04認知症コラム
まだら認知症とは?原因や症状進行、
予防法や治るかどうかを徹底解説
2025.04.30

まだら認知症とは、脳血管性認知症のことです。障害された脳の部分によって症状がまちまちで、良い部分と悪い部分とで「まだら」になるため「まだら認知症」と呼ばれます。まだら認知症になると、元の性格が極端になったり、感情のコントロールが難しくなったりすることも少なくありません。原因や主な症状、予防方法を紹介します。
まだら認知症とは?
まだら認知症は、脳血管の損傷により、
時間帯や症状によって強弱の波が現れる認知症
まだら認知症とは、脳血管性認知症のことです。脳のどの部位を損傷したかによって症状が異なるだけでなく、症状が出るときと出ないときに波があるため、「まだら認知症」と呼ばれることがあります。
まだら認知症は症状の進行も「まだら」な点が特徴です。ゆっくりと症状が進行することもあれば、階段を進むように急激に悪化することもあります。

まだら認知症の原因
まだら認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因となり発症する疾患です。発症した部位によって症状が異なるため、同じまだら認知症であっても個人によって症状は異なります。
なお、脳疾患は、高血圧や糖尿病といった生活習慣病が原因となることが多いです。たとえば高血圧で動脈硬化が起こると、血管の内壁が厚くなり、血液の流れが滞ることがあります。その結果、脳細胞の壊死や血管破裂による脳内出血などが起こり、発生部位に障害が残ると、まだら認知症を発症します。
なぜ「まだらに」症状が発生するのか
まだら認知症では症状の個人差が大きく、できることやできないこと、症状の進行なども異なります。まだらに症状が発生する理由について見ていきましょう。
脳の損傷の偏り
まだら認知症は脳疾患に起因する疾病です。損傷した部位がつかさどる機能は低下しますが、損傷していない部位がつかさどる機能は基本的には影響を受けません。
たとえば前頭葉に損傷が生じると、前頭葉がつかさどる問題解決能力や計画を立てて行動する能力は低下してしまう恐れがあります。しかし、ほかの部位を損傷していないなら、ほかの能力はそのまま維持されます。
脳の血流の変化
まだら認知症は脳血管障害によって引き起こされる疾患のため、血流量によって症状の程度が変化することがあります。とくに血流量が減少すると症状悪化につながることもあるため注意が必要です。
起床直後や食後、寒い場所にいるときなどは血流量が減るため、症状が悪化しやすいと考えられます。また、自律神経の乱れも血流量に影響をおよぼすため、症状悪化につながる恐れがあるでしょう。
まだら認知症の主な症状
まだら認知症は症状に個人差がある疾患ですが、共通してみられる症状もあります。よくある症状を紹介します。
仕事や家事でのミスが増える
今まで普通にできていたことが、急にできなくなってしまうことがあります。仕事や家事などで今までにしたことのないミスが増えたら、まだら認知症の代表的な症状である「実行機能障害」かもしれません。また、計画を立てて実行することが難しくなるのも、実行機能障害の一つです。
- 症状の具体例
- 料理をするために献立を考える→買い物→材料を調理といった複雑な作業の遂行ができない
昨日できていたことが今日できない
朝はできなかったことが夕方にはできるようになっていることや、反対に朝はできたのに夕方にはできなくなってしまうことがあります。
また、できることとできないことの差が大きいケースもあるようです。たとえば、難しい本は理解できても、展開が早い会話や入り組んだ話は理解できないことがあります。
- 症状の具体例
- 朝は友人と長電話していたのに、午後になると電話に出られず家族に頼りきりになる
感情や欲求をコントロールできない
感情のコントロールが難しくなり、ちょっとしたことで感情が高まって泣き出す「感情失禁」を引き起こすこともあります。また、金銭の浪費が増える、ほしいものやしたいことを我慢できなくなるといった変化が見られることもあるようです。
- 症状の具体例
- テレビの悲しいシーンで大声で泣き出したり、些細な物音に激怒したり、スーパーで同じ食材を大量に買い込んだりするようになる
意欲の低下による無気力(アパシー)
意欲の低下による無気力状態(アパシー)が見られることもあります。周囲だけでなく自分自身にも無関心になり、引きこもりがちになることも少なくありません。また、せん妄が併発することもあります。
- 症状の具体例
- 毎朝の習慣だった近所の公園での体操にも行かなくなり、髪を梳かすことも面倒になって、徐々に外出や身だしなみに無関心になる
まだら認知症の進行は一進一退
まだら認知症の進行は、「階段状」と表現されることがあります。症状がなだらかに悪化するのではなく、ほとんど変化しない状態が続いたと思ったら、新たに脳梗塞や脳出血が生じ、まるで階段を下るように急に悪化することもあるからです。
そのため、症状が変化しないからといって安心はできません。定期的に検診を受けたり、認知症への理解を深めたりすることで、予防や早期発見・早期対応できるようにしましょう。

