04認知症コラム

認知症の方が一人暮らしをするリスクは?
限界が訪れるタイミングや対策を解説

2024.11.05

認知症の方が一人暮らしをするリスクは?限界が訪れるタイミングや対策を解説イメージ

認知症の方のなかには、一人暮らしの方もいます。一人暮らしで想定されるリスクや、患者本人や家族・親戚が実施できる予防策についてわかりやすく解説。また、一人で暮らす限界を見極める方法や、一人暮らしの方が利用できる支援サービスについても紹介します。家族に一人暮らしの高齢者がいる方は、最後までチェックしてください。

高齢者世帯のうち一人暮らしの世帯は半数以上

内閣府発表の令和6年版「高齢社会白書」(※1)によると、令和5年10月1日時点の高齢化率(全体に占める65歳以上人口の割合)は29.1%です。男性1,571万人、女性2,051万人、男女比は3:4となっています。

厚生労働省発表の令和5年「国民生活基礎調査」(※2)によると、高齢者のみの世帯数は1,656万と、全世帯の30.4%です。また、高齢者の一人世帯は約855万世帯と、高齢者のみ世帯の過半数を占めています。

高齢化率は依然として増加傾向にあり、ますます高齢者の一人世帯は増加するでしょう。

※1 出典:内閣府「令和6年版高齢社会白書

※2 出典:厚生労働省「2023(令和5年 国民生活基礎調査の概況)

認知症の方が一人暮らしをする際に考えられるリスク

認知症の方の一人暮らしにはリスクが付き物です。
ここでは、想定されるリスクを紹介します。

認知症の方が一人暮らしをする際に考えられるリスクイメージ

外出の際の迷子・事故リスク

一人暮らしの方は、出かけるときも一人になりがちです。外出時にサポートを得られず、事故に遭う可能性が高くなるかもしれません。また、見当識障害により、歩きなれた道がわからなくなって迷子になることも想定されます。

認知症の中核症状について詳しくはこちら

自宅での火災リスク

もの忘れや判断能力の低下により、今まで当たり前にできていたことが突然できなくなることがあります。そのため、コンロやストーブの火を消し忘れることが増え、火災につながるかもしれません。同居人がいる場合は消し忘れに気づく可能性がありますが、一人暮らしでは気づく人がいないため注意が必要です。

生活習慣悪化のリスク

一人暮らしでは、栄養バランスのとれた食事を作ったり、決まった時間に食事をしたりできなくなる可能性があります。食料を買いに行くことが難しくなり、栄養不足になるケースも少なくありません。また、周辺症状により不眠になり、規則正しい生活が難しくなることもあります。

認知症の周辺症状について詳しくはこちら

服薬トラブルのリスク

認知症によりもの忘れが進行し、服薬を忘れる可能性があります。また、服薬自体は覚えていても、服用のタイミングや服薬量を間違えてしまい、病状が悪化するリスクも想定されるでしょう。認知症の症状が一気に進むと一人での生活が難しくなり、孤独死につながりかねません。

金銭トラブル発生のリスク

認知症により判断能力が低下している場合、不要な契約をしたり、詐欺被害に遭いやすくなったりすることがあります。また、金銭管理が難しくなり、家賃や公共料金の支払いが滞るかもしれません。周辺症状によっては、お金を盗まれたと妄想し、家族や友人とトラブルになることもあります。

認知症の妄想症状について詳しくはこちら

認知症の方の一人暮らしに伴うリスクへの予防策

一人暮らしの認知症の方が安全かつ健康に暮らすためにも、リスクに備えることが重要です。検討したい予防策を押さえておきましょう。

家族・親戚間で介護を分担する 資産状況・服薬状況・体調に
ついて把握しておく
人との繋がりをつくる

家族・親戚間で介護を分担する

一人暮らしを続ける場合でも、周囲から見守ることは可能です。家族や親戚の間で介護を分担し、様子を見つつ、必要に応じてサポートを提供できる状態にしておきましょう。

ただし、特定の人が介護を担当すると、負担が大きくなり早期に限界を迎える可能性があります。家族だけでなく仲の良い近所の方にも助けてもらい、大勢で見守る体制を構築しましょう。

資産状況・服薬状況・体調について把握しておく

かかりつけ医や服用薬、家の中の様子など、認知症の方を取り巻く状況について、家族が正確に把握しておくことが重要です。トラブルを未然に防げるだけでなく、認知症の方の安心にもつながります。認知症の方の自宅に行けないときでも、こまめに連絡を取り、体調や服薬を確認するようにしてください。

人との繋がりをつくる

家族以外に定期的に関わる仲間がいることも、一人暮らしにおけるリスクを防ぐ対策となります。認知症の方が積極的に関わるコミュニティがあれば、家族がサポートできないときもある程度の見守り体制を構築できるでしょう。また、コミュニティに関わることで活動量も維持でき、認知症の進行を抑制する効果も期待できます。

認知症の方の一人暮らしの方に訪れる限界の目安

認知症の方の一人暮らしは、遅かれ早かれ限界が訪れると想定しておきましょう。もし、火災を起こしかけたり事故に遭ったりといったトラブルがあったときは、速やかに施設への入所や訪問介護の利用を検討してください。

