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04認知症コラム

認知症とビタミンの関係-
予防に効果的なビタミンと摂取方法

2025.07.31

認知症とビタミンの関係-予防に効果的なビタミンと摂取方法イメージ

認知症予防には、ビタミンを含む野菜や果物の摂取が役立つことがわかってきています。具体的にはどのようなビタミンを摂取すれば良いのか、また、効果的に摂取するためのポイントについてまとめました。認知症のリスク軽減のためにも、ぜひご覧ください。

認知症の進行・改善・予防に
ビタミンは関係する?

最新の研究により、いくつかのビタミンは、認知症や認知機能に関わっていることがわかってきています。例えば、ビタミンB12やB6、B1、D、葉酸は、不足すると認知機能低下のリスクが高まる可能性があります。

ただし、全てのビタミンが認知症や認知機能に関与しているわけではありません。また、摂取することで、認知症予防の効果が得られるとも限りません。現在の研究でわかっている範囲で、ビタミンと認知症、認知機能について解説します。

認知症の基礎知識については、こちらをご覧ください。

認知症とは?予防は可能?症状や対処法について解説

そもそもビタミンとは?

ビタミンとは、ヒトの身体機能を正常に保つために必要な有機化合物です。体内での合成が難しいため、食物から摂取する必要があります。

ビタミンは、代謝に必要な酵素の働きを補助したり、身体機能を正常に保つ働きをしたりする物質です。水溶性と脂溶性に大別でき、ビタミンB群やCなどの水溶性のビタミンは過剰に摂取しても尿として排出されるため、体内の量が多くなりすぎることはあまりありません。不足しないようにしっかりと摂取することが大切です。

一方、ビタミンAやD、Eなどの脂溶性ビタミンは、摂取量が多すぎると過剰症を起こす恐れがあります。必要量を把握し、適度に摂取するようにしましょう。

認知症・認知機能に関係する主なビタミン5つ

認知症や認知機能に関わる主なビタミンとしては、水溶性のB群や脂溶性のDなどが挙げられます。それぞれの働きや認知機能への影響について見ていきましょう。

ビタミンB12 葉酸 ビタミンB6 ビタミンB1 ビタミンD

認知症・認知機能に関係する主なビタミン5つイメージ

ビタミンB12

ビタミンB12は神経や血液細胞を健康に保ち、DNAの生成を助ける栄養素です。肉類や魚類、卵、牛乳といった動物性食品に含まれます。

ビタミンB12が不足すると、貧血や筋力低下、疲労感といった症状が見られることもあるため注意が必要です。重度の不足となると神経を損傷し、歩行困難や認知症の発症などにつながることもあります。

ビタミンB12の不足による主な症状

貧血(蒼白、筋力低下、疲労など) 歩行困難、錯乱、抑うつ せん妄、認知症などの精神障害

ビタミンB12が不足しやすい人の例

ビーガン(完全菜食主義者) 肝疾患のある人 高齢者

葉酸

葉酸はビタミンB群のひとつで、細胞分化やDNA合成に関わる栄養素です。不足するとDNAの合成が阻害され、巨赤芽球性貧血を生じることもあります。

また、必要量を摂取することで、胎児における神経管閉鎖障害の発症リスクを低減させる効果、認知症や動脈硬化の発症を抑制する効果を期待できることがわかってきています。

葉酸の不足による主な症状

巨赤芽球性貧血 胎児における神経管閉鎖障害の発症リスクの増加 認知症や動脈硬化の発症リスクの増加

葉酸が不足しやすい人の例

野菜の摂取量が少ない人 妊娠中の人

ビタミンB6

ビタミンB6は鶏肉や魚、ジャガイモなどに多く含まれている栄養素です。また、柑橘類以外の果物にもビタミンDは含まれています。

ビタミンB6の摂取量が不足すると、貧血や抑うつ、免疫機能の低下が見られることもあるため注意が必要です。また、かゆみや唇の荒れ・ひび割れといった皮膚障害も見られることがあります。

血中のビタミンB6濃度が高い高齢者は記憶力が良いということが、研究によりわかってきています。しかし、健康な方や認知症の方がビタミンB6をサプリメントなどで摂取しても認知機能の改善は見られないことから、ビタミンB6が不足しないように普段から摂取することが大切といえます。

ビタミンB6の不足による主な症状

貧血 抑うつ かゆみや唇の荒れ・ひび割れなどの皮膚症状

ビタミンB6が不足しやすい人の例

アルコールの摂取量が多い人 腎臓疾患のある人 自己免疫疾患のある人

ビタミンB1

ビタミンB1は、炭水化物からのエネルギー産生を助け、皮膚や粘膜を維持する役割を果たす栄養素で、肉類や魚類、豆類などに多く含まれています。また、穀類の胚芽部分にも多く含まれているため、ビタミンB1の摂取を意識するなら精製した穀物よりも玄米や全粒粉を選びましょう。

ビタミンB1が不足すると、食欲不振や疲労、だるさといった症状が見られることがあります。また、脳や神経の障害を引き起こす可能性があるため、認知症予防のためにも必要量を摂取することが大切です。

アルコールを多飲するとビタミンB1が欠乏し、ウェルニッケ脳症を発症することがあります。また、ウェルニッケ脳症の後遺症としてコルサコフ症候群(アルコール性認知症のひとつ)を発症し、重篤な場合は死に至ることもあるため注意が必要です。