まだら認知症の発症後の寿命(余命)
認知症患者の寿命は、個人差はあるものの発症から5~12年程度といわれています。年数の幅が広いのは、患者によって環境や持病、食生活、運動習慣などが大きく異なるからです。持病がなく、健康に留意した生活をしていれば、寿命は長くなると考えられます。
ただし、まだら認知症に限るなら、脳梗塞といった死亡リスクの高い病気が関わっているため、寿命は5~7年程度と短い傾向にあります。あくまでも集団としての話なので参考程度にして頂ければ幸いです。
なお、高齢者の認知症でもっとも多いのはアルツハイマー型認知症ですが、若年性認知症でもっとも多いのは脳血管性認知症です。若くてもまだら認知症になる可能性は十分にあるため、健康的な生活を心がけ、予防に努めていきましょう。
まだら認知症は早期治療が重要
まだら認知症は脳の損傷によって生じる認知症です。壊死した脳細胞を再生させる治療法は確立されていないため、根治は難しいとされています。
しかし、食事や運動などからある程度予防することは可能です。また、すでにまだら認知症に罹患している場合も、予防方法を実施することで進行を遅らせられる可能性があります。
まだら認知症を予防する5つの方法
普段の生活習慣を見直すことで、まだら認知症にかかるリスクを低下させることは可能です。
今すぐ始めたい、まだら認知症の予防方法を紹介します。

塩分を控えたバランスのよい
食事を取る
塩分を摂りすぎている人は塩分を控えたバランスのよい食事をとることで、高血圧や糖尿病といった生活習慣病のリスクを減らせます。国民健康・栄養調査(令和元年)によれば、日本人の1日あたりの食塩摂取量の平均値は男性10.9g、女性9.3gです。
一方、厚生労働省が推奨している食塩摂取量は男性7.5g未満、女性は6.5g未満となっています。まずは1日に摂取する塩分を3g減らすことから始めてみましょう。
出典:新潟県立大学「過剰な食塩摂取がアルツハイマー型認知症のリスクを高める」
散歩など軽い有酸素運動を取り入れる
歩行時間が長いほど認知症の発症リスクが減ることがわかっています。とはいえ、運動習慣のない人がいきなり運動量を増やすのは負担があるため、まずは毎日15分程度の散歩を習慣化してみてはいかがでしょうか。
慣れてきたら30分、1時間と歩行時間を増やします。歩行が難しい場合は、定期的にリハビリに通ったり、足でこぐタイプの車椅子を活用したりすることで、運動量を増やしてみましょう。
十分な睡眠をとる
日本睡眠学会の内村直尚氏が実施した『久山町研究』によれば、65歳以上の方は5~7時間の睡眠が認知症予防に理想的だとされています。個人差はありますが、45歳なら6.5時間、65歳では6時間、75歳以上は5.5時間、85歳以上は5時間が理想です。
睡眠時間が5時間未満の方や8時間以上の方は、認知症の発生リスクが高いといわれています。十分な睡眠をとるのはもちろんのこと、寝すぎにも注意しましょう。
定期的に検診を受ける
定期的に検診を受けることで、脳や内臓の疾患を早期発見しやすくなります。早期発見すれば早期対応が可能です。重症化を防ぐためにも、検診を受けるようにしましょう。
また、脳疾患が見つかった場合は、定期的に通院することが必要です。適切な薬の種類・量を処方してもらうためには、1~2週間に一度、症状が安定してきたら1~2カ月に一度は受診するというパターンが多いです。
ストレスを溜めすぎない
ストレスを溜めることも、認知症の進行につながるといわれています。家族が認知症と疑われるときは、早期治療やリハビリも大切ですが、ストレスをかけすぎることがないよう、本人のペースを尊重しましょう。
また、周囲の接し方も、ストレス軽減の重要な要素です。追い詰めるような接し方をしないのはもちろんのこと、家族も追い詰められないように注意しましょう。
まだら認知症の家族への接し方
家族の接し方も、認知症の進行に影響をおよぼすことがあります。まだら認知症の家族が知っておきたい接し方のポイントを紹介します。
言動を否定しないようにする
認知症により記憶を取り違えるケースが増え、つい周囲も「間違っている」「それはおかしいでしょう?」と指摘してしまうかもしれません。しかし、言動を否定するような発言は、認知症患者の意欲低下を招く恐れがあります。患者の自尊心を傷つけないように言葉を選び、言動を否定しないようにしましょう。
行動に失敗しても、やろうとした
事実を褒める
認知症患者のできないことではなく、できることに目を向けるように心がけましょう。失敗をしたとしても、失敗した事実ではなく挑戦しようとしたことに目を向け、褒めるようにしてください。認知症患者の自己肯定感を高められるだけでなく、よい部分に注目することで家族のストレスも溜まりにくくなります。
本人ができることは見守りながら任せる
認知症患者ができることは自分でしてもらうようにしましょう。見守りは必要なため負担がかかるかもしれませんが、アパシーによる意欲低下を予防できます。なお、「やりなさい」といった命令口調は意欲を削ぐ恐れがあるため避けてください。たとえば、着替えをしようとしないときは、次のような工夫ができます。
- 目につく場所に服を置いておく
- 外出の機会を設けて着替えのきっかけをつくる
- 着方がわかっていない場合は実践して見せる
普段の生活を見直し、
まだら認知症を予防しよう
まだら認知症は、脳の損傷により生じる認知症です。高齢者以外も罹患しやすい認知症のため、普段から予防に努めることが必要といえます。食事や運動などにも留意し、健康的な生活を心がけましょう。以下のコラムもぜひご覧ください。
また、認知症の最新情報を入手することもおすすめです。認知症の研究は世界各地で実施されており、新しい予防法や対処法が生まれています。健康な暮らしを続けるためにも、ぜひチェックしてみましょう。