04認知症コラム

痴呆症と認知症の違いを解説!症状や診断、
予防や治療法まで詳しく紹介

2024.11.13

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「痴呆症と認知症の違いがわからない」「もの忘れとの違いを知りたい」という方は多いのではないでしょうか。認知症は早期発見によって症状を緩和できる可能性があるため、適切な医師の診断と治療が重要です。この記事では、痴呆症と認知症の違い、症状、予防や治療法について解説します。

痴呆症は認知症の以前の名称

結論から言うと、痴呆症と認知症は同じ病気を指します。認知症は以前、痴呆症と呼ばれていましたが、専門家や医療関係者の間で見直しが行われ、2004年に厚生労働省が呼称を改めました。

出典:厚生労働省「『痴呆』に替わる用語に関する検討会報告書

痴呆症は認知症の以前の名称イメージ

痴呆症が認知症になった理由

痴呆症が認知症へ名称変更された理由は、痴呆症という言葉が偏見や差別を助長する要因になっていたためです。この点を踏まえ、1990年代から2000年代にかけて医療界や福祉界で呼称の見直しが進められました。その結果、広範な認知機能の障害を包括的に表現する呼称として「認知症」という病名に変更された経緯があります。

この名称変更によって、医療・福祉関係者以外の一般の方にも病気の理解が深まり、患者や家族への適切な支援が行われるきっかけとなりました。

認知症と痴呆症ともの忘れの違い

痴呆症 認知症 もの忘れ
もの忘れの自覚 認知症の旧称 なし あり
もの忘れの程度 体験そのものを忘れる 体験の一部だけ忘れる
思い出せる可能性 指摘されても思い出せない 指摘があれば思い出せる
日常生活における過度な困難さ あり 軽度またはなし
判断力の低下 あり なし

一般的に、加齢によって記憶力は低下していきますが、普段の単なるもの忘れの背後に認知症が潜んでいる可能性もあります。痴呆症および認知症ともの忘れの違いについてみていきましょう。

認知症とは 痴呆症とは もの忘れとは

認知症とは

認知症とは、後天的な要因によって記憶力や判断力などの認知機能が持続的に低下し、日常生活に支障をきたすようになる病気です。認知症にはさまざまな種類・症状があり、それぞれ異なる原因によって発症します。若年性の認知症も存在しますが、発症者の多くは高齢者です。

認知症について詳しくはこちら

痴呆症とは

前述のとおり痴呆症は認知症の旧称で、現在は使用されていません。差別や偏見を助長し、病気の早期発見や適切な措置を妨げるという懸念から「認知症」という呼称に変更されました。痴呆症の名称変更は、社会認識の変化や医療の進歩が反映された結果といえるでしょう。

もの忘れとは

もの忘れは日常生活で誰にでも起こり得る一時的な現象です。ストレスや疲労、加齢などが原因でもの忘れは起きやすくなりますが、日常生活において支障はほとんどありません。ただし、もの忘れが頻繁に起こる場合、認知症の初期症状の可能性があります。もの忘れと認知症の違いを見極めるのは難しいため、専門医の診断が必要です。

認知症ともの忘れの違いについて詳しくはこちら

「もの忘れ」が初期症状に含まれる疾患

もの忘れは加齢にともなって起こる自然現象ですが、認知症を含めた病気の初期症状としてもの忘れが起こることもあります。どのような病気が潜んでいるのか詳しくみていきましょう。

「もの忘れ」が初期症状に含まれる疾患イメージ

認知症

もの忘れは認知症の代表的な初期症状です。認知症の場合、記憶力・思考力・理解力・判断力が徐々に低下していきます。「自分のいる場所がわからなくなる」「経験した出来事を丸ごと忘れてしまう」といった症状が表れた場合、認知症である可能性が高いです。

また、「怒りやすくなる」「疑い深くなる」「ものごとへの興味を失う」「身だしなみを気にしなくなる」といった特徴もあります。

うつ病

うつ病の初期症状としてもの忘れが起こることもあります。うつ病の場合は記憶障害ではなく、新しいものごとを覚える「記銘力」が低下するケースが大半です。たとえば、「新聞の内容が頭に入ってこない」「仕事の打ち合わせの内容を覚えていない」など日常生活において支障が生じます。

