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04認知症コラム

一過性全健忘(TGA)とは?治る?
発症する原因や検査・診断方法を解説

2025.12.25

一過性全健忘(TGA)とは?治る?発症する原因や検査・診断方法を解説"

一過性全健忘(TGA)とは、特定の出来事や前後の出来事に関する記憶が一時的に失われる記憶障害です。後遺症はほとんどなく、通常は後で記憶を回復します。この記事では、一過性全健忘が発症する原因や治療・予防方法についてまとめました。認知症との違いについても紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

一過性全健忘(TGA)とは?

健忘の原因になった出来事の
発生前、発生中、および発生後にあった
出来事の記憶が、一時的に突然失われる記憶障害

一過性全健忘(TGA)とは、特定の出来事や前後の出来事についての記憶が一時的に失われる記憶障害です。通常は後日記憶が回復するため、長期的に後遺症が見られることはほとんどありません。

一過性全健忘は50代~70代で見られることが多く、やや男性のほうが発症リスクは高いとされています。また、発症頻度は低く、人口10万人あたり年間5~10人程度です。

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一過性全健忘(TGA)とは? イメージ

一過性全健忘の症状の3つの特徴

一過性全健忘の原因はまだ解明されていません。突然の発症に備えるためにも、症状の特徴を理解しておきましょう。

突然新しい記憶が形成できなくなる 自分の置かれている状況が理解できず混乱する 記憶障害以外の神経症状は見られない

突然新しい記憶が形成できなくなる

一過性全健忘では、発症直後から直近の出来事や会話の内容が記憶に残らない状態が続きます。記憶の定着が難しく、同じ質問を繰り返す場面も見られがちです。数時間前の行動や予定を思い出せず、混乱した状態が続くこともあります。

自分の置かれている状況が理解できず混乱する

一過性全健忘の発症時には、現在地や時間の感覚が失われることがあります。自分が何をしていたのか、なぜその場にいるのかが理解できず、不安を抱えるケースも少なくありません。周囲から説明を受けても納得できず、落ち着かない様子を見せることもあります。

記憶障害以外の神経症状は見られない

一過性全健忘では、意識や他の認知機能は保たれているため、手足の麻痺や言語障害といった記憶障害以外の神経症状が見られることはほぼありません。早ければ30分ほどで、遅くとも24時間以内には記憶が回復し、元の状態に戻ることが一般的です。

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一過性全健忘と認知症の違い

一過性全健忘は一時的な記憶障害で、ほとんどのケースでは一生に1回のみ発生します。一方、認知症は進行性の脳疾患で、記憶に関する症状が一時的に改善したように見えても、行きつ戻りつを繰り返しながら段階的に進行していく点が特徴です。

また、一過性全健忘がきっかけで認知症が発症するケースはほとんどありません。また、一過性全健忘の原因はいまだ不明ですが、次項で紹介するように、きっかけとなる出来事には共通点が見られることがあります。

項目 一過性全健忘 認知症
記憶障害の
特徴
一時的な記憶喪失(数時間〜24時間) 徐々に進行する記憶障害
回復の可能性 自然に回復する 完全な回復は困難
他の認知機能 保たれている 判断力・理解力なども低下する
発症年齢の傾向 中高年(50〜70代)に多い 高齢者に多く見られる
原因 不明 脳の神経細胞の変性や死滅

一過性全健忘の原因

一過性全健忘の原因は完全には解明されていません。記憶を司る「海馬」の一時的な機能低下によって引き起こされると考えられていますが、てんかんや脳虚血、片頭痛といった神経疾患が背景にあるケースも報告されています。

原因は多岐にわたる可能性があるため、発症したときには他の疾患と切り離して鑑別することが必要です。よくある原因は、以下をご覧ください。

原因となる出来事の例
激しい運動 感情的または精神的ストレス アルコールの過剰摂取 医学的な処置
一過性全健忘の原因 イメージ

一過性全健忘の検査・診断方法

一過性全健忘が見られたときは、まずは医療機関を受診し、問診などを通しててんかんなどの持病や脳機能障害の有無を確認することが必要です。ここでは、一過性全健忘の症状が見られる場合に行う検査の内容について、ご紹介します。

頭部のCTまたはMRI検査 脳波検査 脳血流検査

頭部のCTまたはMRI検査

頭部のCTやMRIは、脳梗塞や脳出血など、ほかの病気との違いを見きわめるために欠かせません。脳内に出血や腫瘍といった器質異常がないか、CTやMRIで確認します。症状が似ていても原因が異なることがあるため、正確な診断には画像検査が重要です。

