04認知症コラム
認知症の方が転倒しやすい原因と予防法|
転倒しやすい場所も解説
2026.06.17
認知症の方は、判断力や注意力が低下する傾向にあるため、通常よりも転倒しやすいとされています。また、薬の副作用によりふらつく場合もあります。認知症の方の転倒を予防する方法や転倒した場合の対応についてまとめました。ぜひ参考にして、転倒対策を始めてください。
認知症の方が転倒しやすくなる6つの原因
認知症の方は高齢者が多いため、一般的に転倒しやすいとされています。また、高齢であること以外にも、さまざまな原因で転倒しやすい状態にあります。主な原因について見ていきましょう。
判断力・注意力が低下するため
歩行中に注意が分散しやすいため
段差や距離感を誤認しやすいため
不安・混乱が行動を不安定にするため
薬の副作用により眠気・
ふらつきが出やすいため
見当識障害により環境の
理解が難しくなるため
判断力・注意力が低下するため
認知症は認知力が低下した状態です。危険を予測する力も弱くなり、段差や障害物に気づきにくくなる傾向にあります。
視線が固定されやすく、周囲への注意が向きにくくなることも転倒の原因となるでしょう。また、歩行中に声をかけられると慌ててしまい、転倒するケースも見られます。
歩行中に注意が分散しやすいため
認知症の方は物事を処理する能力が低下する傾向にあるため、2つ以上のことを同時にこなすのが困難になります。「歩きながら考える」「話しながら歩く」といったことが難しくなり、歩行が不安定になるケースもあるでしょう。
歩いている途中で話しかけられたり、手に物を持った状態で歩いたりすると注意が分散し、歩行バランスを崩すこともあります。また、処理能力の低下により、方向転換や段差の昇降に支障が出ることも少なくありません。
段差や距離感を誤認しやすいため
認知力が低下すると、空間認識力にも影響をおよぼすことがあります。段差や障害物の高さや位置を正確に判断できず、転倒につながることもあるでしょう。
また、床の模様や映った影などを段差と誤認して転倒したり、ドアや壁との距離感をつかめずぶつかったりすることもあります。
不安・混乱が行動を不安定にするため
もの忘れや転倒、失敗などの経験が多くなると、認知症の方の不安は強まります。注意が散漫になり、さらに転倒しやすくなることもあるでしょう。
徘徊や焦燥といった認知症の周辺症状(BPSD)が増えると、安全性を考慮しない行動が増えることもあります。足元が不安定な場所に入り込み、転倒するケースもあるでしょう。
また、認知症の方には、夕方になると落ち着かなくなったり家に帰りたがったりする「夕暮れ症候群」が見られることも少なくありません。意識が混乱し、他の時間帯よりも転倒リスクが高くなることもあります。
薬の副作用により眠気・ふらつきが出やすいため
認知症の治療薬や抗不安薬、睡眠薬を服用していることも多いため、副作用により眠気やふらつきが生じることもあります。
また、立ち上がる際に血圧が低下し、めまいによる転倒が起こることもあるでしょう。
認知症の方は複数の薬を服用していることも多いです。歩行が不安定になることも想定し、薬を調整したり段差のない環境を準備したりすることが必要といえます。
見当識障害により環境の理解が難しくなるため
見当識障害とは、時間や場所、人物などを認識する力が低下した状態です。認知症の方は見当識障害が見られることがあり、慣れ親しんだはずの家の中や近所の道で迷子になり、歩き回って転倒することもあります。
時間の感覚が乱れることにより、暗がりの中の外出が増えて転倒することも少なくありません。また、歩いている途中に目的地を見失い、あるいは本来の目的地を思い出し、急に方向転換をして転倒するケースもあります。
認知症の方が転倒しやすい場所
トイレ・脱衣所
認知症の方は見当識障害により時間を把握する能力が低下したり、記憶障害により短時間の中で起きた出来事を記憶しにくくなったりすることがあります。そのため、さっきトイレに行ったばかりでも「そういえばトイレに行かなくては」と慌ててトイレに向かい、転倒することもあるでしょう。
また、場所を把握する能力が低下したことにより、段差やマットでつまずくケースも見られます。トイレや脱衣所の床が滑りやすい材質なら、さらに転倒リスクが高くなるため注意が必要です。
寝室
認知症の方が転倒しやすい場所として、よく挙げられるのがベッド周辺です。段差や電気器具のコード、カーペットの端・弛みなどにつまずいて転倒することがあります。
また、時間の混乱や不穏により急に起き上がることで、ふらつき(起立性低血圧)が生じ、転倒につながることもあります。暗い中で歩き出すとさらに転倒リスクが高まるため、足元灯を点けておくことも検討してみましょう。
廊下・段差
空間認識力が低下することで段差の高さを誤認し、廊下や階段で転倒する方も少なくありません。また、反射的に判断・行動することが難しく、ふらついても手すりをつかまずにバランスを崩すケースもあります。
判断や行動の遅れは、屋外での転倒にもつながることがあるため注意が必要です。例えば、曲がり角で人や物に気づくのが遅れ、ぶつかったりこけたりすることがあります。
玄関
バリアフリー仕様の住宅でも、玄関には多少の段差があることが一般的です。段差の高さを正確に認識せず、足を引っかけて転倒することもあるでしょう。
