04認知症コラム
認知症は何歳からなる?若年性認知症の基本と5つの予防策
2024.11.29
認知症は何歳から発症するのか気になっている方も多いのではないでしょうか。認知症発症の平均年齢や、何歳からかかることがあるのか、また、何歳から認知機能が低下するケースが増えるのかについて解説します。認知症の予防策も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
認知症は何歳から発症する?
認知症に発症するリスクは、高齢になるほど高まることが知られています。令和6年版 高齢社会白書によると、65歳以上における認知症の有病率は12.3%(2022年時点)です。年代別にみると、65~69歳の認知症有病率は2.9%ですが、75~79歳では13.6%、85~89歳では41.4%、95歳以上では50.6%と年齢が高まるにつれ右肩上がりに上昇します。
しかし、年齢だけが認知症のリスク要因ではありません。生活習慣や遺伝的要因、環境要因も発症に影響を与えます。また、ビタミン欠乏や甲状腺疾患などが原因で認知症を発症することもあるため、兆候を見逃さないようにすることが大切です。
参考:内閣府「令和6年版 高齢社会白書 2 健康・福祉」
65歳未満でも「若年性認知症」に注意が必要
認知症は高齢者のみが発症する病気ではありません。65歳未満で発症する認知症「若年性認知症」について見ていきましょう。
若年性認知症とは
若年性認知症とは、65歳未満で発症する認知症のことです。認知症は男性よりも女性が多いのに対し、若年性認知症は女性よりも男性のほうが多い傾向にあります。生活に支障が生じますが、更年期障害やうつ病だと誤って判断し、発見が遅れることも少なくありません。
若年性認知症の患者は推計約3.57万人(2021年3月1日現在)です。18歳以上64歳以下の人口10万人における有病率は50.9人で、認知症と同じく年齢が高くなるほど有病率は上昇します。
参考:厚生労働省「 若年性認知症実態調査結果概要(R2.3)」
若年性認知症の原因
高齢者の認知症と同様に、若年性認知症の原因となる疾患はアルツハイマー病が半数以上です。次に多いのが血管性認知症で、前頭側頭型認知症、外傷による認知症と続きます。以前は血管性認知症が最も多い原因疾患とされていましたが、診断精度が向上したことで原因疾患の割合が変化したと考えられます。
なお、アルツハイマー病はアミロイドβやタウ蛋白というタンパク質が脳に蓄積することが原因と考えられています。また、家族にアルツハイマー病の方がいる場合に発症しやすいことからも、環境因子や生活様式が影響を与える疾病といえるでしょう。
若年性認知症は何歳から?
若年性認知症の平均発症年齢は51.3歳で、そのうち3割程度が50歳未満で発症しています。20代や30代で発症することもあり、年齢を問わず罹患する可能性がある疾病です。
働き盛りで発症することも多いため、経済的な問題が生じることも少なくありません。たとえば、配偶者が介護と仕事・家事などを一人で背負うことになったり、親の介護と本人の介護が重なったりすることもあります。また、子どもの教育や就職に影響を及ぼし、人生設計が大きく変わることもあるでしょう。
年齢 | 人口10万人当たり有病率(人) | 認知症 患者(人) |
||
---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 総数 | ||
18-19 | 1.6 | 0.0 | 0.8 | 20 |
20-24 | 7.8 | 2.2 | 5.1 | 370 |