暮らしの中でのトラブルは工夫で対応できるものもありますが、栄養状態の悪化やボヤ騒ぎ、転倒によるケガなどは、命に関わることもあります。早めに限界を見極め、対応することが大切です。

一人暮らしの家族の認知症に気づいたら行うこと

一人暮らしの方は、認知症の発見が遅くなる可能性があります。早期発見・早期治療のためにも、認知症が疑われるときは上記の順に早めに行動するようにしてください。

一人暮らしの家族の認知症に気づいたら行うことイメージ

1認知症の診断を受ける

疑わしい症状が見られるときや、本人が不安に感じているときは、早めに医師の診断を受けることが必要です。いつも通っている医療機関がある場合は、まずはかかりつけ医に相談してください。

かかりつけ医がいない場合は、脳神経内科や脳神経外科、神経科、精神科などに相談してみましょう。また、地域包括支援センターでも相談を受け付けています。

2介護認定の申請を行う

認知症と診断された場合は、認知症の方が暮らす市区町村役場の窓口で介護認定の申請を行いましょう。介護認定を受けると、介護保険を利用して介護サービスを受けられるようになります。

自治体によっては、介護認定が受けられない場合でも生活支援サービスなどを受けられることもあるため、必要に応じて活用してください。

介護認定申請の際の持ち物
  • 介護認定申請書
  • 介護保険被保険者証、もしくは健康保険の保険証
  • マイナンバー
  • 身分証

3家族全体で認知症の方の症状の特徴や傾向を把握する

介護認定を申請すると、市区町村の職員が自宅を訪問し、聞き取り調査を実施します。スムーズに対応するためにも、家族全体で現在の症状や生活の中でできなくなっていること、困りごとなどを把握し、メモしておきましょう。

日や時間によって症状が変化することもあるため、ある程度継続して認知症の方の生活を確認するようにしてください。

4同居や施設への入所を検討する

認知症の方本人の希望を尊重し、今後の生活について決めていきます。認知症の方が一人暮らしを希望している場合は、どのような工夫やサポートが必要かケアマネジャーとも相談してみてください。また、一人暮らしが難しいと判断されるときは、同居や施設への入所を検討します。

ただし急激な環境の変化は、認知症の方にとってストレスとなるので注意しましょう。新しい環境に少しずつ慣れる期間が必要です。

認知症の方が入所できる施設について詳しくはこちら

5支援サービスなどの相談先を確認し、相談する

認知症の一人暮らしの方が利用できる支援サービスについて調べておきます。サービスの種類や活用方法について理解しておくと、今すぐ利用するわけではなくても、必要になったときにスムーズに利用できるでしょう。

また、地域包括支援センターやかかりつけ医とも相談し、認知症の方の状況を共有しておくことも大切です。

認知症の有無や程度に関わりなく受けられるサービスの例

家事代行サービス 見守りカメラ 食事の宅配

認知症の方の一人暮らしでも受けられる支援サービス

認知症の方が利用できる支援サービスを紹介します。一人暮らしの方も検討してみてください。

介護保険サービス

介護保険サービスとは、要介護認定・要支援認定を受けた方が利用できるサービスです。訪問介護やデイサービスなど26種類54のサービスがあります。ケアマネジャーに相談し、ケアプランを作成してから利用してください。

自治体による支援サービス

地域によっては、認知症の方向けに独自の支援サービスを実施していることもあります。要介護認定・要支援認定を受けなくても利用できることもあるため、確認しておきましょう。たとえば、安否確認の訪問や認知症カフェなどを利用できることがあります。

認知症カフェについて詳しくはこちら

日常生活自立支援事業

日常生活自立支援事業とは、認知症の高齢者をサポートするサービスのことです。社会福祉協議会の職員が定期的に訪問し、日常生活に必要な事務手続きや金銭管理、預金の払い戻しなどを行ってくれます。ただし、申し込みは認知症の方本人に限られる点に注意が必要です。

認知症の方の一人暮らしでも受けられる支援サービスイメージ

認知症の方の一人暮らしに関するよくある質問

認知症の方の一人暮らしについて、よくある質問とその答えをまとめました。ぜひ参考にしてください。

Q近所の一人暮らしの方の認知症が疑われる場合、どのように対処すればよいでしょうか?

地域包括支援センターに電話などで相談してみてください。連絡先が分からない場合は、お住まいの自治体の高齢者福祉課に相談してみましょう。

Q一人暮らしの認知症の方が安全に暮らせるために工夫できることはありますか?

家族だけでなく地域全体で見守ることが大切です。また、家の中に段差などの躓きの原因になるものがないか確認し、必要に応じてリフォームすることも検討してみてください。

自立した生活を送るための
サポート体制を構築しよう

認知症の方の意思を尊重するためにも、本人の希望に沿ったサポートを提供することが大切です。認知症の方自身が一人暮らしを続けたいと考えている場合は、家族や親族、近隣の方などで見守り体制を構築することが理想的といえるでしょう。

しかし、病状によっては本人の希望どおりに一人暮らしを継続できないこともあります。同居や施設入所も検討し、適切なサポートを受けられるようにしてください。

認知症は発症したら完治が難しいため、普段からの予防やケアが肝心です。予防やケアに関する新しい情報を入手し、生活に取り入れるようにしましょう。最新研究については以下からご確認ください。

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