脳波検査

てんかんなどの異常な脳活動との関係を調べるために、脳波検査を実施することもあります。脳の電気的な活動パターンを調べることで、一過性全健忘と類似した症状を示す他の神経疾患との区別をします。

脳血流検査

脳血流検査は、脳の血流状態を可視化する検査です。海馬周辺に血流低下が見られるか確認し、一過性全健忘の発症メカニズムの一因といわれている「静脈うっ滞」の可能性を評価します。また、脳血流検査により、他の脳疾患との鑑別や再発予防のための参考情報の取得も行います。

一過性全健忘の治療方針と対応

一過性全健忘は、ほとんどのケースで24時間以内に自然回復します。そのため、基本的に薬物療法や外科的処置を実施することはなく、経過観察が中心です。

ただし、てんかんや脳梗塞などが原因として考えられる場合は、原因疾患の治療を開始します。いずれにおいても正確な診断が必要となるため、すぐに医療機関を受診することが大切です。

一過性全健忘の検査・診断方法 イメージ

一過性全健忘の予防に向けた生活習慣のポイント

一過性全健忘の予防法は確立されていませんが、脳の活動や認知機能へ悪影響を与えないようにすることで発症リスクを軽減できると考えられてます。普段から実施したい生活上の注意点について見ていきましょう。

ストレスをため込まない環境づくり 十分な睡眠と規則正しい生活リズム 一過性全健忘に繋がる可能性のある持病の適切な管理

ストレスをため込まない環境づくり

過度な緊張は脳の血流や神経活動に悪影響を及ぼす可能性があります。脳の健康維持のためにも、日常的にリラックスできる時間を確保し、心身のバランスを整えることが大切です。

たとえば、趣味や運動、会話などを通じてストレスを発散する習慣をつけることが、一過性全健忘の予防にも効果的といわれています。

十分な睡眠と規則正しい生活リズム

睡眠不足は脳の回復力を低下させ、記憶や認知機能に悪影響を及ぼす要因の一つです。できれば毎日同じ時間に就寝・起床し、体内時計を整えて、脳の働きを安定しやすくしましょう。

また、食事や運動なども規則正しく行うことで生活リズムが整い、脳の血流や神経伝達を正常化するといわれています。無理のない範囲で、毎日のスケジュールを見直してみましょう。

一過性全健忘に繋がる可能性のある持病の適切な管理

てんかんや片頭痛は、一過性全健忘を引き起こす原因になりかねません。定期的に通院し、服薬管理を徹底することで、脳の血流異常を未然に防ぐようにしましょう。

持病を適切に管理することは、他の脳疾患との鑑別にも役立ちます。意識障害や頭痛などの気になる症状が見られるときは、早めに医療機関を受診しましょう。

一過性全健忘に関するよくある質問

一過性全健忘は、突然の記憶喪失が起こることで周囲を驚かせることの多い症状です。ここでは、一過性全健忘に関してよく寄せられる質問とそのポイントを整理しました。

一過性全健忘の場合何科を受診すべきですか? 一過性全健忘の症状が元に戻らないことはありますか? 一過性全健忘は認知症の前兆ですか?

Q一過性全健忘の場合何科を受診すべきですか?

脳波検査やMRI検査などが必要になるため、脳神経内科を受診することが一般的です。てんかんや片頭痛などでかかりつけの医療機関がある場合は、まずは主治医に相談してみましょう。

Q一過性全健忘の症状が元に戻らないことはありますか?

通常は24時間以内に記憶障害がなくなり、元の状態に回復します。記憶障害が24時間を超えて続くときは、他の病気かもしれません。医療機関を受診し、原因を調べてもらうことが必要です。

Q一過性全健忘は認知症の前兆ですか?

一過性全健忘と認知症の関係については明らかではありません。
しかし、いずれも規則正しい健康的な生活やストレスの適度な発散により予防につなげられることがあるため、日常生活を見直してみましょう。

生活習慣を見直して一過性全健忘の予防につなげていこう

一過性全健忘の原因はまだはっきりしていませんが、生活習慣の見直しが予防につながる可能性があります。突然の記憶喪失は本人にとって大きな不安となりがちです。認知症とは異なるものの、脳の疾患やてんかんなどが隠れているケースもあるため、気になる症状があれば一度専門機関で検査を受けることが大切です。

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