また、靴を脱ぎ履きする際には姿勢が不安定になりがちです。時間に余裕がないときには気持ちが焦り、さらに転倒リスクが高まります。
浴室
浴室の床はタイルなどの滑りやすい素材でできていることがあります。濡れるとさらに滑りやすくなるでしょう。
しかし、認知症の方は「滑りやすい場所だ」と認識せず、注意をせずに足を踏み入れて転倒することがあります。また、湯気や光の反射で周囲の様子が分かりにくくなることや、体温の変化によりふらつきやすくなることも転倒の原因の一つです。
屋外
見当識障害や判断力の低下により、距離感を誤認して段差や側溝などでつまずくことがあります。また、目的地を誤って危険な場所に足を踏み入れたり、坂道や凸凹道で転倒したりすることもあるでしょう。
認知症の方が転倒することの危険性
認知症の方が転倒すると、さまざまなリスクが生じます。たとえば、一度転倒すると「また転ぶのでは?」と不安になり、外出を避けるようになりかねません。その結果、さらに筋力が低下して再度転倒するといった悪循環が生まれることもあります。
また、高齢者は骨粗しょう症により骨がもろくなっていることも多いため、転倒により骨折するケースも見られます。大腿骨の骨折から寝たきりになり、筋力と歩行能力が低下して要介護状態になってしまうことも少なくありません。骨折により入院すると、環境の変化がストレスとなり、さらに認知機能の低下が進むこともあります。
- 骨折のリスクが高い(特に大腿骨頸部骨折)
- 骨折をきっかけに要介護度が上がりやすい
- 生活の質(QOL)が大きく低下する
- 入院や環境変化で認知症が進行しやすくなる
- 転倒恐怖や筋力低下で再転倒のリスクが高まる
認知症の方の転倒を予防するための5つの方法
認知症の方の転倒を予防するには、周囲のサポートが欠かせません。ここでは、すぐにでも実施できる転倒予防の方法を紹介します。
転倒しにくい環境を整える 身体機能を維持・改善する 周辺症状(BPSD)に合わせて見守り・声かけを行う 薬の内容と服薬タイミングを見直す 生活リズムを整えて夜間の混乱を減らす
転倒しにくい環境を整える
まずは、転倒リスクの減る環境を整えましょう。段差や障害物に気づきにくいという特性を理解し、物理的な危険を減らすことが必要です。
また、暗がりや影を誤認する可能性もあるため、照明の改善が必要になる場合もあります。リフォームをする場合は、家の中の動線がシンプルになるように部屋やドア、廊下などを配置しましょう。
- 具体例
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- 段差をなくす
- スロープを設置する
- 廊下やトイレの照明を明るくする
- 家具を減らして動線を広くする
身体機能を維持・改善する
転倒しにくい身体を作るためにも、身体機能の維持が不可欠です。認知症の方は活動量が低下しやすいため、普段から習慣的に運動するようにしましょう。
毎日運動を続けることで、歩行の安定にもつながります。また、歩く機会が増えれば、注意力や下肢筋力の維持にもつながるでしょう。
- 具体例
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- 椅子立ち・つま先立ちなどの下肢筋トレ
- 片足立ち・足踏みなどのバランス訓練
- 毎日の散歩や屋内歩行
周辺症状(BPSD)に合わせて見守り・声かけを行う
認知症の周辺症状(BPSD)を理解し、適切に対応することでも転倒予防につなげられます。たとえば、不安や混乱、徘徊などの周辺症状は、歩行を不安定にするため、転倒の要因になることも少なくありません。
認知症の方が安心して過ごせるように声かけをすることで、不安や混乱を鎮め、安定した歩行を実現しやすくなります。また、認知症の方のペースに合わせて見守ることで、焦りや早歩きを防ぎ、ひいては転倒予防にもつながるでしょう。
- 具体例
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- 不安が強いときは落ち着いた声でゆっくり話す
- 徘徊が増える時間帯は近くで見守る
- 急ぎ歩きしそうなときは
「ゆっくりで大丈夫」と声をかける
薬の内容と服薬タイミングを見直す
睡眠薬や抗不安薬などを服用している場合は、眠気やふらつきといった副作用が生じることがあります。また、複数の薬剤を併用している場合も、歩行の不安定につながるため注意が必要です。
ふらつきが気になる場合は、医師に相談してみるのもよいかもしれません。
服薬タイミングや薬剤の種類を変更することで、転倒を予防しやすくなることがあります。
- 具体例
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- 睡眠薬・抗不安薬の量や種類を医師に相談する
- 日中に眠気が出る薬は服薬時間を調整する
- 多剤併用の場合は薬剤師に相互作用を確認する
生活リズムを整えて夜間の混乱を減らす
認知症の方は睡眠が不規則になると夜間の不穏や徘徊が増える傾向にあるため、生活リズムを整えることが、夜間の転倒予防につながる場合があります。
睡眠リズムを崩さないためにも、昼間の活動量を増やすことが大切です。日中にしっかりと動くことで夜は自然に眠気が生じ、混乱した状態が生じにくくなるでしょう。また、寝室環境も見直してください。ベッド周りの小さな段差や置き物などが転倒の原因になることもあります。