25-29 | 8.3 | 3.1 | 5.8 | 450 |
30-34 | 9.2 | 2.5 | 5.9 | 550 |
35-39 | 11.3 | 6.5 | 8.9 | 840 |
40-44 | 18.5 | 11.2 | 14.8 | 1,220 |
45-49 | 33.6 | 20.6 | 27.1 | 2,090 |
50-54 | 68.1 | 34.9 | 51.5 | 4,160 |
55-59 | 144.5 | 85.2 | 115.1 | 12,010 |
60-64 | 222.1 | 155.2 | 189.3 | 16,040 |
18-64 | 57.8 | 36.7 | 47.6 | 37,750 |
若年性認知症は早期発見が重要
若年性認知症の治療法はまだ確立されていません。一般的な認知症と同様、早期発見し、進行を遅らせることが大切です。
たとえば、アルツハイマー病は、薬物療法により進行を遅らせられるケースもあります。日常生活を維持し、介護の負担を軽減することにもつながるため、もの忘れやミスの増加、意欲の減退などがみられたときは早めに医療機関を受診するようにしてください。
認知症の5つのサイン・兆候
認知症は早期に発見することで、早期に治療を開始でき、日常生活を維持しやすくなります。よくみられる兆候を紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
もの忘れが増えた
もの忘れの頻度が増えたときは、もしかしたら認知症が原因かもしれません。早めに医療機関を受診しましょう。
- こんな場合に注意
-
- 物の名前がスムーズに出てこない
- 何度も同じ話や質問をする
- 置き忘れ、片付け忘れが増える
時間・場所がわからなくなった
時間や日、曜日などの感覚に乱れが生じるときも、認知症を疑われます。なお、時間や場所の感覚の乱れ(見当識障害)は、通常は認知症が進行するとみられるようになる症状です。しかし、初期の時点でもみられることがあるため、見逃さないようにしましょう。
- こんな場合に注意
-
- 季節感のない服装をする
- 長時間待つことが難しくなる
- 何度も行ったことがある場所だが、道に迷ってたどり着けない
集中力が低下した
認知症を発症すると、理解力や判断力が低下し、仕事や家事においてミスが増えることがあります。また、考えるスピードが遅くなり、集中力が低下したように感じるかもしれません。
- こんな場合に注意
-
- 簡単な計算をするのに以前よりも時間がかかる
- テレビや会話の内容を理解できない
- 2つ以上のことを同時に処理できない
計画が立てられなくなった
計画を立てて、順序よく実行することが難しくなることがあります。家事や仕事の段取りが悪くなったと感じるときは、早めに医療機関を受診してください。
- こんな場合に注意
-
- 予定時間から逆算して準備できなくなる
- 食事の準備に時間がかかる
- 何度も同じ食材を購入し、余らせてしまう
好み・性格が変化する
認知症に罹患すると、好みや性格が変わることもあります。今まで好きだったものや趣味に興味がなくなったり、温厚だった性格が怒りっぽく短気になったりすることも少なくありません。また、落ち込みやすくなることもあります。
- こんな場合に注意
-
- 状況からではなく言葉で判断して機嫌を損ねる(「そんな馬鹿な」という相手の発言を、自分を馬鹿といわれたと理解して怒り出す)
- ささいなことで機嫌が悪くなる、機嫌が悪いのを隠さない
- 趣味や好きなテレビ番組などに興味を示さなくなった
ただのもの忘れ?それとも認知症?
