとの優先順位がつけられない、選択や決断に時間がかかるといったことが増え、混乱が生じやすいです。

さらに、こうした状況に判断ミスが重なると「また間違えるのではないか」という不安が強まり、行動そのものに慎重さやためらいが出てくることもあります。

見当識障害

見当識障害が現れると、時間や場所の感覚が曖昧になり、今自分がどこにいるのか、何をしているのかがつかみにくくなります。その結果、世界が不安定に感じられ、漠然とした不安や落ち着かない気持ちが生じやすくなります。

また、人の顔や関係性が曖昧になることで安心感が揺らぎ、緊張や戸惑いにつながることも多いです。

見当識障害について詳しくはこちら

感情失禁

感情失禁とは、わずかな刺激で怒ったり泣いたり、感情の起伏が激しくなる状態のことです。認知症の方には、感情失禁の症状が特徴的に現れます。

感情失禁は自分でもうまく抑えられないことが多く、本人の気持ちが追いつかず、「どうしてこんなふうになるのか」と自分を責めたり落ち込んだりすることにつながります。

感情失禁について詳しくはこちら

理解力・コミュニケーション能力の低下

症状が進行すると理解力・コミュニケーション能力が低下し、相手の言葉の意図をとらえられず、会話の中で誤解が生じやすくなります。

こうした状況で話の流れについていけなくなると、やり取りそのものに負担を感じて、会話を拒否してしまうケースも少なくありません。

伝えたいことがうまく言葉にならないもどかしさが重なると、人との距離を感じやすくなり、孤独感や疎外感につながることもあります。

認知症の本人の気持ちに影響する主な症状 イメージ

認知症の本人の気持ちに寄り添うために家族ができること

認知症の方が感じている不安や戸惑いを理解するためには、認知症の症状を理解したうえで適切な対応が必要です。ここでは、本人との接し方で意識したいポイントを押さえましょう。

否定せず、安心できる言葉を選ぶ

認知症の方と会話する際に注意したいポイントは、本人の発言を否定しないという点です。家族からすると見当違いのことや対応に困ることでも、本人は正しいと思って発言しているため、間違いを指摘し、事実を正そうとすると混乱してしまいます。

間違いを訂正するのではなく、「そう感じたんだね」「大丈夫だよ」というように、まず受け止める姿勢を示し、安心感を持ってもらうことが大切です。

できている部分を尊重し、役割を奪わない

認知症になると、これまでできていたことができなくなってきますが、本人が自分でできることにまで手を出してしまうと、かえって自尊心を傷つけてしまいます。本人がまだできていることには手を出しすぎず、時間がかかっても見守る姿勢が大切です。

また、できたことに関しては、たとえ小さなことでも「助かったよ」と伝えるようにしましょう。こうした声かけが、「自分は役割を果たせている」という安心感につながります。

選択肢を示して「自分で決められる」感覚を守る

認知症の方は理解力や判断能力が低下しているため、選択を求める場面では「AとBどちらがいい?」というように選択肢を提示してあげると、迷いにくいでしょう。

考える負担を減らしつつも、全部こちらで決めるのではなく本人の意思を尊重することが大切です。自分で選べたという経験が積み重なれば、それだけ安心感や自信につながります。

ゆっくり・短く・わかりやすく伝える

認知症の方は複数の情報を処理することが困難です。そのため、一度に多くの情報を伝えようとせず、短い文で区切って話すようにしましょう。早口や長い説明は混乱を招きやすいため、ゆっくり丁寧に伝える意識が欠かせません。

また、重要なことを伝える際は言葉だけに頼らず、ジェスチャーや指差しなど複数の方法を組み合わせる工夫も必要です。

穏やかな表情・声・姿勢で接する

表情や声のトーン、姿勢といった非言語の要素は、言葉以上に安心感に影響します。緊張した態度や強い口調は本人へ敏感に伝わり、混乱を招く要因になるため注意が必要です。

本人に安心を感じてもらうには、こうした点を理解し、家族や周囲が落ち着いた雰囲気で接することが重要です。

環境を整えて混乱を減らす

本人が安心できる環境づくりも欠かせません。日常の環境を整えることで、迷いや混乱が生じにくくなります。たとえば、物の定位置を決めたり動線をシンプルにしたりすることで、次に何をすればよいかがわかりやすくなります。

音や光の刺激、人が多い状況も不安や混乱を招く要素になるため、適切な状況に調整し、落ち着いて過ごせる環境に整えましょう。

認知症の本人の気持ちに関するよくある質問

認知症の方が感じていることは外からはわかりにくく、対応に迷う、どう接したらいいのかわからないというケースは多いでしょう。ここでは、よくある質問とその回答をまとめましたので参考にしてください。

本人の気持ちは認知症の進行とともに変わりますか? 認知症の本人が「大丈夫」と言うとき、本当はどう感じているのでしょうか? 認知症の本人が家族の傷つく言葉を使うのは気持ちの問題ですか?

Q本人の気持ちは認知症の進行とともに変わりますか?

認知症の進行にともない、本人の気持ちは変化していくことが一般的です。初期は物忘れへの不安や戸惑いが強く表れやすく、進行するにつれて混乱や不安定な感情が目立つようになる傾向があります。

ただし、変化の現れ方や程度には個人差があり、環境や周囲の関わり方によっても感じ方は変わってくるため、必ずしもその限りではありません。

Q認知症の本人が「大丈夫」と言うとき、
本当はどう感じているのでしょうか?

本人が「大丈夫」と言う背景には、不安や戸惑いを隠したい気持ちが含まれていることがあります。心配をかけたくない、迷惑をかけたくないという思いから、本音とは異なる返答をするケースも少なくありません。

そのため、言葉通りに受け取るのではなく、表情や様子も含めて気持ちをくみ取ることが大切です。

Q認知症の本人が家族の傷つく言葉を
使うのは気持ちの問題ですか?

家族を傷つける言葉が出るのは、気持ちの問題だけでなく、認知機能の低下による影響も大きいと考えられます。言葉の選び方や感情のコントロールが難しくなることで、意図せず強い表現になることがあります。

本人に悪意があるとは限らないため、発言の背景を踏まえて受け止めることが重要です。

認知症の本人の気持ちを理解し、
適切に向き合うために

認知症は、本人の心の状態を大きく揺さぶる出来事です。診断直後から進行の段階に至るまで、不安や戸惑い、孤独感などさまざまな気持ちの変化が生じます。こうした背景を踏まえ、介護者や周囲の方が気持ちに寄り添った対応を心がけることが大切です。

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