- 具体例
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- 昼間に散歩や軽い運動を取り入れる
- 就寝前のテレビ・スマホを控える
- 寝室の照明・温度・動線を整える
認知症の方が転倒したときの対応
転倒したときの対応を理解しておくことで、さらなるトラブルを回避できることもあります。基本の対応について見ていきましょう。
身体の状態を観察する
まずは身体状態を正確に把握しましょう。認知症の方は痛みを的確に伝えられないこともあるため、手足の動きや外傷などから判断することが必要です。
意識状態が変化している場合は、頭部を打った可能性があります。早く気づき、医療機関で適切な処置が受けられるようにしましょう。
- 行うべきこと
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- 痛みのある部位(足・腰・腕など)を確認する
- 出血・腫れ・変形がないかを見る
- 意識がはっきりしているか声をかけて確認する
頭を打っていないか確認する
頭部外傷がある場合は、たとえ軽症のように見えても注意が必要です。意識状態を確認し、「手足に力が入るか」「しびれを感じていないか」など質問してみてください。
認知症の方は自分自身の身体の状態を正確に把握していないことがあり、痛みや違和感があってもすぐに周囲に伝えるとは限りません。また、ある程度時間が経過してから吐き気がする、ろれつが回らないといった症状が見られることもあるため、しばらく様子を見ることも大切です。
- 行うべきこと
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- 頭部に出血・たんこぶ・痛みがないか触って確認する
- 吐き気・ぼんやり・会話の違和感がないか観察する
- 直前の状況を本人に聞ける範囲で確認する
医療受診が必要か判断する
症状の重症化や見落としを防ぐためにも、異変が見られたときはすぐに医療機関を受診するようにしましょう。認知症の方は症状を軽く見せようとすることもあるため、発言を鵜呑みにするのは危険です。
早期に対応することにより、骨折や頭部外傷の回復が大きく左右されます。また、転倒直後には症状がなくとも、数ヶ月後に症状が生じることもあるため、転倒後の様子を長期的に観察することも大切です。
- 行うべきこと
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- 歩けない・強い痛み・腫れがある場合は受診を検討する
- 頭を打っていて様子がいつもと違う場合は
早めに医療機関を受診する - 出血が止まらない・変形がある場合は救急対応を考える
危険な対応を避ける
対応を誤ると症状悪化につながるだけでなく、再転倒を招くリスクもあります。また、転倒してすぐに身体を動かすと、骨折や痛みを悪化させる可能性もあるため、注意が必要です。
不注意で転倒した場合でも、頭ごなしに叱責するのは避けましょう。認知症の方の不安や混乱を強め、転倒リスクをさらに高める可能性があります。
- 行うべきこと
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- 無理に立たせたり歩かせたりしない
- 転倒を叱ったり責めたりしない
- その場で急に抱え上げない
認知症による転倒に関するよくある質問
認知症の方の転倒について、よくある質問とその答えをまとめました。転倒・骨折の予防のためにも、ぜひチェックしてみてください。
Q認知症の方が夜間に転倒しやすいのはなぜですか?
下肢の筋力や認知力の低下により足元がふらつきやすくなることが原因です。また、睡眠薬や睡眠導入剤を服用している場合や視力に問題がある場合も、足元がふらつき、転倒しやすくなります。
Q認知症の方が転倒を繰り返す場合の
対策方法はありますか?
生活動線の見直しや段差・障害物の解消などにより、転倒を減らせることがあります。また、滑りやすい床を張り替える、電気製品のコードやカーペットなどの引っかかりやすいものを片付けるなどの対策も有効です。
Q徘徊中の転倒を防ぐにはどうすればよいですか?
認知症の方が徘徊しそうなときは、一緒に出かけるようにしましょう。行動に目を配り、転倒を予防できるようにサポートします。また、普段から歩きやすい靴を用意しておくことも大切です。知らない間に出ていくケースが多い場合は、徘徊を見守るGPS内蔵型の靴を履かせたりすることも検討するとよいでしょう。
Q転倒後にしばらくして症状が出ることはありますか?
転倒後数ヶ月してから症状が出ることもあります。たとえば、硬膜とクモ膜の間に出血が起こり、血腫が生じる慢性硬膜下血腫が起こると、症状が出るまでに数ヶ月かかることもあるため、気づきにくいとされています。
家庭の中から転倒対策を始めよう
認知症の方は見当識障害や認知力の低下などにより、転倒しやすくなります。転倒すると骨折や頭部外傷を生じることもあるため、注意が必要です。屋内外の転倒しやすい場所を確認し、障害物を撤去したり手すりを取り付けたりと環境を改善しましょう。
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