認知症によるもの忘れと加齢によるもの忘れは異なります。たとえば、朝ご飯に食べたものを忘れるのは加齢によるもの忘れですが、朝ご飯を食べたこと自体を忘れるのは認知症によるもの忘れです。また、認知症によるもの忘れは、自覚が乏しく、日常生活に支障が生じやすい傾向にあります。
急激にもの忘れが増えるのも、認知症の特徴です。加齢によるもの忘れよりも速く進行するため、周囲の人からも指摘されることが増えるかもしれません。
認知症 | もの忘れ | |
---|---|---|
忘れ方 | 体験・出来事自体を忘れる (朝ご飯を食べたこと自体を忘れる) |
体験・出来事中の一部を忘れる (朝ご飯のメニューを忘れる) |
記憶 | ヒントがあっても思い出せない | ヒントがあると思い出せる |
自覚 | 忘れている自覚がない | 忘れている自覚がある |
日常生活へ の影響 |
日常生活に支障がある | 日常生活への支障はあまりない |
症状の進行 | 進行する | 比較的ゆっくりと進行する |
認知症を発症する前にしたい5つの予防活動
認知症の予防とは、認知症になることを予防することではなく、認知症になるのを遅らせること、また、認知症になった場合でも進行を緩やかにすることです。今すぐ取り組める認知症の予防活動を紹介します。
適度に運動をする
運動習慣を身につけることは、認知症予防に効果的とされています。身体を動かすことで血流が良くなり、脳に酸素と栄養が供給されます。ウォーキングやジョギング、サイクリングなど、無理なく続けられる運動を始めてみてはいかがでしょうか。
最近の研究では、普段から歩行習慣のある方は認知機能が低下しにくいことがわかってきました※。普通の速さで歩いても血流は促進されるため、無理のない速さで歩くようにしてください。
また、運動をする際に「ながら作業」を組み合わせることでも、認知症予防の効果を高められます。ウォーキングしながら音楽を聴いたり、テレビを観ながらストレッチをしたりすることで、脳に複数の刺激を与えましょう。
※出典:地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所
「歩行は、なぜ認知症予防につながるのか?」
質のよい睡眠を心がける
質のよい睡眠も、認知症予防の効果を期待できます。個人差はありますが、少なくとも5.5時間程度、できれば6.5~7時間は睡眠時間をとるようにしましょう。
また、睡眠のタイミングにも注意が必要です。規則正しい生活を送るためにも、同じ時間に寝て同じ時間に起きるように意識してください。夜間の睡眠の質があまりよくないときは、昼食後に30分ほど昼寝をするのも一つの方法です。
周囲とのコミュニケーションを増やす
周囲とのコミュニケーションも、認知症予防にとって重要なポイントです。家族や友人といった慣れ親しんだ人とのコミュニケーションだけでなく、積極的に社会や地域と関わり、新しい人ともコミュニケーションをとるようにすることで、脳が刺激されます。
孤立を避けるために、地域イベントやサークル活動に参加することもおすすめです。積極的な交流が、認知機能の活性化につながるでしょう。
脳トレを取り入れる
脳トレ(脳トレーニング)を日常生活に取り入れることもおすすめです。クロスワードパズルや将棋、チェスなど、楽しく長続きするものを選ぶようにしてください。
また、新しい言語や楽器を習うことや、絵を描いたり文章を書いたりする創造的な活動も、脳を活性化する効果が期待できます。速さや量を調整し、ストレスを感じない程度に取り組みましょう。
意欲的に活動する
家に閉じこもったり、人とのコミュニケーションを避けたりすると、体力が低下するだけでなくもの忘れが増える可能性があります。意欲的に活動することを心がけ、認知症の予防につなげていきましょう。
たとえば、新しい趣味を持つことも、脳を活性化する方法です。旅行や料理、ガーデニングなどを始めてみてはいかがでしょうか。また、楽しみながら取り組むことや、目標を持つことも脳の健康維持に役立ちます。
認知症予防は何歳から始めてもよい
一般的に脳の機能が低下するのは、40代後半からとされています。そのため、認知症予防は40代から始めるとよいといわれることがありますが、とくに何歳から始めなくてはいけないと決まっているわけではありません。いつ始めても遅すぎるということはないため、まだの方はぜひ今から取り組んでください。
なお、認知症の予防活動のほとんどは、睡眠や運動などの生活習慣の見直しです。認知症に限らず健康で過ごすために必要なことのため、ぜひ始めていきましょう。
認知症の予防活動を始めよう
認知症の予防活動に取り組むことで、発症を遅らせるだけでなく、発症後も進行を遅らせられることがあります。運動習慣を身につける、睡眠時間を確保するなど、普段の生活を見直すことからぜひ始めていきましょう。また、ゲームや創作活動など、脳を刺激する活動に取り組むこともおすすめです。
認知症は一度発症すると治療が難しいため、普段からの予防やケアが大切といえます。認知機能を維持する方法についての知識を深め、実践してみてはいかがでしょうか。ぜひ以下から最新研究をチェックしてみてください。