強いストレスや喪失感とともにもの忘れの症状が出ている場合、うつ病の可能性が考えられるため、カウンセリングや薬物治療が必要です。

脳疾患

脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、水頭症などの脳疾患も、初期症状としてもの忘れが起こる場合があります。脳疾患の場合は、頭痛や吐き気をともなうケースが大半です。もの忘れとあわせてそれらの症状がないか確認し、早めに医師の診断を受けるようにしましょう。

認知症の種類と主な症状

認知症にはさまざまな種類があります。代表的な4種類の認知症について詳しくみていきましょう。

アルツハイマー型認知症

認知症のなかでも一般的に広く知られているのがアルツハイマー型認知症です。脳内に蓄積したアミロイドβというタンパク質によって神経細胞が破壊され、脳が萎縮してしまうことで発症するとされています。

アルツハイマー型認知症は、もの忘れから始まって徐々に記憶力が低下していき、やがて「行動そのものを覚えていない」など日常生活に支障をきたすようになります。進行すると言語能力や判断力、空間認識能力も低下し、最終的には日常生活全般において介助が必要になるケースも少なくありません。

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レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、レビー小体と呼ばれる異常なタンパク質などの塊が脳内に蓄積することで発症する認知症です。ほかの認知症と同様に認知機能の低下も表れますが、初期症状としては幻視や幻聴、注意力や集中力の低下が多く見られます。加えて、手足の震えや筋肉の硬直といったパーキンソン病に似た運動障害が現れるのも特徴です。

レビー小体性認知症について詳しくはこちら

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳血管障害によって脳の血管に詰まりや破れが生じ、脳の一部が壊死することで引き起こされる認知症です。ほかの認知症と同様に、記憶力や判断力の低下のほか、歩行障害や言語障害、感情のコントロールが難しくなるなどの症状が表れます。

脳出血や脳梗塞といった脳卒中が原因となるため突然発症し、脳卒中を起こす脳の部位によって症状が変わるのが特徴です

脳血管性認知症について詳しくはこちら

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉や側頭葉が萎縮することによって発症する認知症です。はっきりとした発症原因は解明されていませんが、脳の特定の部位に蓄積される特殊なタンパク質が関与しているとされています。

ほかの認知症とは異なり、社会性の欠如や共感性の欠如、感情の抑制が効かなくなるといった行動や性格の変化が初期症状として表れるのが特徴です。また、言葉が出にくい、会話が成り立たないといった言語障害も見られるようになります。

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認知症の診断方法

認知症の疑いがある場合、医師の診断に応じてさまざまな検査が行われます。認知症の診断におけるプロセスをみていきましょう。

認知症の診断方法イメージ

専門家による面談

面談では、医師や専門家が患者本人とその家族へヒアリングを行い、記憶力や判断力、行動の変化など症状の詳細や過去の病歴について確認します。本人との意思疎通が難しいケースもあるため、日頃から家族が病状を把握しておくことが必要です。

身体検査

身体検査では、血液検査や画像診断などを行い、全身の健康状態を確認します。認知機能の低下がほかの病気や健康問題に起因するものかどうかの検査も行います。総合的な健康状態を把握し、より正確な認知症の診断を行うためにも重要なプロセスです。

認知症検査

認知症検査では、神経心理学検査と脳画像検査が行われます。神経心理学検査は、記憶力や注意力、言語能力、空間認識能力などの認知機能を詳細に評価するMMSEやCDRといった問診形式の検査です。脳画像検査では、MRIやCTなどを用いて脳の状態を確認し、認知症かどうかを判断します。

認知症の主な治療法

認知症に有効な治療法には「薬物療法」と「非薬物療法」の2種類があります。具体的にどのような治療を行うのかそれぞれ詳しくみていきましょう。

薬物療法

薬物療法は、薬を使用して認知症の症状を緩和する治療法です。おもに、コリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬が使用されます。