ビタミンB1の不足による主な症状

食欲不振、疲労、だるさ 脚気 ウェルニッケ・コルサコフ症候群

ビタミンB1が不足しやすい人の例

アルコールの摂取量が多い人 糖質の摂取量が多い人 よく身体を動かす人

ビタミンD

ビタミンDは体内の機能性タンパク質の働きを活性化させ、正常な骨・歯の発育を促進する栄養素です。また、神経伝達や筋肉の収縮を正常に行う働きもあります。ビタミンD不足が認知機能の低下や認知症発症のリスクになることが研究によりわかってきています。

皮膚に日光を浴びるとビタミンDが産生されるため、食物から摂取するだけでなく、適時日光を浴びることも大切です。不足するとカルシウムの吸収が低下し、骨のなんかや骨粗鬆症のリスクが増大します。骨折し、寝たきりになることもあるため、特に高齢者は意識的に摂取することが必要です。

ビタミンDの不足による主な症状

低カルシウム血症 骨軟化症、成長障害、姿勢の悪化 骨粗鬆症

ビタミンDが不足しやすい人の例

屋外での活動が少ない人 高齢者

認知症予防にも効果的なビタミンの摂取方法

ビタミンの中には認知症予防の効果を期待できるものも少なくありません。こちらではビタミンの効果的な摂取方法を解説します。

ビタミンB12の摂取方法 葉酸の摂取方法 ビタミンB6の摂取方法 ビタミンB1の摂取方法 ビタミンDの摂取方法

認知症予防にも効果的なビタミンの摂取方法イメージ

ビタミンB12の摂取方法

ビタミンB12は、食品中のタンパク質と結合した状態で存在する栄養素です。体内でタンパク質が分解されると遊離型となり、タンパク質や核酸の生合成や、アミノ酸の代謝に関与します。

ビタミンB12は腸内細菌からも合成されるため、欠乏することはあまりありません。しかし、胃の全摘手術をした人はビタミンB12の吸収が低下するため、食事などからしっかりと摂取するようにしましょう。

多く含まれる食品

肉類 魚類 牛乳、乳製品

葉酸の摂取方法

葉酸はビタミンB群に属する栄養素です。植物の葉に多く含まれ、赤血球をつくる働きをします。

葉酸にはポリグルタミン酸型と吸収されやすいモノグルタミン酸型がありますが、オレンジジュースやバナナには、ポリグルタミン酸型からモノグルタミン酸型に変える酵素を阻害する化合物が含まれているため、同時に摂取しないようにしましょう。

多く含まれる食品

海藻類 肉類 野菜類 豆類

ビタミンB6の摂取方法

食品に含まれるビタミンB6はリン酸やタンパク質と結合した形で存在し、調理や消化の過程で分解され、アミノ酸の代謝を補助する働きをします。

ビタミンB12と同じく腸内細菌によって生合成されるため、不足することはあまりありません。しかし、抗生物質を長期間投与された場合などは欠乏症になることもあります。

多く含まれる食品

鶏肉 魚類 ジャガイモ 柑橘類以外の果物

ビタミンB1の摂取方法

ビタミンB1はピルビン酸からアセチルCoAになる過程に必要とされる栄養素です。エネルギー産生に関わるため、不足しないように効率良く摂取しましょう。

ビタミンB1はタマネギやニンニクに含まれるアリシンと結合すると、吸収率が高くなります。しかし、熱に弱いため、加熱の必要がない食品からも摂取するようにしましょう。

多く含まれる食品

肉類 魚類 豆類 穀類の芽部分

ビタミンDの摂取方法

ビタミンDは小腸でカルシウムとリンの吸収を促進させる働きをします。正常に作用することで血中カルシウム濃度が一定になり、神経伝達も正常に進ませる重要な役割を担う栄養素です。

ビタミンDは脂溶性ビタミンのため、脂と一緒に摂取すると効率性が高まります。魚介類や卵といった脂肪が含まれる食品から摂取するか、油炒めなどの調理法を選ぶと良いでしょう。

多く含まれる食品

魚介類 キノコ類 牛乳、乳製品

認知症予防の効果を期待できるビタミン類は多数あります。不足なく摂取するためにも、サプリメントの利用もおすすめです。
ただし、過剰摂取にはリスクもあるため、用量を守るようにしてください。

また、栄養バランスのとれた食事からもビタミン類を摂取しましょう。適切な食習慣は、認知症につながる病気の予防にも役立ちます。

知っておこう!
認知症予防のための食事のとり方

知っておこう!認知症予防のための食事のとり方イメージ

認知症予防には、予防効果を期待できるビタミン類を適切に摂取することが大切です。また、どのように食べるかも大切なポイントといえるでしょう。

さらには栄養バランスやカロリー量、塩分・糖分などに注意が必要です。自分で調理すれば、塩分や脂肪分、糖分を調整しやすくなり、健康的な食生活を送れるでしょう。

  • ✓バランスの良い食事を心がける
  • ✓一日の摂取カロリーを守る
  • ✓塩分を控える
  • ✓間食・糖分を控える
  • ✓自分で調理することを心がける

認知症予防に効果的な食べ物や食事の仕方について、詳しくは以下もご覧ください。

認知症予防のための食べ物は?食事をするときのポイントについても解説

また、認知症の進行を遅らせるための対策について気になる方は詳しくはこちらをご覧ください。

認知症が一気に進む原因を解説│進行を遅らせるためには?

認知症予防はまず食事から

認知症を完全に予防する方法はまだ確立されていませんが、普段の食生活から予防につなげることは可能です。食事内容や栄養バランス、食事量などを一度見直してみてはいかがでしょうか。

また、認知症予防に関する研究に注目することも大切です。認知症に関する研究は多くの国で実施され、予防に良いとされる行動や食べ物も変化しています。ぜひ最新研究に注目し、認知症予防についての正しい知識を取り入れていきましょう。

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