04認知症コラム
【弁護士監修】成年後見制度とは?
手続きの流れや認知症との関係を解説
2025.11.28
成年後見制度とは、認知症や知的障害などにより判断能力が十分でない方の権利を守るため、成年後見人などの援助者を選んで法律的にサポートする制度です。この記事では、成年後見制度の概要や制度を利用する際の手続きについてまとめました。また、利用時の注意点や、成年後見制度以外の認知症に備える方法についても紹介します。
成年後見制度とは?
成年後見制度とは、民法が定めるもので、判断能力が低下した方に対して、後見人等を付けることで、その方への法律的な支援を可能とする制度です。精神保健福祉法と障害者総合支援法、知的障害者福祉法などの各法律でも成年後見制度の利用促進が図られています。主に認知症や知的障害、精神障害により判断力の欠如が見られるときに利用されます。
成年後見制度の概要
成年後見制度は、認知症や知的障害などにより判断能力が十分ではない方が、安心して日常生活を送るために法律的・経済的な支援を行う制度です。親族や法律専門家などが後見人等となり、本人に代わって契約や財産管理などの法的・経済的行為を行います。
成年後見制度の目的
成年後見制度は判断能力が低い方の法的権利を守ることを目的とした制度です。本人の自己決定権を尊重しつつ、安心して暮らせる環境作りを支援します。
認知症は年齢が高くなるにつれ有病率も高くなる疾病です。高齢化社会の進展により、認知症患者の数も増加しています。認知症の方は判断能力が低下していることも多く、詐欺被害や契約トラブルなどに巻き込まれるケースも少なくありません。そういった場合に、成年後見制度を利用していれば、認知症の方の権利を守ることが可能です。
出典:厚生労働省「法定後見制度とは(手続の流れ、費用)」
成年後見制度の2つの種類
| 項目 | 法定後見制度 | 任意後見制度 |
|---|---|---|
| 主な 対象者の例 |
認知症が進行し、判断能力が不十分な人 | 将来の認知症に備えたい人 |
| 利用開始の タイミング |
判断能力がすでに低下した後 | 判断能力があるうちに契約しておく |
| 費用 |
|
|
| 後見人の種類 | 家族・親族・専門職(司法書士・弁護士など) | 本人が信頼する人(家族・知人・専門職など) |
| 後見人の決定方法 | 家庭裁判所が選任 | 本人が契約で指定(公正証書による) |
| 契約の有無 | 契約不要(裁判所の審判による) | 任意後見契約が必要(公証人の関与) |
| 主なメリット | 判断能力がなくても利用できる | 早期準備が可能で、本人の希望を反映できる |
| 主なデメリット | 本人の意思が反映されにくい場合がある | 判断能力があるうちに契約しないと利用できない |
※1:管轄の家庭裁判所に問い合わせてください。 ※2:医療機関などによって異なりますが、一般的には10万円以下です。 ※3:公証役場に問い合わせてください。
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2つの種類があります。各制度の内容を見ていきましょう。
法定後見制度
法定後見制度には、本人の状況に応じて「補助」「保佐」「後見」の3つの種類があります。どの程度のサポートが必要とするかによって、どの種類を適応するかが変わります。
法定後見人制度では、後見人(補助人・保佐人)は裁判所が決めるため、立候補者がいる場合でもその人が選ばれるとは限りません。また、後見人(補助人・保佐人)には、裁判所が決定する報酬が本人の財産から支払われます。
- 法定後見制度の3つの種類
-
補助 重要な契約・手続きなどのいくつかにおいて一人で決めることが心配な人向け 保佐 重要な契約・手続きを一人で決めることが心配な人向け 後見 多くの契約・手続きを一人で決めることが難しい人向け
任意後見制度
任意後見制度は、あらかじめ任意後見人となる者を決め、その者と契約を結んでおく制度です。契約の内容によっては任意後見人には法定後見制度以上の裁量が認められ、法的契約や財産管理の方法について、できる限り本人の意向に沿って行動することも可能です。
任意後見契約を締結した後、ご本人の判断能力が低下した時点で後見を開始することができます。ただ、後見開始に際しては家庭裁判所に任意後見監督人を選任してもらうことが必要です。また、任意後見制度では、後見人には契約に基づいた報酬が本人の財産から支払われます。
出典:裁判所「成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ」 出典:厚生労働省「法定後見制度とは(手続の流れ、費用)」
成年後見制度の手続きの流れ
法定後見制度
- STEP1判断能力が低下する
- STEP2家庭裁判所に申し立てを行う
- STEP3裁判所が審判手続きを行う
- STEP4裁判所が後見人を選ぶ
- STEP5後見人が審判を開始する
任意後見制度
- STEP1判断能力がある間に契約する
- STEP2契約を保管しておく
- STEP3裁判所に申し立てを行う
- STEP4裁判所が監督人を選ぶ
- STEP5後見人が審判を開始する
法定後見制度と任意後見制度の大きな違いとしては、後見人等を本人が選択できるかどうかという点が挙げられます。
法定後見制度では、家庭裁判所が後見人等を選定する工程が必要になります。一方で、任意後見制度では、任意後見人となる予定の人との間で契約を結び、公正証書を作成しておかなくてはいけません。
また、任意後見制度では、後見の開始に際して、任意後見監督人を家庭裁判所で選任してもらう工程が発生します。任意後見監督人の役割は、任意後見人が不正な財産管理を行っていないかなどをチェックすることです。
成年後見制度を利用する際の4つの注意点
特定の人に後見人等を依頼する場合は、成年後見制度を利用します。利用時の注意点について見ていきましょう。
後見人は信頼できる人を慎重に選ぶ