コリンエステラーゼ阻害薬は、記憶力や集中力と関連する神経伝達物質であるアセチルコリンの分解を阻害する薬です。NMDA受容体拮抗薬は、神経細胞を保護し記憶障害を抑制する効果があると言われています。いずれも副作用や個人差があるため、医師と綿密に相談しながら治療を進めましょう。

認知症の薬について詳しくはこちら

非薬物療法

非薬物療法は、薬を使わずに認知症の症状緩和を試みるアプローチです。代表的なものに認知機能訓練、リハビリテーション、心理療法、音楽療法、運動療法などがあります。何を行うかは患者個々の特性やニーズに応じて選択することが重要です。加えて、薬物療法と併用することで相乗効果を期待できます。

認知症を予防するためにできること

認知症は治療によって進行を遅らせることができますが、認知症を未然に防ぐためのアクションも重要です。認知症を予防するためにできることを紹介します。

早期発見を心がける 体を適度に動かす 栄養価の高い食事をとる 趣味を楽しむ

認知症を予防するためにできることイメージ

早期発見を心がける

認知症の予防は早期発見が重要です。認知症の兆候が表れた段階ですぐに対応すれば、早期診断により適切な治療やサポートを迅速に開始できるため、病気の進行を遅らせることが可能です。

自立した生活を可能な限り長く維持するためにも、定期的な健康チェックや認知機能のテストを受けるようにしましょう。また、家族や友人など周囲が異変に気づいた場合は、すぐに医療機関で診察を受けさせる必要があります。

認知症の早期発見のためのチェックリストについてはこちら

体を適度に動かす

適度な運動は脳への血流を増加させ、神経細胞の健康維持につながります。アルツハイマー病の要因となるアミロイドβが蓄積するのを防ぐ効果も期待できるでしょう。

ウォーキングやジョギング、ヨガなどの有酸素運動はとくに効果的です。運動はストレス軽減にも寄与し認知症のリスクを下げます。週に2〜3回ほどは適度に体を動かして、脳に刺激を与えましょう。

栄養価の高い食事をとる

認知症予防には、栄養価が高くバランスの取れた食事も重要です。とくに、オメガ3脂肪酸を含むサバやサンマなどの魚介類や、抗酸化物質を含む緑黄色野菜や果物は脳の健康をサポートします。過剰な糖分や脂肪の摂取は避け、食物繊維を多く含む食品を積極的に取り入れるようにしましょう。

また、地中海食・DASH食という2つの食事法を組み合わせたMINDダイエットも認知症予防に効果的とされています。

認知症予防に効果的な食事について詳しくはこちら

趣味を楽しむ

読書や音楽、手芸、ボランティア活動など趣味や余暇活動も、脳を活性化させ認知症予防になります。脳の可塑性が高まり認知機能の低下を防止できるため、新しいことに積極的に挑戦するのがおすすめです。また、趣味や余暇活動を通じて周囲の人々と交流することで、心身の健康も維持できるでしょう。

男女共通 男性 女性
グラウンド・ゴルフ
旅行
ゴルフ
パソコン
釣り
写真撮影
手工芸
園芸・庭いじり

出典:辻大士ほか「高齢者の趣味の種類および数と認知症発症」(2020)

認知症を正しく理解して予防に努めよう

認知症へ名称変更されたことによって、以前に比べると認知症への理解は深まってきていますが、高齢化にともない認知症患者の数は年々増えています。認知症には有効な治療法が見つかっておらず、認知症になる前にいかに予防できるかが重要です。

単なるもの忘れと認知症の境目を自分で判断するのは難しいため、心配な場合はお近くの医療機関や相談機関で相談するようにしましょう。

認知症が発症すると根治させることは難しいため、進行を抑えることが大切です。そのため、普段の生活で可能な限り対策をする必要があります。認知症を発症するリスクを軽減させたり、進行を抑えたりする方法は、現在も研究が進められています。ぜひ、認知症に関する最新研究を下記よりご覧ください。

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