04認知症コラム
認知症の割合はどのくらい?
人口・年齢・種類・地域別の割合を解説
2024.11.29
日本のように高齢化が進む国では、認知症の割合が増加傾向にあります。今後もその割合は増え続けると見込まれており、社会全体での対応はもちろん、個人レベルで予防意識を高めることも必要です。この記事では、認知症の割合を人口・年齢・種類・地域別に解説します。
【人口】から見る認知症の割合
日本は世界でも有数の長寿国で、2024年時点の日本の総人口である約1億2,300万人のうち、65歳以上の高齢者数は約3,600万人と全人口の29.3%にのぼります。厚生労働省の調査によると、2022年時点で高齢者のうち認知症を患っている方は443万人で、65歳以上の高齢者の12.3%です。しかし、2025年には認知症患者数が700万人を超え、高齢者の5人に1人が認知症になると予測されています。
認知症発症のリスクは75歳から急激に増加する傾向にあります。団塊の世代が75歳以上となる2025年以降、認知症患者の増加はさらに加速すると見込まれており、対策の強化が必要です。
- 65歳以上の認知症患者の推定者と推定有病率
【年齢別】に見る認知症の割合
認知症は性別にかかわらず高齢になるほどリスクが高まる傾向にあります。65歳〜69歳の認知症患者の割合は男性が2.8%、女性が3.8%ほどです。しかし、75歳〜79歳になると男性が11.7%と倍以上、女性は14.4%で4倍近く上昇します。
一般的に認知症は高齢者に多い病気ですが、65歳未満で発症する「若年性認知症」も存在します。2020年に厚生労働省が発表した調査結果によると、全国の若年性認知症患者数は3万5,700人と推計されています。18歳〜64歳人口における割合を見ると人口10万人あたり50.9人で、高齢者の有病者数に比べるとかなり少ない数です。
認知症は早期発見・早期治療によって症状を遅らせることが可能です。年齢別のデータを把握しておけば、早めに具体的な予防策やケアを施せます。
【種類別】に見る認知症の割合
アルツハイマー型認知症は、認知症のなかで最も有病者数が多く、全体の約70%を占めます。近年では、生活習慣病との関連が指摘されており、予防には生活習慣の改善が重要です。
次に多い認知症は血管性認知症で、全体の約20%にのぼります。血管性認知症は脳梗塞や脳出血など脳卒中によって引き起こされる認知症で、障害を起こした脳の部位によって症状が異なる点が特徴です。
全体の約4%にあたるレビー小体型認知症は、レビー小体と呼ばれる特殊なタンパク質が脳の神経細胞に蓄積しながら発症します。幻視やパーキンソン病のような初期症状があらわれ、認知機能の障害は変動を繰り返しながら進行していくのが特徴です。
前頭側頭葉型認知症は全体の約1%程度で、発症するケースはまれと考えられていますが、見過ごされているケースもあり注意が必要です。脳の前頭葉と側頭葉が萎縮することで発症し、50歳〜60歳代の比較的若い世代で有病率が高い傾向にあります。
発症する割合や症状は認知症の種類によって異なります。適切な診断と治療を行うためにも早期発見・早期予防が重要です。
- 主な認知症の種類別割合
【地域別】に見る認知症の割合
地域別に認知症の割合をみてみるとさまざまなことがわかります。都道府県別の高齢者の割合と認知症患者の割合、認知症のリスクが高い地域の特徴についてみてみましょう。
【都道府県別】高齢者の割合
都道府県別の高齢化率をみてみると、秋田県が最も高く38.1%、東京都が最も低く22.9%です(※2021年時点)。今後、高齢者の割合はすべての都道府県で上昇し、2045年には最も高い秋田県では50.1%になり、最も低い東京でも30%を超えると見込まれています。
また、都市の規模別の推移をみると、人口が多い地域ほど65歳以上の高齢者人口は増加し、人口5万人未満の地域では逆に減少していく見込みです。
令和3年(2021) | 令和27年(2045) | 高齢化率の伸び (ポイント) |
|||
---|---|---|---|---|---|
総人口 (千人) |
65歳以上人口 (千人) |
高齢化率(%) | 高齢化率(%) | ||
北海道 | 5,183 | 1,686 | 32.5 | 42.8 | 10.3 |
青森県 | 1,221 | 419 | 34.3 | 46.8 | 12.5 |
岩手県 | 1,196 | 409 | 34.2 | 43.2 | 9.0 |
宮城県 | 2,290 | 655 | 28.6 | 40.3 | 11.7 |
秋田県 | 945 | 360 | 38.1 | 50.1 | 12.0 |
山形県 | 1,055 | 362 | 34.3 | 43.0 | 8.7 |
福島県 | 1,812 | 585 | 32.3 | 44.2 | 11.9 |
茨城県 | 2,852 | 860 | 30.1 | 40.0 | 9.9 |