後見人(任意後見人)は、信頼できる人物であることが最優先です。弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門職にある人を後見人として選ぶ場合は報酬が発生するため、費用面も考慮しておきましょう。
また、後見人は後見人としての活動を記録し、家庭裁判所に報告するなどの義務も課せられます。したがって、家族が後見人になる場合も、仕事内容や責任について理解しておくことが必要です。
制度を開始するタイミングを見極める
可能であれば、本人の判断能力が完全に失われる前に成年後見制度の準備ができるとよいでしょう。本人の意思を正確に反映するためにも、任意後見制度や法定後見制度を活用できます。
ただし、早すぎてもトラブルの原因となることがあるため注意が必要です。医師や後見制度に詳しい専門家などに相談し、適切なタイミングで適切な制度を利用できるようにしておきましょう。
財産管理の透明性を確保する
後見人には、本人の財産の使途や契約などを記録することが義務付けられています。不正利用を防ぐためにも、家庭裁判所に定期的に正確な報告をしなくてはなりません。
また、家族間のトラブルを回避するためにも、細部まで正確に記録することが必要です。相続が予定される人とも密に連携を取り、情報を共有するようにしましょう。
制度には限界があることを理解する
成年後見制度は判断能力が十分ではない人の法律的・経済的権利を守るための制度ですが、完全に本人の権利を守れるわけではありません。後見人の選任や運用には時間や費用がかかる場合もあり、柔軟な対応が難しいこともあります。
制度には限界があることを理解し、家族信託や生前贈与などの他の制度も利用も検討しておきましょう。
成年後見制度は認知症に備える法的支援
認知症により判断能力が低下すると、契約を締結することや財産管理が困難になることがあります。成年後見制度は、家族や弁護士、司法書士などの第三者が後見人等になり、生活や財産を守る法的支援制度です。状況に応じて制度を活かし、権利を守る工夫をしていきましょう。
- 認知症の方が成年後見制度を活用する場面の例
-
- 財産管理(例:不動産売買、預金の引き出し)
- 相続手続き(例:遺産分割協議、遺言書)
- 契約手続き(例:高額商品・サービスの購入契約、施設への入所契約)
成年後見制度以外の認知症に備えるための支援の選択肢
判断能力が低下したときのために備える支援は、成年後見制度だけではありません。主な選択肢を紹介します。
家族信託で柔軟な財産管理を実現する
家族信託とは、財産を信頼できる家族に託し、管理・運用を委任する契約制度です。成年後見制度よりも自由度が高く、本人の意思を反映しやすいとされています。後見人は、財産管理が主な業務であり基本的には資産運用が行えないため、資産運用してもらいたい場合には家族信託を検討してみましょう。
認知症の進行に備えて、事業承継や不動産管理・処分などをする際に活用されることも少なくありません。ただし、信託契約には専門家によるサポートが必要で、設計次第で期待できる効果や実現できる事柄が大きく変わります。
生前贈与で財産を早めに分配する
生前贈与とは、存命中に財産を他者に贈与することです。認知機能が低下する前に財産を家族などの相続人に贈与することで、贈与税の非課税枠を活用し、相続税対策になることもあります。
本人の希望を実現するためにも、判断能力が十分なときに実施することが必要です。ただし、贈与後に生活資金や介護費用に困ることがないよう、生前贈与する財産を適切に選ぶことが求められます。
財産管理委任契約で日常の手続きをサポートする
財産管理委任契約とは、本人が信頼できる人に代理権を与え、財産管理を委任する契約です。銀行での手続きや支払いなどの日常的な事務作業を代行してもらうことができます。
ただし、本人に十分な判断能力があるときに契約することが必要です。成年後見制度よりも柔軟なため、任意後見制度と併用して生活支援に活用することがあります。
成年後見制度に関するよくある質問
成年後見制度に関して、よくある質問とその答えをまとめました。これからご自身やご家族などの身近な方が利用を考えている場合は、ぜひ参考にしてください。
法定後見制度と任意後見制度の違いはなんですか? 認知症に備える場合は法定後見制度と任意後見制度のどちらを利用すべきですか? 成年後見制度を利用するにはどこに相談すればよいですか?
Q法定後見制度と任意後見制度の違いはなんですか?
法定後見制度は家庭裁判所で選任された人が後見人等になる制度ですが、任意後見制度は本人が指名した人が後見人等になる制度です。ただし、任意後見制度では後見人等になる人と公正証書を作成して契約を締結した後で、後見を開始する際には家庭裁判所で後見監督人等を選任してもらう必要があります。
Q認知症に備える場合は法定後見制度と
任意後見制度のどちらを利用すべきですか?
信頼できる第三者(家族や弁護士、社会福祉士など)がいる場合は、任意後見制度のほうが利用しやすいでしょう。本人が一人で決めることに不安を感じ、なおかつ家庭裁判所で後見人等が選任されてから効力が発生するため、早めに信頼できる第三者と契約を締結しておくことも可能です。
Q成年後見制度を利用するには
どこに相談すればよいですか?
法定後見制度ついての不明点は、最寄りの権利擁護相談窓口に相談できます。また、任意後見制度については公証役場での相談が可能です。手続きについての不明点は、最寄りの家庭裁判所に相談しましょう。
大切な財産を適切な制度で守ろう
認知症は誰もがなり得る病気です。判断能力が衰えた場合に備えるためにも、成年後見制度についての理解を深めておきましょう。信頼できる第三者がすでに決まっている場合は、任意後見制度の利用を見越し、公正証書を作成して契約しておくこともできます。
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