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04認知症コラム

感情失禁とは?認知症との関連性や
適切な対応方法を解説

2025.03.27

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感情失禁は、認知症や脳梗塞などの脳の病気で起こります。些細な刺激で泣いたり笑ったりと、感情をコントロールできなくなるのが特徴です。認知症患者に多くみられ、うつ症状との関連も指摘されています。この記事では感情失禁の症状や原因、適切な対応方法を詳しく解説します。

感情失禁とは?

感情失禁とは、感情のコントロールがうまくできず、些細な刺激で過度に感情を表出してしまう状態を指します。情動失禁とも呼ばれ、本人の意思とは関係なく感情があふれてしまうのが特徴です。主に脳卒中、アルツハイマー病などの脳の病変や神経系の障害に関連して発症します。

患者本人も感情をコントロールできないため、社会的交流や日常生活に深刻な影響を及ぼす場合も少なくありません。感情失禁は疾患に起因するものであり、理由があって泣く場合とは区別されるため、適切な理解と支援が必要です。

感情失禁とは?イメージ

感情失禁を発症するケース1 認知症

感情失禁を引き起こす主な原因の一つが認知症です。とくに脳血管性認知症や、異なる種類が併発した混合型認知症では、感情のコントロールが難しくなるという症状が多くみられます。

脳血管性認知症によるケース

脳血管性認知症とは、脳梗塞や脳卒中によって起こる認知症の一種です。記憶障害や見当識障害などの症状に加え、感情失禁の症状もみられます。60〜70代に発症者が多く、脳の一部だけが損傷することで引き起こされるため、症状がまだらに現れるのが特徴です。症状の波が激しいため、感情失禁が起きやすい傾向にあります。

脳血管性認知症について詳しくはこちら

混合型認知症によるケース

混合型認知症は、複数の認知症タイプが併存する状態です。アルツハイマー病と血管性認知症の組み合わせが多く、感情失禁の症状が現れやすくなります。

高齢者だけでなく、働き盛りの年齢でも脳血管の障害が発生すると若年性認知症として認知症を発症するケースがあります。若年性認知症でも感情失禁が発生するケースがあり、若い方でも発症リスクがある点に理解が必要です。

認知症の予防について詳しくはこちら

感情失禁を発症するケース2 頭部の外傷や脳卒中

頭部の外傷や脳卒中も感情失禁の主要な原因の一つです。頭部の外傷や脳卒中は、脳が直接ダメージを受けるため、感情をコントロールする機能が低下します。外傷や脳卒中の後遺症として、感情表現が過剰になることがあり、これが感情失禁の一因です。

とくに、脳卒中を発症すると、脳内の血流が一時的に遮断されることで脳細胞が損傷を受け、感情の調節が難しくなる傾向にあります。
また、前頭葉眼窩面の損傷は、感情失禁を引き起こす可能性が高いです。

うつ病で泣けてくる場合は感情失禁とは呼ばない

うつ病による涙もろさと感情失禁で涙が止まらなくなる状態は、似て非なるものです。うつ病患者が泣くのは、深い悲しみや絶望感などの感情が原因です。一方、感情失禁で涙が止まらなくなるのは脳の機能障害によるもので、感情と状況が一致しません。

うつ病では、気分の落ち込みや興味の喪失が主症状となり、涙もろさはそれらが原因となって現れます。うつ病患者の涙には何らかの理由があるため、安易に感情失禁とみなしてしまうことは、本人の感情を無視することにもなりかねません。

感情失禁のある人によくある4つの症状

感情失禁は、感情のコントロールが困難になり、いくつかの特徴的な症状が現れます。ここでは、感情失禁でよくみられる4つの症状について詳しく解説します。

泣く、怒るなど感情が不安定に
なりやすくなる

感情失禁のある方は、些細な出来事で急に泣き出したり、怒り出したりするなど、感情の起伏が激しくなります。これらの反応は本人の意思とは無関係に現れるのが特徴です。たとえば、軽い冗談に対して大声で笑い続けたり、小さな失敗で急に怒ったり泣き出したりするなど感情が不安定になります。

その場にそぐわない感情が出てしまう

状況にそぐわない感情表現がみられる点も感情失禁の症状の特徴です。たとえば、深刻な話を聞いているときに笑ってしまったり、楽しい場面で突然泣き出したりすることがあります。

これは、脳の感情制御機能の障害によるもので、本人も制御できないケースが多いです。そのため、社会的な場で弊害が生じ、周囲の人々との関係に大きな影響が出ます。

自分の気持ちと反対の感情が出てしまう

感情失禁のある人は、内面の感情と外に表れる感情が一致しないことが少なくありません。たとえば、本当は悲しいのに笑ってしまう、嬉しいのに怒ってしまうといった症状です。これは周囲の人々だけでなく、本人にとっても混乱の原因となり、自分の感情を適切に表現できないことへのフラストレーションにつながります。