栃木県 | 1,921 | 569 | 29.6 | 37.3 | 7.7 |
群馬県 | 1,927 | 589 | 30.5 | 39.4 | 8.9 |
埼玉県 | 7,340 | 2,000 | 27.2 | 35.8 | 8.6 |
千葉県 | 6,275 | 1,748 | 27.9 | 36.4 | 8.5 |
東京都 | 14,010 | 3,202 | 22.9 | 30.7 | 7.8 |
神奈川県 | 9,236 | 2,376 | 25.7 | 35.2 | 9.5 |
新潟県 | 2,177 | 723 | 33.2 | 40.9 | 7.7 |
富山県 | 1,025 | 337 | 32.8 | 40.3 | 7.5 |
石川県 | 1,125 | 338 | 30.1 | 37.2 | 7.1 |
福井県 | 760 | 236 | 31.0 | 38.5 | 7.5 |
山梨県 | 805 | 252 | 31.3 | 43.0 | 11.7 |
長野県 | 2,033 | 657 | 32.3 | 41.7 | 9.4 |
岐阜県 | 1,961 | 605 | 30.8 | 38.7 | 7.9 |
静岡県 | 3,608 | 1,099 | 30.5 | 38.9 | 8.4 |
愛知県 | 7,517 | 1,918 | 25.5 | 33.1 | 7.6 |
三重県 | 1,756 | 531 | 30.3 | 38.3 | 8.0 |
滋賀県 | 1,411 | 376 | 26.6 | 34.3 | 7.7 |
京都府 | 2,561 | 758 | 29.6 | 37.8 | 8.2 |
大阪府 | 8,806 | 2,442 | 27.7 | 36.2 | 8.5 |
兵庫県 | 5,432 | 1,608 | 29.6 | 38.9 | 9.3 |
奈良県 | 1,315 | 423 | 32.1 | 41.1 | 9.0 |
和歌山県 | 914 | 308 | 33.8 | 39.8 | 6.0 |
鳥取県 | 549 | 180 | 32.7 | 38.7 | 6.0 |
島根県 | 665 | 229 | 34.5 | 39.5 | 5.0 |
岡山県 | 1,876 | 575 | 30.6 | 36.0 | 5.4 |
広島県 | 2,780 | 827 | 29.7 | 35.2 | 5.5 |
山口県 | 1,328 | 465 | 35.0 | 39.7 | 4.7 |
徳島県 | 712 | 247 | 34.7 | 41.5 | 6.8 |
香川県 | 942 | 303 | 32.2 | 38.3 | 6.1 |
愛媛県 | 1,321 | 444 | 33.6 | 41.5 | 7.9 |
高知県 | 684 | 245 | 35.9 | 42.7 | 6.8 |
福岡県 | 5,124 | 1,445 | 28.2 | 35.2 | 7.0 |
佐賀県 | 806 | 251 | 31.1 | 37.0 | 5.9 |
長崎県 | 1,297 | 435 | 33.6 | 40.6 | 7.0 |
熊本県 | 1,728 | 551 | 31.9 | 37.1 | 5.2 |
大分県 | 1,114 | 376 | 33.7 | 39.3 | 5.6 |
宮崎県 | 1,061 | 351 | 33.1 | 40.0 | 6.9 |
鹿児島県 | 1,576 | 521 | 33.1 | 40.8 | 7.7 |
沖縄県 | 1,468 | 339 | 23.1 | 31.4 | 8.3 |
【都道府県別】認知症の割合
認知症の有病者数は分母が多い大都市が多い傾向にありますが、有病率をみると都市部と地方ではっきりと傾向が分かれているわけではありません。同じ首都圏、同じ地方都市でも、高いところもあれば低いところもある状況です。
地域によって発症割合が異なるのは、高齢者人口、生活環境や医療体制、社会的サポートの差などが影響していると考えられます。
都市部で認知症のリスクが高まる原因として考えられるのは、高齢者の孤立やストレスなどです。ただ、医療アクセスが良好なため、早期発見や治療が進んでいる場合もあります。一方、地方都市では医療施設や専門医の不足が課題となっており、認知症が進行してから発見されるケースも少なくありません。
高リスク地域の特徴
認知症の発症リスクが高い地域と低い地域の差が生まれるはっきりとした要因はわかっていません。ただ、いくつかの要素をもとに考えられる要因を推察することは可能です。
たとえば、生活環境や生活習慣が認知症リスクと関係している可能性は高いと考えられます。これらの可能性を踏まえたうえで、地域ごとの特性に応じた対策を行っていくことが必要です。
- 社会的な孤立が進んでいる
- 医療施設や専門医の不足
など
認知症予防のためのポイント