自分の欲求をコントロールできなくなる

基本的な欲求を抑制できなくなるという症状も、感情失禁の特徴の一つです。食欲や性的欲求などを適切にコントロールできず、不適切な行動を取ってしまう場合があります。

たとえば、他人の食べ物に手を出す、際限なく物を欲しがって無駄な買い物が増えるなどです。社会的規範に反する行動が多く、社会との関わり合いにおける影響は免れません。

感情失禁への適切な対処方法

感情失禁は、誰にでもある感情表現とは原因を異にするものであり、適切な理解と対応が必要です。ここでは、感情失禁に対する5つの効果的な対処方法を紹介します。

感情失禁の症状を理解する 介護者が落ち着いて対応する 感情失禁が起こるタイミングを見極める 本人の感情に寄り添う 対応に疲れを感じたら専門家を頼る

感情失禁への適切な対処方法イメージ

感情失禁の症状を理解する

感情失禁は脳の機能障害によって発生するものであり、本人の意思とは無関係であることを理解しましょう。突然の泣き笑いや怒りなど状況に不釣り合いな感情表現に動揺してしまうかもしれませんが、周囲がこれを「症状」として認識することが大切です。

感情失禁の症状を正しく理解することで、患者への共感が深まり適切な支援につながるのはもとより、介護者のメンタルを守ることにもつながります。

ポイント
感情失禁は本人の意思でコントロールできないことを覚えておく

介護者が落ち着いて対応する

感情失禁の症状に直面した際、まずは介護者自身が冷静さを保つことが重要です。本人の感情に反応してしまうと、より混乱を生む可能性があります。急な感情の変化に動揺せず、穏やかな態度で接することで、患者の不安を軽減できます。ゆっくりと優しく話しかけ、落ち着いた対応を心がけましょう。

家の中など安全が確保されている場合は、一度その場を離れて距離を置くのも一つの方法です。

ポイント
本人のその場の感情に同調しすぎない

感情失禁が起こるタイミングを見極める

感情失禁は常時起こっているわけではありません。朝や夜などの時間帯や、食事や外出などのタイミングなど特定の条件下で起こっている場合もあります。感情失禁が起きたら、その発生パターンを観察し、特定の状況や時間帯、環境の変化などとの関連性を見出すことで症状の予防や早期対応が可能です。

たとえば、疲労時や特定の刺激に反応しやすい場合は、それらを避けるよう環境を調整することで、症状の発生を減らせるかもしれません。専門医やヘルパーの方と協力し、感情失禁が起こりやすいタイミングを見極めましょう。

ポイント
医師やヘルパーにも協力してもらう

本人の感情に寄り添う

感情失禁の症状が現れた際は、本人の感情を否定せず、受け入れる姿勢が大切です。「大丈夫ですよ」「理解していますよ」など、共感的な言葉選びを心がけましょう。

脳の自己認識の領域が傷ついていない場合、客観的に自分の行動を鑑みて落ち込んでいるケースもあります。そのため、決して激しく叱責したり、責めたりしてはなりません。

大切なのは、本人が何を言いたいのか理解しようとする姿勢です。静かに寄り添い、必要に応じて手を握るなど、本人が安心感を得られるように温かい態度で接しましょう。

ポイント
本人も感情失禁について悩み、落ち込んでいる場合があることを理解する

対応に疲れを感じたら専門家を頼る

感情失禁への対応は、介護者にとって精神的な負担となる場合も少なくありません。一人で抱え込まず、適切なタイミングで専門家の助言を求めることが重要です。医師や看護師、介護専門家などに相談し、感情失禁を起こしやすいタイミングや症状の管理方法など介護のコツを学びましょう。

また、長期的な支援を続けられるよう、介護者自身のメンタルヘルスケアも忘れずに行う必要があります。

ポイント
感情失禁への対応に疲労感を覚えたら、専門医やヘルパーなどの専門家を頼る

感情失禁に関するよくある質問

感情失禁について、わからないことがある、不安があると考えている方は多いでしょう。ここでは、よくある質問とその回答をまとめましたので紹介します。

Q情動失禁と感情失禁の違いは何ですか?

情動失禁と感情失禁は、実質的に同じ状態を指す用語です。

どちらも、脳の機能障害により感情のコントロールが困難になり、些細な刺激で不釣り合いな感情表出が起こる症状を指します。医学的には同義語として扱われることが多いです。

Qうつ病で泣けてくるのは感情失禁ですか?

うつ病で泣けてくる状態は、一般的には感情失禁とは呼ばれません。

うつ病による涙もろさは、深い悲しみや絶望感などからくる感情反応です。一方、感情失禁は脳の器質的疾患による症状で、状況と感情が一致しません。そのため、両者は区別して扱う必要があります。

感情失禁への理解と適切な対応が認知症ケアの鍵

感情失禁は、感情のコントロールが困難になる状態を指します。脳血管性認知症やアルツハイマー病の患者に多くみられ、突然泣き出したり怒ったりするなど感情が不安定になります。感情失禁に適切に対応するには、介護者など周囲が症状を理解し、本人の感情に寄り添うことが重要です。専門家のサポートも活用し、患者と介護者双方に負担がかからないように努めましょう。

認知症は効果的な治療法が見つかっておらず、日頃からの予防とケアが重要です。ただし、早期発見・早期診断によって認知症の進行を遅らせたり、改善したりできる治療法も少しずつ見つかってきています。

認知症に関する理解を深め、より効果的な予防とケアを行っていくために、認知機能を維持する方法や最新の研究成果について、以下の記事もぜひチェックしてみてください。

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