認知症は高齢化社会において避けられない問題ですが、早期発見・早期予防で進行を遅らせることが可能です。ここでは、日常生活のなかで意識を高める必要がある具体的なポイントについて詳しく解説します。
変化・違和感の早期発見
認知症の予防には、日常生活のなかの変化や違和感にいち早く気づくことが重要です。たとえば、「眠れない」「外出が億劫になる」「もの忘れがある」というようなケースは、健常な方でも起きることです。しかし、これらは認知症の兆候である可能性もあり、些細なことと軽視せず、頻繁に起こるようであれば確認する必要があります。
また、家族や友人など周囲が変化に気づくことで早期発見につながるため、普段からの注意深いコミュニケーションが大切です。
生活習慣の改善
認知症予防には、バランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠など健康的な生活習慣を心がけることも大切です。生活習慣の乱れは、認知症だけでなく高血圧や糖尿病など生活習慣病のリスクも高まります。
健康が損なわれると周囲とのコミュニケーションが制限され、脳の働きが衰えていく可能性があります。認知症の種類によっては生活習慣病が原因になる場合もあるため、まずは身体全体の健康を意識することが大切です。
脳の健康維持
脳の健康維持は認知症予防に直結します。生活習慣病は脳の血管や神経細胞を老化させるため、生活習慣の改善は必須です。適度な運動を行えば血流が改善し、脳に必要な酸素と栄養を供給できます。
また、脳トレなど頭を使う趣味に取り組む、対人接触を増やすなど脳を活性化させる努力も大切です。何よりこれらの大元にある「何かをしたい」という意欲が、脳の健康維持には欠かせません。そのためにも健康的な生活習慣を心がける必要があります。
メンタルの老化防止
身体・脳の健康だけでなく、メンタルの健康維持も大切です。「抑うつ感・気弱・億劫さ」といったメンタルの状態は、脳の機能を衰えさせる原因になります。
認知症になると、これまでできていたことができなくなるというショックから、塞ぎ込んでしまったり外出を避けたりするなど意欲が低下しがちです。社会性が失われると脳も衰えてしまうため、周囲と積極的にコミュニケーションを図り、意欲的で安定した精神状態を保つ必要があります。
医療機関でのサポート
認知症の予防と管理には、医療機関のサポートが欠かせません。認知症の初期症状は軽度のもの忘れなどが多く、兆候を見過ごしてしまう可能性があります。早期発見と適切な治療を行うためにも、定期的に健康診断を受診し医師と相談しながら健康状態を管理することが重要です。医療機関や専門家との連携をスムーズにし、いつでもアクセスできるような環境と準備を整えておきましょう。
認知症の割合に関するよくある質問
認知症への関心が日々高まるなか、さまざまな疑問や不安を抱えている方も多いでしょう。認知症の割合に関するよくある質問をまとめましたので、参考にしてみてください。
Q認知症は何人に一人の割合ですか?
2022年時点では、65歳以上の高齢者のうち認知症の患者数は443万人で、高齢者の8人に1人の割合です。今後も認知症患者の割合は増え続け、2025年には高齢者の5人に1人、国民の17人に1人が認知症になると推計されています。
Q70代で認知症になる割合はどのくらいですか?
70歳〜74歳では男性が4.9%、女性が3.9%、全体で4.1%です。また、75歳〜79歳では男性が11.7%、女性が14.4%、全体で13.6%の割合となっており、70代後半から認知症の割合は急激に上昇する傾向があります。
Qなぜ女性のほうが認知症の割合が多いのですか?
男性よりも女性の認知症が多い理由は、加齢によって女性ホルモンが低下することが関与していると考えられています。また、女性は男性よりも平均寿命が長いため、高齢者人口に占める割合が相対的に高くなることも統計数が多い理由の一つです。
Qなぜ日本では認知症の割合が増えているのですか?
日本で認知症の割合が増えている理由は、高齢者人口が増え続けているためです。年齢とともに認知症の発症率は高くなる傾向があり、世界でもトップレベルで高齢化が進行している日本では、今後も認知症患者の割合は増え続けると予測されています。
認知症の予防は健康的な生活習慣が大切
認知症は早期発見・早期治療が重要です。認知症の割合を年齢、認知症の種類、地域などさまざまな角度から見ることで、傾向の把握や発症要因を考察することができ予防策やケアに役立てられます。特に生活習慣の乱れによる健康状態の悪化が脳の衰えにつながるため、生活習慣の改善は必須です。
認知症には有効な治療法がなく、完治させるのは困難でしょう。しかし、認知機能の維持が期待できる方法はいくつか見つかっており、症状の進行を遅らせられる手立てとなります。以下の記事では、認知症治療に関する最新の研究について解説していますので、チェックしてみてください。